【小学校受験】慶應横浜、早稲田実業、白百合、雙葉、学習院…難関校の小学校入試から見える、子どもに求められる生活力とは?

特殊なペーパー試験対策や早期詰め込み教育が必要と思われがちな小学校受験。そんなイメージに異を唱えるのが小学校受験家庭を指導するコノユメSCHOOL代表・大原英子さんです。近年の小学校受験を振り返りながら、子どもの“生きる力”にもつながっていく小学校受験の実態を解説します。
■小学校受験は豊かな教育の場
「小学校受験」――その言葉を聞くと、多くの保護者は「特殊なペーパー対策」「厳しい」といった、少し近寄りがたく、あるいは「子どもに無理させているのではないか」というイメージを抱くかもしれません。しかし、実際の小学校受験で出題される内容を見てみると、予想しているものとは違う「知的、創造的、興味深い」世界が広がっています。
今回は、近年の入試事例の中から、小学校受験ならではの行動観察の課題を紐解きながら、小学校受験が決して単なる「早期詰め込み教育」ではなく、子どもの未来を切り拓く「考え方の芽」を育む豊かな場であることをお伝えしたいと思います。
■「お掃除ロボットを発明してください」 慶應義塾横浜初等部が問う生活力と課題解決力
2025年度の慶應義塾横浜初等部の入試で出題された課題は、ロボットを発明するというもの。家事を親任せにしていては、お掃除に役立つロボットは発想できません。一見すると創造力と課題解決力を問う課題のように見えますが、その土台は日常生活。生活の中で、掃除を親とともに行い、「困った」「大変だ」という気持ちを実感し、気づいていないとそもそも発想できない課題です。
課題例:「掃除を助けてくれるお掃除ロボットを発明してください。そのロボットが、どのように助けてくれるのかがわかる絵を描きましょう」
<見られているポイント>
- 日常の不便を身近に捉える生活力と感受性
- 解決する手段を発想する創造力と課題解決力
- 便利になった様子を絵に表す想像力と表現力
例えば、「お母さんが椅子を使って掃除をしていたから、高いところも掃除できるロボットにしよう」「掃除機をかけた時に冷蔵庫の隙間が掃除できなかったから、スライムのような掃除ロボットにしよう」などの発想は、詰め込んだ知識からはなかなか生まれません。日々の家庭生活の中で、家族が何に困り、どうすればみんなが笑顔になれるかを考えられてこそ湧き出てくるものです。日常と学び、そして社会に対する想像力が、一本の線でつながる課題です。読み書きなどの学びだけではなく、家庭での過ごし方や日常の積み重ねも受験において大切な要素だと感じています。
現代の子育てでは親がレールを敷くことも多くあります。いざ自由に「何をしたい?」と問われると、手が止まってしまう子どもが増えているのも現実です。自分の願いや思いを言語化し、形にする。それは、人生を切り開き、未来を生き抜く力の原点でもあります。
■家庭生活がそのまま映し出される課題 早稲田実業学校初等部が重視する「自立した生活」
発想力と同時に、難関校が極めて重視するのは「生活力」です。親がすべてをお膳立てしてあげるのではなく、「自分のことは自分でやる」ことが、日常の中で当たり前にできているか。特別なことではなく、毎日の生活の中で自然に身についているかが、大切に見られています。
早稲田の試験会場には、トレー、お茶碗、汁椀、コップ、箸などが用意され、最新の2026年度入試では以下のようなシンプルな課題が出ました。
課題例:「ご飯を食べる準備をしましょう。準備ができたら水を注ぎましょう」
机の上に、ペットボトルの水、ガラスのコップ、皿、汁椀、お茶碗、箸が置かれている。
<見られているポイント>
- 普段から家庭で手伝いをし、正しく配膳しているか
- ペットボトルの水を自分でコップに注ぐなど、自立した生活をおこなっているか
- 入学後、迅速に配膳の準備ができるか
早稲田では、過去に「シーツをかける」「ラップをかける」といった、家庭での日常的な家事そのものが出題されたことがあります。これらは、いわゆる受験用の特別なテクニックではありません。親がすべてを先回りして整えてしまう環境では、子どもはこうした課題に直面したとき、戸惑ってしまうでしょう。学校側が見ているのは、作業の上手さ以上に、家事に「家族の一員として関わってきたか」という家庭での姿勢です。早稲田は、入学翌日から小学校1年生が一人で通学する学校です。過去問対策をどれだけ積み重ねてきたかではなく、日常生活の中で子どもの自立を大切にしてきたかどうかが問われています。
■他者との関わり方や「改善思考」を見る課題も
私立女子校にはキリスト教の学校が多くあります。そのため、「自分のことを主体的に行う力」と同時に、「相手のために気づき、行動できるか」という姿勢も見られています。
【白百合学園小学校】「相手からどう見えるか」を考える気遣い
早稲田と同様、配膳に関する課題が出題された白百合学園ですが、見ているのは、食器を的確に置けるかではなく、「他者への配慮」です。
課題例:「ティーカップやケーキ、フォークを、向かい合っている相手に対してセットしましょう」

<見られているポイント>
- 自分ではなく、「相手が使いやすい向き」に道具を置けるか
- 指先の動きに相手を大切にする「気遣い」があるか
所作やマナー、他者への配慮は、練習ですぐに身につくものではありません。食卓を囲む家族へのさりげない気遣いや思いやり、日常での習慣は、子どもの指先から自然と伝わってくるものです。知識の量ではなく、「生活の中で育まれた品性」であることがよくわかります。
【雙葉小学校】息を合わせる「他者への想像力」と共生
「他者とどう関わるか」を重視する傾向は年々強まってきています。雙葉小学校ではまさにその資質を問う課題が出されました。
課題例:「二人で輪(フープ)を投げてコーンにかけましょう」
使用する道具:三角コーン、大フープ、小フープ
<見られているポイント>
- 自分のタイミングではなく、二人のタイミングを柔軟に「調整」できるか
- チームとして成功させる「共生の姿勢」を持てるか
- 相手が失敗しても責めることなく、「思いやり」を持って次につなげられるか
一人なら難なくできる輪投げですが、二人で息を合わせて投げるとなると途端に難易度が上がります。相手が何を考え、どう動こうとしているのか、「他者への配慮や想像力」そのものです。そして最近の入試では、「改善思考」があるかをより見られるようになっています。投げた輪が上手くコーンにかからなかった時、次はどう工夫するか。受け身ではなく自ら工夫し、より良い方法を考え行動する。これは大人であっても非常に大事な視点であり、これからの時代を生き抜くための真の知性といえるでしょう。
【学習院初等科】「改善思考」と「正解のない問い」
「改善思考」は、近年特に注目されているキーワードです。与えられた課題をただこなすのではなく、「もっと良くするにはどうすればいいか?」を自ら考え、行動する力が評価の対象となっています。学習院など、堅いイメージを持たれがちな学校でもこの傾向は顕著です。2022年度の学習院の個別テスト(先生の質問に口頭で答える)では以下のような課題が出ました。
課題例:完成している工作の作品を見て、「この作品をよりよくするために、どのような工夫ができるか考えてみましょう」
<見られているポイント>
- 作品を丁寧に観察し、良さや工夫できそうな点に気づけているか
- 「こうしたい」という発想を、現実的な方法を含めて説明できるか
- 否定ではなく、良さを生かしながら、よりよくしようとする気持ちがあるか
これまで見てきたとおり、小学校受験では、日常生活を大事にし、子どもの疑問に寄り添い、親子で関わってきた様子が問われ、試験会場という場所でそのまま映し出されます。
(文/コノユメSCHOOL代表・大原英子)

○大原英子(おおはら・えいこ)/東京大学卒業後、大手通信会社に勤務。その後、自身の母親が30年以上にわたり主宰する受験絵画教室のメソッドをもとに、2011年に小学校受験専門の幼児教室を設立。2022年には、教育の新しいかたちを提案すべく株式会社コノユメを設立。同年、オンラインと対面のハイブリッド型幼児教室「コノユメSCHOOL」を開校し、幼児教育業界で他社に先駆けてオンライン教材を導入。日本全国さらに海外在住の家庭からも高い支持を集め、多くの家庭に選ばれ続けている。これまでに、慶應義塾幼稚舎・慶應義塾横浜初等部・早稲田実業学校初等部・雙葉小学校・白百合学園小学校・聖心女子学院初等科、暁星小学校、東京農業大学稲花小学校など、難関名門校への合格者を多数輩出。
・【図】2026年度の早稲田実業初等部、慶應横浜初等部などの入試問題はこちら(全5枚)
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