「高卒と結婚できるか!」美容クリニックに転職した39歳夫、妻が三下り半をつけた本性
「コロナ禍以降、医療従事者を対象とした調査が増えました。浮気も多いですが、法的にグレーな行為もありました。彼らに共通していた背景は、経済的な不安でした」
こう語るのはキャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。
これまで「探偵が見た家族の肖像」として山村さんが調査した家族のことをお伝えしてきたが、連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにして行ったのかも含め、様々な事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介している。
今回の依頼者は、2年前に夫の浮気調査を行った43歳の会社員・紗代子さん。2年前から再びの調査依頼だ。
2年前の調査のきっかけは、大学病院に医師として勤務していた夫から性感染症をうつされたこと。浮気を確信した紗代子さんの依頼を受け、不特定多数と性交渉をしている証拠を撮った。
当時、夫は過重労働と薄給に苦しんでおり、将来に不安を抱えていた。そのはけ口が、性依存へと向かっていた。またうつの傾向もあり、紗代子さんは山村さんのアドバイスに従い、夫を精神科に連れて行き、休職をさせ、回復へとサポートしていた。
しかし、それから2年、結婚12年目に紗代子さんから「夫が浮気をしている。離婚したい」と相談がきたのだ。
美容クリニックに転職し、年収は2倍に
2年前の浮気調査のあと、夫は給料が美容クリニックに転職。たちまち人気医師になり、年収も2倍になったそうです。しかしそれがさらに浮気の理由になったと紗代子さんは語ります。
カウンセリングをしたところ、浮気の他にも経済DVやモラハラがあったことを告白。また、12歳の娘に対するDVもあり、娘が「もうパパと暮らしたくない」と言われたことから、離婚の意思を固めていたのです。

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その意思の強さの背景には、2年前の浮気をきっかけに、専業主婦から社会復帰したことがありました。シングルマザーになっても子供を育てられるという確信もありましたが、財産分与分や慰謝料、養育費をしっかり取ったほうがいい。そこで、有利に離婚するための証拠を掴むことにしました。
美男美女カップル
都内のマンションから夫が出てくるところを追います。朝9時に家を出て、10時に勤務先の美容クリニックへと入って行きました。
夫は背が高くプロポーションがいい。目が大きく鼻筋が通っており、美男子の部類に入ると思いました。依頼者・紗代子さんも若い頃にモデルをしており、すらっとしている。まさに美男美女カップルだと感じました。
勤務先に入ってからは、全く動きがなく、18時に出てきたところを追います。2年前に証拠を撮られたことを警戒しているのか、後ろを振り返りながら電車に乗ります。渋谷で降りると、比較的新しいマンションに合鍵を使って入って行きました。
20時に紗代子さんにそっくりな美しい女性と手を繋ぎながら出てきて、流行のフレンチビストロでワインを飲みながら22時まで食事していました。その会計は4万円。夫がクレジットカードで払っていました。

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夫は何度か振り返りつつ、尾行がいないことを確信したのでしょう。信号待ちの間に女性の顔を引き寄せてキスをしていました。そして、マンションまで戻り、終電まで滞在して帰宅します。
30万円の買い物に高級旅館…
証拠としてこれでは弱いので、紗代子さんに夫が外泊する日を教えてもらい、その日を狙い、クリニック前で再び張り込みをスタート。13時に出てきた夫は、実家方面に行く路線の電車に乗りました。夫が実家の車庫に車を置いていることを聞いていたので、ペアの探偵が慌てて車を手配し、夫の実家方面に向かうことにしました。
夫は駅から徒歩20分の実家に向かい歩き、大きなガレージからドイツ車を出して、走り始めます。夫の運転は荒く、危なっかしい。都内に行き、女性のマンション前に止まると、すぐに女性が助手席に滑り込みました。

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車は静岡方面に向かって走り、夕暮れのアウトレットへ。2人は恋人同士のように手を繋ぎながら買い物をしています。彼女はおねだり上手で、夫に甘えている。都内から離れて気持ちが解放されているのか、ハードなボディタッチも行っています。夫は「性的なコミュニケーションを他人に見せたい」という欲望があるのでしょう。
夫は彼女の言うままに、服やバッグ、ゴルフウエアなど30万円分ほどお買い上げ。紗代子さんに渡していた生活費は転職前は5万円。転職して給与が増えた今も10万円しか渡していないのに、この女性に浪費していることに怒りを覚えました。

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閉店ギリギリまで滞在し、近くの高級旅館に1泊し、14時に都内に帰りました。彼女のマンション内まで購入した荷物を運び込んでいます。そして実家に車を戻し、帰宅して調査は終了。
離婚の準備を進めると…
以上を報告すると「ありがとうございます。これで離婚できます」ととてもホッとした顔をしていました。2年前の調査の時は、怒ったり悲しんだりしていたので、「本当にもう、夫に気持ちがないんだ」と思いました。
紗代子さんはその足で弁護士のところに行き、離婚への諸条件を固めます。かなりの額の慰謝料、毎月15万円の養育費、財産分与分の割合も、娘に優位になるように調整します。
そして、紗代子さんと娘は前から家を出で、ウィークリーマンションに住み始めました。その週末に弁護士同席の元、証拠を見せつつ、夫に離婚届を突きつけると、「戻ってきてくれ。彼女と別れる。ごめんなさい」と土下座したそうです。

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夫は世間体もあり離婚したくない。また、両親と姉が紗代子さんを信頼し、娘を可愛がっていることもあるでしょう。しかし、紗代子さんは「離婚します」と言い切ります。すると夫は、「金を渡せばいいんだろう? いくらだ? 100万か?」と言ったそうです。
「その姿を見て、本当に失望しました。夫は離婚となったらゴネるだろうと思って、夫と離婚したい理由を10ほど箇条書きにして、突きつけたのです。お金をくれないこと、私を馬鹿にしていること、娘に医者以外は人ではないと教えていること、美しい外見以外を認めないと発言することなどなど。それに目を通して、“俺はこんなことをしていない”と言ったんですよ。話し合いの余地もないってことですよ」
「高卒と結婚できるか!」
弁護士に諭されて、勝ち目がないことを知っても夫は「俺はどうするんだ。あなたがいないと生きていけない。誰が俺の世話をするんだ? これから一人になるのか?」と泣き落としにかかったそうです。
夫の浮気相手は、パパ活で生計を立てている、30代前半の会社員でした。夫とは飲食店で知り合い、時々性交渉をする関係を長く続けていたそうです。紗代子さんは「私と離婚して彼女と結婚すればいい」と言うと、「高卒と結婚できるか!」と怒鳴ったそう。
「そういう差別意識も無理です。でも不思議なのは経済的に安定したのに、なぜまた浮気をしたかと言うことなんですが、これは、激しいコンプレックスで、心が折れかけたことがあるみたいです。クリニックには、外国語が堪能な医師、海外の学会で発表を続けている医師、人脈が豊富で芸能人や政治家を顧客に持つ医師が在籍しており、夫は劣等感に苦しむようになります。その吐け口が彼女になったのでしょう」

比較をしつづけると人生は生きづらくなる Photo by iStock
夫は「つらいよ。助けてほしい」と訴えましたが、紗代子さんは突っぱねます。
「以前の調査の時は、夫の涙に負けてしまった。もう絶対に許さない。一時的に浮気はストップしても、また同じことになる。心を鬼にして離婚することにしました」
紗代子さんは、「心はあり方であり、持ちようなんですよ。他人軸で幸せを判断してはダメです」と清々しい表情で話していました。離婚が成立したら、公立中学校の学力が高いエリアに引っ越し、娘と2人の生活を始めるそうです。
夫は最後の最後まで、紗代子さんに嫌がらせをして、泣き落としの手を緩めることはありませんでした。紗代子さんは「強い意志と証拠がなければ、離婚できませんでした。離婚は本当に大変です」と話していました。
調査料金は30万円(経費別)です。