「今のままでは演じられない」話題の円井わんが朝ドラの役作りでしんどくなったワケ〈ばけばけ第88回〉

『ばけばけ』第88回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第88回(2026年2月4日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

「ごめんなさい。私、異人だから」

 石を投げられたショックで寝込んでいるトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)。

 ヘブン(トミー・バストウ)が枕元に寄り添っている。なんて愛情深い旦那さんであろうか。

 虫の声がしている。

「勝手に貴婦人などと持ち上げておいて」と別室では司之介(岡部たかし)が町の人たちの手のひら返しに憤懣(ふんまん)やる方ない顔をしている。フミ(池脇千鶴)は娘を思って心を痛めている表情。

 そこへヘブンが襖(ふすま)を開ける。トキがようやく寝たので、ママさん、パパさんも休んでくださいと言いに来たのだ。ヘブンもおやすみと、家族が互いに思い合っている。

 なんと、家族だけでなく、錦織(吉沢亮)もまだいた。

「心強い」とヘブンはうれしそう。

「私にできることといったら(これくらいのこと)」とあくまでも控えめな錦織。吉沢亮は顔が派手にもかかわらずものすごく控えめに見せることもできる才能がある。

 トキは寝たふりをして寝ていない。たぶん、みんなを心配させたくないのだろう。

 トキが寝ていると思っているのか、起きていると思っているのかわからないが、ヘブンは「ごめんなさい。私、異人だから」と自分を責める。

 ふたり並んで寝ても、心重い夜であったことだろう。

 ここで主題歌「日に日に世界が悪くなる」。今日は主題歌がドラマにマッチしてしまっている。

 朝になり、ヘブンが出かけに玄関の戸を開けると、前庭がひどく散らかっている。誰かが投げ込んだものらしい。トキに見せたくないので玄関を閉め、「今日はここで」とトキを外に出さないように気遣う。

 そこにサワ(円井わん)がすっとんで来る。

みんながトキを励ましに集まった

 なかに入った途端、ゴミを拾いまくる。猛然とゴミを拾いまくるサワにトキは駆け寄り抱きつく。

 ヘブンには錦織、トキにはサワ。いてくれるだけで心強い存在なのだろう。

 トキとサワは縁側でおしゃべりし笑い転げる。

「笑いたかったら笑えばええ」、勝手に勘違いされてるだけなのだからとサワはトキを励ます。

「そげだよね、堂々しちょればええんだよね」とフミもサワに同意する。

 トキは怪我(けが)がまたうずくフリをしたりして、だいぶメンタルが回復していた。

 そこにまた来客。

 なみ(さとうほなみ)がトキを元気づけに来たのだ。

 こうして3人でそろっていると長屋に戻ったみたいと、懐かしむトキとなみに、サワは自分はまだ長屋にいるのだと反論するも、彼女もまたもう吹っ切れているようだ。

 いったん途切れそうになった3人の縁がまた繋がったのが、幸福の絶頂にいたトキが引きずり降ろされたからというのが皮肉な気もしないではないが、ここはシンプルに、ピンチのときは駆けつける、すてきな友情だと思いたい。

 夕方、ヘブンが帰宅すると、「助けてー」とか「きゃー」とか悲鳴のような声が聞こえ、何事かと庭から縁側のほうに駆け込むと、子どもが走り回っている。久作と新作である。

 サワと白鳥倶楽部の人たちもいる。なみの夫(ヒロウエノ)まで。

「これはパーティーというやつか」

「しかしなぜ」

 錦織が面食らっている。ヘブンに連れられて錦織や庄田(濱正悟)と松江中学の3人組がやって来ていた。みな、にぎやかな様子に驚く。

 庄田が驚いているのは、そこにサワがいたからだ。

 先客たちは「おかえりなさいませ」「へろー」とヘブンに挨拶(あいさつ)する。

 トキのためにみんな集まってくれたのだ。

「素晴らしいの町。素晴らしいの人たち やっぱり好き」と感動するヘブン。「ありがとうございます けん!」と腕を勢いよくあげる。意地悪する人もいるが、トキの味方もたくさんいるのだ。それは良いが、気まずいのは庄田とサワだ。

ゴミ拾いの日々

 もじもじしている庄田とサワ。

 もしかして、これはトキを慰める会でもあり、庄田とサワをもう1回なんとかできたら、という気持ちが誰かにあったのかもしれない?

 ひとときほっこりしたものの、「しかし騒動は収まる気配がありません」と蛇と蛙(渡辺江里子と木村美穂)。毎日毎日、玄関先にゴミが捨てられている。

 トキは淡々とコメを研ぎ続け、フミが変装してこそこそ買い物。買い物くらい誰か代わりに買ってきてくれたらいいのに。そこがドラマ。

 ヘブンは永見(大西信満)とゴミ拾いをしながら暗い瞳をしたトキを心配そうに見つめている。

 余談だが、この回は出演者がたくさん。これまで出てきた松江の人たちをぎゅっと集めた感じだ。

 そして、今日もまた出勤。「大丈夫です」とトキを励まして、またゴミ拾いを覚悟してふうっとため息をつきながら戸をあけると、すっきりきれい。

 誰かがすでに掃除をしたのだろうか。続きは明日!

 本日はサワを演じた円井わんさんのコメントを改めて紹介しよう。

――ここまでサワを演じてきて、役に対する印象は変わりましたか?

 いつも一歩引いた視点で松野家やトキを見守ってきたサワですが第16・17週では心情が揺れ動くようなシーンも出てきます。私自身は、物事を何でもポジティブに捉えられる性格なのですが、サワとして嫉妬や複雑な心情を演じなきゃいけないとなった時に、今のままでは演じられないと思いました。

 そこで、日常の中でも、言われたことを何でもネガティブに捉えるようにしてみたんです。でも、それを毎日続けていると、私自身がすごくしんどくなってきて……。

 ただ、実際に体験したことで、悲観的な考え方をしてしまう人は、感受性が豊かで受け取る力が強く、人に優しくできる人なのかなと思いました。弱いからネガティブなのではなくて、優しいから葛藤する部分も多いのかもと思ったときに、だからサワも、自分を誰かと比べてしまったり、辛かったりしたんだろうなと思えたんです。

 サワは、弱い部分を見せることができて本当によかったと思うし、私にとっても、改めてお芝居が楽しいと思えた、記憶に残る経験になりました。

――サワにとって、庄田との出会いも後半の見どころです。2人のシーンを演じた感想をお聞かせください。

 私自身としては、よき理解者であり、ライバルでもある庄田さんのような存在がいて、サワは救われたなと思いながら演じていました。

 庄田役の濱正悟さんは、とても明るくて、マイペースな人だという印象です。すごく現場が明るくなるし、庄田と似ているんじゃないですかね。あと、独特な間のあるお芝居をされていて、私もいい意味で緊張したんです。

 台本を読んでいるので、次のセリフはわかっているはずなんですけれど、次は何を言われるんだろう……みたいな(笑)。ちゃんとサワとしてドキドキできるお芝居をさせてくれる人だと思っています。

――視聴者の方へメッセージをお願いします。

 サワは、この時代では珍しいタイプの女性だと思いますが、現代の人にも響くものを持っている人だと思います。私自身、自分が信じた道をまっすぐに進んでいってほしいと思いながら、サワを演じてきました。どんな人にも、生きている中で報われないと思うことがあるかもしれませんが、まずは自分を信じることが大事だと思うし、サワの姿からも、それが伝えられたらいいなと思っています。

 まずは、気まずいながらも庄田とまたお話しできるようになったサワ。あせらずゆっくり幸せに向かっていってほしい。

フォトギャラリー

主なシーンより

第18週(2月2日~2月6日)

「マツエ、スバラシ。」あらすじ

ついに借金を返済したトキ(高石あかり)、司之介(岡部たかし)、フミ(池脇千鶴)。ヘブン(トミー・バストウ)に感謝を述べる一同は、銭太郎(前原瑞樹)も交えて借金完済パーティーを開催する。そこにたまたま取材に訪れた梶谷(岩崎う大)が訪れ、松野家借金返済がヘブン先生日録の記事になる。すると、その日を境に松江の人々の様子が一変。トキたちの生活に影が落ちていく。

連続テレビ小説『ばけばけ』

作品情報

連続テレビ小説「ばけばけ」。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描きます。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語です。

【作】 ふじきみつ彦

【音楽】 牛尾憲輔

【主題歌】 ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」

【出演】高石あかり(「高」の表記は、正確には「はしごだか」) トミー・バストウ / 柄本時生 板垣李光人 さとうほなみ 円井わん 濱正悟 大西信満 岩崎う大 前原瑞樹 杉田雷麟 日高由起刀 下川恭平 / 渡辺江里子 木村美穂 / 吉沢亮 / 北川景子 / 岡部たかし 池脇千鶴 佐野史郎 ほか

【放送】 2025年9月29日(月)から放送開始