「旧ソ連式」農業で、心も身体も健康に? 森永卓郎も実践していた二拠点生活「週末ダーチャ」がオススメのワケ
2024年に端を発した「令和の米騒動」。2025年までのわずか1年でコメの価格は6割以上暴騰した。政策対応は刻々と打ち出されているものの、先行きはなお不透明――日本人の主食であるコメを「買えるかどうか」を気にしながら節約を強いられる日々が続いている。
農業は国防そのものだ。世界の供給網が揺らげば、四方を海に囲まれた島国・日本は一気に脆弱になる。国難を乗り切るためにもっとも大切なのが「食料安全保障」なのだ!
コメが買えない、高い、この異常事態をどう乗り切るのか?そして、この未曾有の危機の裏側には何があるのか…。この国の食料問題の「暗部」と闘い続ける東大教授・鈴木宣弘の告発と提言の書『もうコメは食えなくなるのか』より一部抜粋・再編集してお届けする。
『もうコメは食えなくなるのか』連載第33回
『“居酒屋”が日本の農業の未来を救う!?…産地直送や自給自足など、渋谷から始まるユニークな「エディブル・シティ」化への挑戦』より続く。
「NHKでも農業ができないか」
NHKラジオの番組に出演したあと、スタッフの皆さんとベトナム料理店で食事をしながら話しているうちに「NHKでも農業ができないものか」という話に花が咲いた。NHKの構内には、けっこうなスペースの広場がある。屋上も空きスペースだ。ここに土を敷き詰めれば、すぐにでも野菜作りを始められる。
都会育ちの若者は、野菜や果物がどうやって育つかを実際に見たことがない。根菜やジャガイモが土中に植わっている様も知らなければ、農業がモグラという天敵との闘いであることも知らないのだ。

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農業は虫との闘いでもある。虫が苦手だからといって農薬をバンバン使っていたら、人間の健康に害を引き起こしかねない。ミミズを見て気持ち悪いと思う若者が多いだろうが、ミミズがたくさん生息している場所は良質な土である証だ。土いじりを通じて、多くの生きた知識を自然と学べる。
都市型農業の可能性 旧ソ連「ダーチャ」に学ぶ
旧・ソビエト連邦では「ダーチャ」での農業が推奨された。「ダーチャ」(дача)とはロシア語で「土地の割り当て」「(皇帝から)与えられたもの」くらいの意味であり、転じて「菜園つきの別荘」という意味で使われる。
モスクワ中心部のアパートで暮らしていると、畑で作物を育てることは難しい。そこで中心部から離れた場所に別荘を設け、週末や夏休みは別荘で家族と一緒に過ごすのだ。
ダーチャの庭にはトマトやキュウリなど野菜をたくさん植え、食べきれないぶんはピクルスの保存食にあてる。ご近所さんや同僚にお裾分けするのもいい。ジャガイモが大量に収穫できたときには、青空市場で売って現金収入にする。野菜や果物だけでなく、ダーチャの庭園でニワトリやヤギを飼う人もいる。

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「日本版ダーチャ」が渋谷のど真ん中で始まれば痛快だ。NHK産の採れたてのトマトやキュウリを、都会っ子がおいしそうに頬張る光景を眺めてみたい。
農業を楽しんでいた森永卓郎さんの二拠点生活
私と共著『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』を出版した故・森永卓郎さん(経済アナリスト)は、平日は東京都心でバリバリ仕事をし、週末は埼玉県所沢市にUターンする二拠点生活を送っていた。所沢市では農園をもち、野菜作りを楽しんでいらっしゃったそうだ。
夏場になれば、トマトやキュウリ、ナスがたちまち大きくなり、ものすごい量の収穫物が採れる。自分の畑で採れた野菜をラジオ番組の収録時に持参すると、共演者が嬉々として森永さん手作りの野菜をもち帰ったそうだ。
慣れない手つきで農業に挑戦していれば、ご近所の農家から「精が出ますね」と声がかかる。熟練の農業生産者から手ほどきを受ければ、野菜作りの生産性はどんどん上がる。森永さんはこうして地に足をつけて農業を楽しみ、なおかつ健康を維持していった。

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自宅を2ヵ所設ける二拠点生活は経済的に負担が大きいが、耕作放棄地を廉価で貸してもらい、休日を利用して汗を流す「週末ダーチャ」であればそれほど出費はかさまない。読者の皆さんも、セカンドライフの「週末ダーチャ」を計画してみてはいかがだろう。
『世田谷の給食では「有機米」を全国の農家から購入!?…学校から始まる“地域間連携”で、子どもの健康と日本の農業を守る』へ続く。
【もうコメは食えなくなるのか】
コメが買えない、高い、この異常事態をどう乗り切るのか?
この国の食糧問題の「暗部」と闘い続ける東大教授の告発と提言!
アメリカの陰謀「胃袋からの属国化」――地域産業、地域農業を潰し、日米のお友達企業の利益ばかりを追求する「悪魔の農政改革」の深層!
「『日本人がコメが食えない時代が訪れる』と悲観ばかりしていられない。自分が今いる場所で、できることをすぐに始める。そこから『食』の未来への希望がきっと見出せるはずだ」
(本文より)
農業こそは国防。「食料は国防だ」と言うと、「戦争に備えてロジスティックス(兵站)を確保しなければならない」という勇ましい議論だと勘違いされがちだが、そうではない。世界各国が食料危機に陥れば、日本人が食べる食べ物が足りなくなったときに融通してもらえなくなる。そうなれば、四囲を海に包囲された島国・日本はおしまいとなる。
国難を乗り切るためにもっとも大切なのが「食料安全保障」なのだ!
(目次)
はじめに 日本を襲った四つの衝撃
序 章 「令和のコメ騒動」序曲
第一章 減反政策という桎梏
第二章 ミニマム・アクセス米とトランプ大統領
第三章 政治家が示すべき稲作ビジョン
第四章 農業は国防
第五章 日本農業 希望の灯
おわりに