鈴木福「誰かを傷つけようと、そんなことは関係のない世の中なのかな」SNS時代の「薄情さ」とどう向き合うか

SNSが普及し、誰もが気軽につながれる時代。コミュニケーションが便利になった一方で、「過度な接触が増えた気もします」と指摘するのは俳優の鈴木福さん(21)。オフラインが主流だったころの「そこだけの会話」が予期しないところで広がっていく時代に、「薄情さみたいなもの」を感じることがあるという。鈴木さんが考えるコミュニケーションのバランスの取り方とは。(全2回の2回目/前編から続く)
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――今は大学3年生ですね。入学後、いろいろな人との出会いがあったと思います。
大学生活、めちゃくちゃ楽しいです。この数年で大切な友達がたくさん増えました。大学で出会う友達は、これまで出会った友達とまた少し違うんです。これまでは、何者でもないところから親しくなって、「こうなりたい」という過程を一緒に過ごしてきました。でも大学では、「こういうことをやりたくてこの大学に来た」という人が多い。そこが大きな違いだなと感じています。
たとえばグループワーク一つとっても、「一緒に授業を受ける」という状況は高校までと同じですが、何のためにそれをやっているのかが人それぞれなんですよね。そういうところがすごく面白いなと思っています。
――また違った刺激も受けそうですね。
今はちょうど就活をしている友達が多いのですが、考え方や感じ方がすごく新鮮で、「ああ、そうなんだ」と思うことばかりです。バイトやインターンの話でも、もうほとんど仕事みたいなことをしながら就活しているような子もいます。会社を自分で立ち上げたりしている子もいて、同じ大学という場所に集ってはいるけれど、みんな自分とはまた違う“世界線”で生きているんですよね。

そういう人との出会いの幅が、大学に入って一気に広がりました。高校のときは芸能コースだったので、芸能活動をしている子はたくさんいましたが、そうじゃない子との出会いはあまりなかったんですよね。そういう意味でも、今の環境は本当に新鮮です。社会は広いんだと実感しています。
――ご友人とは恋愛の話もされますか。
いっぱいします(笑)。男友達で集まって、「気になる相手とこういうことがあった」「付き合えそう」「ついに付き合った」とか。僕ですか? 友達の話を聞いて、「いいなー」とよく言っています(笑)。

――楽しい時間ですね。主演映画「ヒグマ!!」では、闇バイトに巻き込まれる18歳の少年役を演じます。そこにヒグマとの対峙というテーマが加わり、とてもインパクトの強い作品になりました。
オファーをいただいたのは、2023年の夏ごろです。「ヒグマ!!」というタイトルを最初に聞いたときは、「なんだこれ!」と思いました。あまりにストレートで、どんな作品になるか想像がつきませんでした。まずはそのタイトルにひかれましたね。
――血の表現もありましたが、全年齢が視聴できるG指定なんですね。闇バイトとヒグマがテーマですが、演じて気付いたことはありますか。
ヒグマの性質を学んだこともそうですが、闇バイト問題を新しい視点で捉えることができました。闇バイトを描いた作品はまだ少ないと思いますが、その世界に手を染めてしまう少年を通して、社会的にはあまり出ていない、どこか共感を生む意外な姿を感じることができると思います。
――映画では普通の少年が闇バイトに手を出してしまう過程がリアルに伝わってきました。幼いころから活躍する鈴木さんが演じるからこそ、「あの福くんが」と感情移入してしまうのかもしれません。
闇バイトとヒグマの関係性は一見かけ離れているように思えますが、物語としてきちんと成立しています。こういう描き方があるのかと、僕自身も発見の多い現場でしたね。内藤瑛亮監督もスタッフも天才だと思いましたし、どうすればこんなことが思い浮かぶのか、教えてほしいです。
――この作品はオフラインとオンラインということもキーワードの一つになっていると思うのですが、デジタルネイティブ世代としてどう捉えていますか。
僕はけっこうオフラインが好きな人間なんです。でも、オンラインだからこそ、円滑にコミュニケーションが取れる側面も間違いなくあると思います。それぞれの良さがあるし、どちらも自分のなかでは大事ですね。
使い分けでいえば、親密に接することのできるオフラインと、たくさんの人と気軽にコミュニケーションできるオンライン、という感じでしょうか。

――芸能人の方は特にオンラインで接する相手が多い世界ですよね。世間からのイメージと自分自身が思う鈴木福像に違いはありますか。
世間が思う「鈴木福」のイメージは、あまりはっきりしていないんです。親近感というか、友達みたいに思ってくれている人が多いのかなとは感じています。移動一つとっても、電車を使うし、芸能人っぽくないのかもしれません。
――SNSが普及したことでリアルな人間関係の実感が持ちづらくなったような気もするのですが、鈴木さんはいかがですか。
僕は人が好きで、密になりたいと思って自分からいっぱい連絡するタイプなんです。でも、気軽に連絡できてしまう時代だからこそ、過度な接触が増えた気もします。小さいころはオフラインがメインで、その人と会ったからこそ生まれた「そこだけの会話」がありました。でも、今はそれが文章になって勝手にどこかに飛んでいって、いろんな人が触れられる時代になったように思うんです。
その言葉が予期しないところで広がったり、トゲのある表現にすり替わったり、ときには誰かを傷つけるような言葉が「盛り上がり」につながることもあります。今の時代は、そういう薄情さみたいなものがあるのではないでしょうか。それはつながりが希薄だからというより、過剰に接触できてしまうから生まれたことなのかなと思うんです。発信する側としても、受け取る側としても、そのバランス加減が難しいなと日々感じますね。
――バランスを取るために意識していることはありますか。
以前であれば友達同士で笑って終わらせていたことが、違う界隈へ広がって炎上に巻き込まれるケースが目立つようになった気がするんです。そういう事象を見ていると、「誰かを傷つけようと、そんなことは関係のない世の中なのかな」と思ってしまうこともあります。
芸能活動をしているので、僕自身は「言われる立場」になることがどうしても多いんですね。僕に対する意見や批判は、その人がそれで気持ちよくなれるなら、まあもういいかなという気持ちがあります。でも、誰かに辛らつな言葉を投げつけるよりは、それ以上に自分の身近なことを充実させたり、目の前のことが正しいのかどうか考えられる力を持ったりしておくべきだとも思います。
この作品は、闇バイトをやるかどうかという選択肢が目の前に現れたときに、「大丈夫だろう」という謎の過信が生まれたことで、その世界に入り込む少年の姿を描いています。もし「本当に大丈夫だろうか」と思考を重ねていれば、違う選択肢を選んでいたかもしれません。
そう考えると、「思考を重ねて一度立ち止まることができるか」はすごく重要ですよね。突発的な一時の感情でやったことで引き返せなくなることもある。そうならないためにも、「それで大丈夫か」を繰り返し考えていくことが大事だなと思うんです。
(構成/AERA編集部・福井しほ)
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