映画「ラストマン」撮影の「函館」に外国人殺到なぜ

大泉洋さんの実兄が市長に, 『コナン』『ラストマン』両方に登場の「名物バーガー」, 函館ベイエリアで勃発する「朝食戦争」, 経済効果に貢献「フィルムコミッション」の存在, 国をあげて「地方都市での撮影」を推進

福山雅治さんと大泉洋さんのバディが人気の『ラストマン』が映画化。舞台は、北海道の函館です。ここ最近、函館が大規模作品の舞台に選ばれることが続いています(写真:『ラストマン』公式サイトより)

北海道の三大都市の1つである函館市は、人口約24万人の中核市です。北海道の玄関口で、昭和世代には北島三郎さんの『函館の女』でおなじみの旅情を感じる街であり、その下の世代にはロックバンド・GLAYの聖地として知られる場所でもあります。

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そんな函館を舞台にストーリーが展開する映画『ラストマン-FIRST LOVE-』が12月24日に公開されました。

TBS日曜劇場「ラストマン―全盲の捜査官―」(2023年)の続編で、福山雅治さん演じる、鋭い分析力、聴覚、嗅覚を持つ全盲のFBI捜査官「皆実」と、大泉洋さん演じる孤高の刑事「心太朗」が再タッグを組み、事件を解決していくというストーリーです。

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大泉洋さんの実兄が市長に

函館といえば、大泉洋さんの実兄である大泉潤さんが23年から市長を務めていることも話題。16年には北海道新幹線も開業し、26年3月で開業から10年となります。

そして函館の聖地巡礼といえば、24年4月に公開されたアニメーション映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』も記憶に新しいところ。なぜ地方都市である函館がここまでクローズアップされているのか。その秘密を、本作『ラストマン』を通じて探ってみます。

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函館といえば、美しい街並みの「金森赤レンガ倉庫」(写真:筆者撮影)

映画『ラストマン』では、函館の多くの観光名所がロケ地となり、それぞれがストーリーの中で効果的に登場しています。JR函館駅を出発点に、巡礼してみましょう。

北海道新幹線の新函館北斗駅(北斗市)から、「函館ライナー」に乗って約20分。JR函館駅はかつて、駅前にあった桟橋から青函連絡船が青森までを結んでおり、北海道の海の玄関口でした。

その函館港をぐるりと取り囲むように、港町独特の風景が続きます。駅前の「函館朝市」や、マリーナ付近の有名な「金森赤レンガ倉庫」などは、本作でも登場する函館を象徴する風景です。

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北海道の玄関口でもある「函館港」(写真:筆者撮影)

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駅のすぐそばにある「函館朝市」は、約250軒の店舗が軒を連ねています(写真:筆者撮影)

『コナン』『ラストマン』両方に登場の「名物バーガー」

そしてその付近には、函館を中心に展開し、地元で知らない人はいないハンバーガーチェーン「ラッキーピエロ」(マリーナ末広店)があります。

『コナン』に登場しており、店内にはコナンの聖地巡礼コーナーもありました。名物メニューである「チャイニーズチキンバーガーセット」は、『ラストマン』にも登場。また、ボリュームたっぷりのオムライスも人気です。

なお、『ラストマン』の撮影が行われたのは別の店舗(亀田郡七飯町の「峠下総本店」)ですが、特徴的な内装と駐車場が広いことから、そちらの店舗が選ばれたとのことでした。

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函館で人気のハンバーショップ「ラッキーピエロ」の店内(写真:筆者撮影)

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一番の人気メニュー「チャイニーズチキンバーガーセット」(写真:筆者撮影)

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オムライスは噂と違わずボリューム満点です(写真:筆者撮影)

マリーナから海沿いを進むと、元町公園や旧函館区公会堂がある高台のエリアが見えてきます。高台から真っすぐに港が見下ろせる坂が、有名な「八幡坂(はちまんざか)」です。

1980年代、台所洗剤「チャーミーグリーン」のCMで、老夫婦が手をつないでステップを踏むシーンが撮影された場所として一躍有名になり、以来「チャーミーグリーンの坂」とも呼ばれ、本作にも印象的に登場します。

市の中心に戻るには、八幡坂の下を走る路面電車の利用が便利です。函館山のふもとに位置する途中の「十字街停留所」付近は、本作のロケ地となりました。路面電車を貸し切って撮影された緊迫のシーンは、函館市電の全面協力の下で実現しています。

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通称「チャーミーグリーンの坂」と呼ばれる「八幡坂」。石畳の道とその先にある港の風景が美しいです(写真:筆者撮影)

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「十字街交差点」通過しようとする路面電車。車内が貸し切られて『ラストマン』の撮影が行われました(写真:筆者撮影)

函館ベイエリアで勃発する「朝食戦争」

函館駅前を過ぎ、路面電車で湯の川方面に向かうと、20分ほどで「五稜郭公園前」停留所に到着します。五稜郭は、言うまでもなく函館山と並ぶ函館を代表する観光地の1つで、本作でも「箱館奉行所」跡のある五稜郭公園が登場します。

また、五稜郭タワーの前の人気回転寿司店「旬花」では、福山さん演じる「皆実」が美味しそうに寿司を頬張るシーンが撮影されました。

函館の食は、今やグローバルな人気を誇るコンテンツ。市内の各ホテルが朝食バイキングでその食の魅力を追求し続けています。

特にベイエリアに位置する「ラビスタ函館ベイ」や「函館国際ホテル」、そして「センチュリーマリーナ函館」の3つのホテルでは、豪華さを競い合った結果、いつしか「函館朝食戦争」と呼ばれ盛り上がるようになりました。

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これが噂の「函館国際ホテル」の朝食。バイキングでこのハイクオリティの海鮮をいただけることに驚きます(写真:筆者撮影)

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福山さん演じる皆実も堪能した、「回転ずし旬花」の絶品寿司(写真:筆者撮影)

『コナン』や『ラストマン』など、人気シリーズ作のメインロケ地となった函館市。これによって同市にはどのような影響が出ているのでしょうか。

函館市の発表によると、『コナン』が公開された24年度においては、市への観光客入り込み数は初めて600万人を超え、前年比13.9%増の602万2000人(推計値)だったと発表しました。

これは北海道新幹線の開業効果が出た16年度の560万7000人を大きく上回りました。 

宿泊客数も延べ472万7000人と過去最多を記録しています。特に顕著だったのは外国人宿泊客数で、前年比51.9%増の56万8000人となり、これも過去最多。

国籍別には台湾が40.6%を占め、次いで中国が28.7%、以下、韓国、香港、タイ、シンガポールと続き、特にアジア各国にも人気の『コナン』効果が影響していることがうかがえます。

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「五稜郭タワー」から望む「五稜郭公園」。劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』の舞台となりました(写真:筆者撮影)

経済効果に貢献「フィルムコミッション」の存在

函館市役所内にある「はこだてフィルムコミッション」では、これまでも函館出身の作家・佐藤泰志さんの作品を映画化した『海炭市叙景』(10年)、『そこのみにて光輝く』(14年)、『オーバー・フェンス』(16年)の「函館三部作」などの撮影支援を行っています。

近年は多くの大規模作品の舞台地となり、経済効果も顕著に現れるようになってきました。筆者は、函館三部作の公開当時からロケ地巡りをライフワークとしており、これまでの函館市による撮影支援実績を見てきましたが、これはまさにその成果であると考えられます。

本作でも、函館が誇るエキゾチックな街の雰囲気、また強みである「食」という特徴が生かされたことに加え、港や路面電車、八幡坂や五稜郭といった観光地など、同市ならではの風景をフルに活用できる撮影支援体制があったことが重要な要素となっています。

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函館ハリストス正教会の荘厳な「主の復活聖堂」。1860年に建造された日本初の正教会の聖堂で、当初はロシア領事館の付属聖堂でした。現在は国の重要文化財になっています(写真:筆者撮影)

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レトロで美しい建造物の多い函館。写真は、高台に建つ「旧函館区公会堂」(写真:筆者撮影)

北海道全体においては、中心都市である札幌市が先進的な取り組みを続けており、「一般財団法人さっぽろ産業振興財団」内の組織「札幌フィルムコミッション」が札幌市と連携しながら、映像コンテンツの撮影やプロモーションをサポートしています。

特に現在では、単なる撮影誘致にとどまらず、札幌を「映像の街」とするための取り組みとして、撮影に関する一元的な窓口となり、市内の映像事業者の振興にも注力しています。

たとえば『ラストマン』では、函館市だけでなく札幌市内やニセコ町でもロケが行われています。このように道内の複数地域で撮影が行われる場合には、札幌フィルムコミッションが道内のフィルムコミッションのブロック長として各地域との連携を図っているのです。

札幌フィルムコミッションによると、札幌市内の撮影は、有名な時計台や大通り公園、テレビ塔、旭山記念公園などの観光地のほか、大泉さんの出身大学である「北海学園大学」の系列校「北海商科大学」でも行われたとのこと。

また、豊水すすきの駅近くにある「中央寺」付近では、道路を封鎖して撮影が行われました。

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『ラストマン』では付近の道路を封鎖するなど大掛かりな撮影が行われた、「中央寺」付近(写真:筆者撮影)

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テレビ塔を望む、札幌の「大通り公園」でも撮影が行われたとのこと(写真:筆者撮影)

国をあげて「地方都市での撮影」を推進

政府は、12月16日に成立した令和7年度補正予算において、「33年に日本発コンテンツの海外売上20兆円を達成する」という目標の実現に向けて、経済産業省において「コンテンツ産業成長投資支援事業」を行うと発表しました。

そのうち、ロケ誘致支援について、「ものがたり資産投資補助金(複数年)」として292.9億円を予算化し、「大規模作品製作支援」や「流通プラットフォーム拡大支援」とあわせて施策を推進する、としています。

特に地方都市における撮影誘致により、観光産業の振興だけでなく、映像コンテンツ産業にも直接的効果が見られることにつながるため、今後は大都市部との連携を含め、誘致活動が活発化していくことが予想されます。

函館市のアニメや実写映画での経済効果がベンチマークとなり、他の都市でも活発化されることを大いに期待しています。