『ばけばけ』圧巻の演技力を見せる髙石あかり。覚醒のきっかけは、監督が伝えた「意外な一言」
明治期の日本で出会った松江の没落士族の娘・小泉セツさんと、その夫で作家・小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)をモデルに、文化や言葉の壁を越えて家族になっていく姿を描いた連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合・毎週月~土あさ8時~ほか)。

連続テレビ小説『ばけばけ』©︎NHK(以下同じ)
朝ドラヒロインを演じる役者には、世間から大きな関心を向けられる。中には、「ちゃんと務められるのか?」といった攻撃的な目線も少なくない。主人公・トキ役を務める髙石あかりも例外ではなかった。しかし、いざ放送が始まると、視線を釘付けにする表情の機微や圧巻の演技力で、朝ドラヒロインとしての存在感を確かなものにしている。
改めて“朝ドラヒロイン・髙石あかり”を制作陣はどのように見ているのか。本作の制作統括を務める橋爪國臣氏に聞いた。
◆髙石あかりに、自然に動いてもらえるように
髙石の演技についてどのように撮っているのかを聞くと、「表情を含め、芝居のナチュラルさは唯一無二だと思っているので、『それを壊さないように』と撮影しています」と返す。
「基本的には本人が好きにやれる環境をどれだけ作れるか、ということに気をつけています。例えば、方言にこだわりすぎて、がんじがらめになり、アドリブができなくなることは避けたい。歴史モノなので、着物を着たり、方言を使ったりなど、いろいろな制約はあるのですが、そういったことは極力少なくして、自然に動いてもらえるようにしています」
さらには、「髙石さんは『こう返すなら、自分はこういう表情を見せる』というような瞬発力がとにかく高い。相手とのキャッチボールをしながら面白さを積み上げていける役者さんなので、周囲のキャストにも同じレベルが求められます。髙石さんの芝居を受け、きちんとキャッチボールできる人をキャスティングしよう、ということもこだわった部分です」と共演者選びも特に意識したという。
◆会話劇で評価された“型にはまらない芝居”
髙石は2024年にドラマ化もされた映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで主演を務め、女子高生の殺し屋という異色の役柄を演じてきた。バディ役の深川まひろ(伊澤彩織)との会話劇に心を奪われた人は多いだろう。『ばけばけ』でも、髙石の会話シーンに頬が緩む瞬間は少なくないが、『ベイビーわるきゅーれ』のエッセンスは含まれているようだ。
「ヒロインオーディションの際、髙石さんに演技を見せてもらった時、最初は歴史モノということでいろいろ考えながら演じていました。ただ、村橋直樹監督から『相手役を伊澤さんだと思って芝居してください』といったことをお願いしたんです。
その後にもう一度演じてもらったら、本当に自然な演技を見せてくれ、『私たちが求めているのはこれだ!』『型にはまらない芝居をやらせたらピカイチだ!』と思ったんです。実際に『ばけばけ』でも、その魅力が発揮されていて、髙石さんがトキ役で良かったと思っています」
◆22歳の座長、撮影現場ではどんな姿?
髙石は現在22歳。20代前半で朝ドラの主演に抜擢された髙石をどのように見ているのか。
「これまで単独主演はあまり多くありませんが、そういったキャリアを感じさせないほど座長として堂々としています。相当なプレッシャーがあると思いますが、とにかく疲れた顔を見せないんです。楽屋に閉じこもることはなく、積極的に現場に出てコミュニケーションをとり、いつも『撮影楽しいです』と笑顔を見せてくれます。
クランクアップというゴールもそろそろ見えてきましたが、『もうすぐ終わっちゃうのは寂しい』『もっとやりたい』と言っていて、いつも元気な姿を見せて、引っ張っていってくれる姿勢はすごいと感じています」
また、髙石は自身のX(@takaishi__akari)にて、撮影現場の様子を写真付きで頻繁に投稿するなど、SNSを活用して本作を盛り上げようとしている姿勢も印象的だ。これには橋爪氏は「現代っ子ですよね」と笑う。
「コミュニケーションが好きな人なんだと思います。スタッフともたくさん話しますし、『ファンの人からこんなこと言われた』みたいなことを喜びながら報告してくれます。人との交流が彼女のモチベーションの1つになっているから、SNSを積極的に更新しているのかなと」
◆三枚目としても輝く、吉沢亮の存在
本作では髙石の存在感もさることながら、歴史的大ヒットを記録している映画『国宝』で主演を務めた吉沢亮に注がれる視線も多い。『ばけばけ』ではヘブン(トミー・バストウ)に度々振り回される錦織友一役を演じ、その様子はとても面白く、“三枚目”として視聴者を魅了している。吉沢はどのように撮っているのだろうか。
「吉沢さんはイケメンではありますが、『いわゆる“二枚目俳優”ではないんじゃないのかな』と感じています。間違いなくイケメンですが、三枚目の芝居も本当にうまいんです。吉沢さんはただただカッコ良いだけの役をやってもらうより、周囲に振り回されて右往左往しているほうが輝く人だと思っています。本作でも、泥臭く、自分の思惑通りにいかずに困惑する姿が面白く、本当にすごい役者ですね」
とはいえ、今後も錦織は“お笑い要因”であり続けるわけではないという。
「錦織は時代の中でいろいろな辛酸を舐めてきた秀才です。いろいろな歴史資料を読むと、錦織のモデルとなった西田千太郎さんは、ヘブン、つまりは“ハーンの良き理解者”として書かれてはいますが、『きっとそれだけじゃない』と思っています。今後、錦織の辛い過去も明らかになりますので、錦織という人間の深みを感じてもらえれば嬉しいです」
髙石あかりを中心に、吉沢亮をはじめとするキャスト陣が丁寧なキャッチボールを重ねることで、『ばけばけ』は血の通った人間ドラマにしているのだろう。
<取材・文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki