自閉スペクトラム症の高校生作家が振り返る小学校生活「宿題ができない。宿題の指示自体が認識できなかったから」

自閉スペクトラム症(以下、自閉症と記載)の診断を受けている、大阪府在住の高校2年生、藤田壮眞さん。自閉症である自分の視点から見た日常をnoteやXで発信し、その文章が話題を呼んでいます。自身の特性や学校生活で直面してきたこと、同じく自閉症である当事者やその親に伝えたいことなど、藤田さんに話を聞きました。※後編<中3のとき作文が文部科学大臣賞を受賞。自閉スペクトラム症の高校生作家に必要だった「書く」ということ「散らかった部屋を片付けるような感覚」>に続く
■雑音の多い場所では話が聞き取りにくい
――5歳のときに自閉スペクトラム症(ASD)と診断されたそうですね。小学校生活を今振り返って、どうでしたか?
先生の指示にうまく従えなかったとき、「言うことを聞く気がないのか?」「やる気がないならやらなくていい」と怒られることがよくありました。でも、僕からするとやる気がなかったのではなく「指示そのものが理解できていなかった」ケースが多かったんです。
特に宿題を忘れることが多かったのですが、そもそも宿題があったこと自体をわかっておらず、先生に怒られて初めて「今日宿題があったんだ」と気づくこともありました。
――宿題があることを忘れていたのではなく、「宿題として出された」こと自体がわかっていなかったということでしょうか?
そうです。「ここが宿題ですよ」という指示自体が認識できていなかったんです。特に、黒板に書かれず口頭だけで伝えられたり、予定表になかったりする宿題は、僕にとっては「存在しないもの」と認識してしまいます。あいまいな「ふわっとした空気で伝えられた情報」は、僕の中では「ない」ことになってしまうんです。
他にも、いろいろな雑音がする環境では、話を聞き取りにくくなることが多いです。一対一で喋っていても、後ろで次の授業の準備をする音、他学年の生徒が走り回る音、プロジェクターの電源が切れる音、iPadの通知音などが鳴ると、すべての音を拾ってしまうんです。気づいたら相手の話を聞き逃していて、「ごめん、もう一回言って」と聞き返すことがかなり多いです。
――そういうときに「やる気があるのか?」と言われたら悔しいですよね。
「やる気はあります!」と言いたいのですが、感情がグッと高まってしまって、怒った口調になってしまい、別のトラブルに発展してしまうこともありました。

■雑談は難しい。小説の読解は得意
――noteでは、言葉を額面通りに受け取りすぎる傾向についても書かれていましたね。“「うどん一袋買ってきて」と言われて売り場に行ったら、割り引きされた3袋で69円のうどんがあった。でも僕は『一袋でいいよ』と言われたので、一袋106円のうどんを買って帰った”というエピソードが印象的でした。
言われたことをそのままの意味で受け取るので、言葉の裏の意味や、見えない文脈を読み取るのは苦手です。あと、嫌みや皮肉もわかりません。「すごいね」と言われて素直に喜んでいたら、実はバカにされていた、ということがありました。うれしい気持ちで家族に「褒められたよ」と話したら、親から「それは嫌みかもしれないよ」と言われて、ようやく気づくんです。
一番難しいのは雑談です。テーマがコロコロ変わったり、複数の話を同時進行していたりすると、「この人は何を話しているんだろう?」と理解するのに5分くらいかかって、気づいたら話が終わっていたりします。
逆に、小説の読解はすごく得意なんです。なぜなら、気持ちがすべて「文字」になっているから。空気は読めないけど、書いてあることは絶対にわかる。小説の登場人物の気持ちはすごくよくわかります。発達検査を受けると、僕は言語理解能力が高いという結果になるんです。だから、余計に周りには理解されなかったのかもしれません。

■「車が来た」が、即時に「危ない」に繋がらない
――中学受験を経て中高一貫校に入学されたそうですが、受験勉強ではどんなことをしましたか?
作文の特訓と、英検・漢検・数検を受けました。英検・漢検は割とすぐに合格したのですが、数検には苦戦しました。
これも自閉症の特性と関係があると、周りの方に教えてもらいました。というのも、覚えた公式と、目の前の問題がぱっと繋がらないんです。公式を理解して覚えても、いざ問題を解くときに「この問題は、さっきの公式を使う場面だ」というように情報が結びつかない。
これは数学に限らず、あらゆる場面で起きることです。例えば道を渡っていて「車が来た」「僕は今、道路に立っている」といった情報はあっても、それが瞬時に「このままではひかれるから危ない、急ごう」とは繋がらない。「車が来ているな、へー」で終わってしまって、下手したらひかれそうになるから、気をつけなければいけないんです。

――自分の特性を、それだけ冷静に捉えて説明できるのはすごいですね。
家族や支援の先生、ソーシャルスキルトレーニングなどで「あなたはこういうことで困っているから、周りの人にはこう話そう」とずっと教わってきて、ありがたく思っています。

■「他者」の存在を意識して、伝え方が変わった
――中学の3年間では、自分が変わったという印象はありますか?
かなり変わりました。小学校の支援級から離れて、初めての生活でしたから、今までサポート付きでできていたことが、一人ではできないという現実に直面しました。
一番覚えているのは、クラスメイトとの会話が通じなかったことです。一生懸命話しているのに「何言ってるの?」と言われたり、最悪の場合はけんかになったりしました。先生に理由を聞かれても「わかりません」としか言えなくて。誰かに話しかけて、まだ返事がないのに、自分で勝手に納得してしまうこともありました。
そんなトラブルが続いたとき、家族がこんな公式を教えてくれました。
「自分+X(相手)=コミュニケーション」
「必ずXに誰かを代入してください。空っぽでは答えが出ません」と。つまり相手がいなければコミュニケーションは成立しないと、僕に教えてくれたのです。
相手がいてこそコミュニケーションだ、という前提に立って初めて、僕の伝え方には改善すべきところがあると気づきました。例えば、僕は主語・述語・修飾語があいまいなまま話していたので「今話しているのは、誰の話?」というように、話が相手に伝わっていなかったんです。以降は、主語・述語・修飾語を意識して話すようにしています。今もその努力の途中です。

――自分の思いがうまく伝わらず、トラブルが起きたときはどう対処してきましたか?
何が悪かったのか自分ではわからないことも多いので、第三者に聞くようにしました。以前はテンプレートの「ごめんなさい」しか言えませんでしたが、今は「これが理由で怒らせたんだな」とわかるので、根拠をもって謝れるようになりました。
■学校は、価値を決める場所ではないから
――成長ホルモンの関係で身長が平均より低く、身体的な悩みもあったそうですね。
高校生になっても合うサイズの制服がなくて、中学の制服を着ていました。周りと比べて体が小さいことで悩むこともありましたが、文化祭の劇で『名探偵コナン』のコナン役をやったときは、薬で小さくなったという設定にぴったりで、すごくウケたのでうれしかったです。
――自閉症の当事者の方や、発達特性で悩む方へ、メッセージをお願いします。
学校は「あらかじめ決められた大量のルール」でできています。授業中は立ち歩かない、チャイムが鳴ったら座るなど、できて当然とされるルールがたくさんあります。それを守るのは本当に難しいです。
でも、学校はずっと続くわけではないと教わりました。社会のすべてが、学校と同じルールでできているわけではないんです。学校でうまくいかなくても、それが自分の価値を決めるわけではない。「あなたは悪い子で価値がない」、逆に「あなたは良い子で価値がある」などと決めつける場所ではないから大丈夫、と伝えたいです。
――素敵なメッセージですね。
母は僕に、感情や表情の意味、ダメなことはなぜそれがダメなのかを一から教えてくれました。「どうしてあなたは人の気持ちがわからないの?」と嘆くのではなく、すべてインプットさせるところから始めてくれた。「普通はこうだろう」という常識をすべて捨て、ゼロから自閉症のことを学んでくれたんだと思います。そのことに、すごく感謝しています。

(取材・文/塚田智恵美、写真・絵/藤田壮眞さん提供)
〇藤田壮眞(ふじた・そうま)/5歳の時に自閉スペクトラム症の診断を受け、小学校では支援級に在籍。中学受験を経て、中高一貫校に進学。中学3年時に夏休みの課題で書いた作文「自閉症を持つ私から見た日常」が文部科学大臣賞を受賞。SNSで綴る文章が大きな話題を呼んでいる。著書に『わたしは、あなたとわたしの区別がつかない』(KADOKAWA)
note:https://note.com/fujitasoma
X:https://x.com/FujitaSoma
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