北川景子が語る『ばけばけ』トキのママさんとして生きる決意「フミのおかげでタエも解放された。ここに夫の傳がいたらどんなによかったかと…」

高石あかりさん(高ははしごだか)主演・連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合/毎週月曜~土曜8時ほか)。明治時代を舞台に、怪奇文学作品集『怪談』で知られる小泉八雲の妻、セツをモデルにした物語。ヒロインの松野トキ役を高石あかりさん、夫で小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルにしたレフカダ・ヘブン役をトミー・バストウさんが演じ、怪談を愛する夫婦の何気ない日常を描きます。

【写真】珍しく大声で叫ぶタエ

トキの生みの親、雨清水タエを演じるのが北川景子さんです。

タエは、松江でも随一の名家に生まれ、大勢の女中たちに囲まれながら何不自由なく育ちました。しかし、夫の傳がなくなったことで家が没落。三之丞と二人でなんとか生きていこうとしていたところを、トキに助けられます。 トキの結婚を機に、トキの母親として生きていくことを決心しました。

タエ役について、北川景子さんがコメントを発表しました。

少し釈然としない気持ちに

――結婚の挨拶パーティー(70回)でヘブンに会ったタエの気持ちを教えてください。

トキがうそをついているとヘブンさんがわめき散らした時は、なぜ突然やってきた外国の人にそんなことを言われなくてはならないのか、少し釈然としない気持ちに。

みんながそろっている場でトキを激昂させなくてもいいのではないかと少し可哀想に思いましたし、こんな風に泣かせる男性が本当にトキを幸せにできるのか半信半疑でした。

けれども、松野のご両親は結婚を認めていて、トキ自身も彼と幸せになりたがっているわけですから祝福するのが筋。兎にも角にも応援するしかないと思っていたんです。

そして最終的には、バンっと不満を爆発させてみんながひとつになるきっかけを作ったヘブンという得体の知れない異人のことを、面白い男だと思えたのではないでしょうか。いろんなことが一度に起きた目まぐるしいシーンでした。 

(『ばけばけ』/(c)NHK)

成長する時間と猶予を与えたかった

――結婚の挨拶パーティーでの三之丞への思いを教えてください。

「人に使われるのではなく、人を使う人間になりなさい」とは以前に三之丞にかけた言葉だと思いますが、タエ自身はそういう古い凝り固まった考え方をとっくに捨てています。

“雨清水タエ”は一度死んだつもりで物乞いまでして息子を生かしてきたのに、自分の一言がここまで彼の中に残り続け、追い詰めていたのかと責任を感じました。

タエとしては今も昔も一貫して息子を大事にしているつもりなんです。没落前は三男だから家を継ぐプレッシャーを背負わずに自由に生きてくれればいいと思っていましたし、没落後は自分が父親代わりも務めて大事な息子を何とか生かしてきました。

三之丞のうそを承知の上で指摘しなかったのも、彼のプライドを傷つけたら立ち上がることができない人間になってしまうと思っていたから。今はまだうそを暴かず、息子に成長する時間と猶予を与えたいと考えていたと思います。

(『ばけばけ』/(c)NHK)

それなのにパーティーで三之丞から恥さらしのひどい息子だと聞いた時は、こんな言葉を言わせてしまったと非常に胸が締め付けられる思いでした。みんなの前で言わせてしまいましたが、それまでタエと三之丞の間にあった大きな溝が埋められて本当に良かったです。

タエとフミの雪解け

――フミさんとの関係の変化はどのような思いで演じられましたか?

タエは基本的なスタンスとして、自分も母親だと主張するのは司之介さんとフミさんに非常に失礼なことで、トキは松野家に出したと娘だと割り切らなくてはいけないと考えてきました。

ただ、トキは育ての親と産みの親の間でずっとしんどい思いをしてきたでしょうね。今まで育ての親としての立場をはっきりさせたがっていたフミさんが、トキのためにもどちらも親ということでいいんじゃないかと言ってくれたおかげで、タエも一つ解放されたと思います。

これまではトキと一緒に料理をしていても笑みがこぼれてはいけないと自分を律してきたけれども、娘がかわいくてうれしいとか一緒にいて楽しいといった素直な感情まで押し込める必要はなくなりました。フミさんにありがとうと伝えられ、タエとフミの雪解けが見られるシーンになったと思います。

(『ばけばけ』/(c)NHK)

タエは柔軟さも

――トキにママさんと呼ばれたタエはどんな思いだったのでしょうか? 

タエにとって「ママ」は初めて聞きく言葉。横文字なので、娘が外国の人と結婚するという事実を突きつけられたような非常に複雑な気持ちになりました。けれど、トキがうそをついたり家族の事情を抱え込んでいたことに気づいて、真っ向から受け止めてくれたのは異人であるヘブン。それがあの場で分かったので、横文字で「ママさん」と呼ばれるのも悪くないと思えたのではないでしょうか。

タエは武家の人間ですが、短い時間で自分の中で折り合いをつけ、こんな家族があってもいいと納得できる柔軟さも持っているのだと思います。おフミさんがいるのに「母上」と呼ばれるのも少し違う気がしますから、「ママさん」がちょうどいいのかもしれませんね。

言葉は「ママさん」でも、トキにとってはきっと「母上」と言えたのと同じ。長年言いたかった言葉をお母さん(フミ)の顔色を気にせず堂々と言えた、すごくすっきりしたシーンだったと思います。

タエとしてはここに夫の傳(堤真一)がいたらどんなによかったかと思いました。いつかトキと本当の親子として振る舞える日を夢見ていた傳。ここにいたら「パパさん」と言われていたのではないでしょうか。 

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朝ドラ通算113作目となる『ばけばけ』は、明治時代を舞台に、怪奇文学作品集『怪談』で知られる小泉八雲の妻、セツをモデルにした物語。ヒロインの松野トキ役を高石あかりさん、夫で小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルにしたレフカダ・ヘブン役をトミー・バストウさんが演じ、怪談を愛する夫婦の何気ない日常を描きます。

トキの父・司之介を岡部たかしさん、母・フミを池脇千鶴さん、トキの祖父 ・松野勘右衛門を小日向文世さん、ヘブンをサポートする錦織友一を吉沢 亮さんが演じます。脚本はふじきみつ彦さんが担当。主題歌は、ハンバート ハンバートの『笑ったり転んだり』。