15年在住で「京浜東北線大好き」46歳男性の持論

最初に京浜東北線に住もうと思った理由, 子どもの友人関係と学区を考慮して住まいを2回微調整, 小・中・高と公立の教育機関が充実している, 子育てしやすい環境が人を呼ぶ, ライフステージが変わっても暮らしやすい, 首都圏で住むなら、やっぱりここがいい

与野駅前のロータリー(筆者撮影)

引っ越しても、ライフステージが変わっても、なぜか離れない路線がある。たとえ最寄り駅は変わっても、路線はずっと変わらない。なぜなら、ここで暮らす自分が、一番しっくりくるから……。
本企画は、同一沿線に長く住み続けてきた人に話を聞きながら、「なぜその沿線を選び続けているのか」「街が変わっても変わらない、沿線ならではの魅力は何か」などを考えていく。

前編では、京浜東北線沿線に約15年住み続けているフリーライターの勢田朋来さん(46)に、沿線としての強みや弱み、生活利便性などを聞いた。

【画像34枚】便利で家賃も高くなく、教育環境もいい…住民が「見栄えより質」と例える京浜東北線の街の様子

後編では勢田さんがなぜこの沿線を選び、15年間住み続けているのか。その理由を深掘りしていく。

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最初に京浜東北線に住もうと思った理由

最初に京浜東北線に住もうと思った理由, 子どもの友人関係と学区を考慮して住まいを2回微調整, 小・中・高と公立の教育機関が充実している, 子育てしやすい環境が人を呼ぶ, ライフステージが変わっても暮らしやすい, 首都圏で住むなら、やっぱりここがいい

インタビューに応じる勢田朋来さん(筆者撮影)

勢田さんが京浜東北線沿線に住みはじめたのは、2010年11月のこと。それまで勤務先に近い都営新宿線の船堀駅周辺に住んでいたが、結婚を機に引っ越すことになった。

地元は奈良で、大学時代を過ごしたのは神戸。首都圏の土地勘がほとんどなかったため、新居探しは妻の意向を尊重することにした。こうして候補にあがったのが、京浜東北線の与野駅だった。

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与野駅西口(筆者撮影)

「決め手は、与野に義理の姉が住んでいたことですね。私はどこでもよかったんです。でも私の実家は奈良、妻の実家は愛媛でどちらも遠い。子どもができた時のことを考えると、なにかあった時に頼れる親戚が近くにいたほうがいいよねって。私の身内はこっちに誰もいませんから」

さらに、妻自身がこのエリアになじみがあった。転勤族の家庭に育ち、小学6年生から大学時代まで北浦和に住んでいたのだ。お隣の浦和駅に近い浦和第一女子高校の出身で、今も高校時代の友人たちと交流がある。妻に土地勘があり、頼れる人も多い。その安心感は大きく、ほぼ即決に近いかたちで与野への移住を決めた。

子どもの友人関係と学区を考慮して住まいを2回微調整

与野で暮らしはじめて4年近く経った頃、勢田さんは駅の西口から東口に移っている。きっかけとなったのは、お風呂の問題だった。

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与野駅東口。西口とは少し違い懐かしい雰囲気(筆者撮影)

「最初に借りたのは、2LDKで家賃8万6000円のアパート。しばらくは夫婦2人のつもりだったので、お風呂の追い焚き機能を重視していませんでした。共働きで帰りも遅いし、時間を合わせて入ればいいよねって。

ところが入籍して間もない時期に妊娠が判明して、状況が変わったんです。子どもが生まれても、私の帰宅時間は遅いまま。毎回お湯を溜め直すのも大変だったので、アパートの契約更新のタイミングで引っ越しました」

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最初に住んでいたアパートからよく通ったスーパー。昨年建て替えられたばかり(筆者撮影)

14年8月、1回目の引っ越しをした。同じ駅の西口から東口へ、反対側への移動だ。同じ駅にこだわったのは、長女が通っている保育園を変えたくなかったから。結果的に自宅から保育園までは遠くなったが、なにより優先したのは追い焚き機能付きの部屋に移ることだった。

2回目は18年1月、長女が小学校に入学する直前のこと。同じ東口エリア内で引っ越した。理由は、保育園の友達と同じ小学校に通わせるためだ。

「当時の学区だと、同じ保育園から同じ小学校に上がる子がひとりもいなかったんですよ。長女はかなり引っ込み思案な性格なので、仲の良い子と一緒の学校に通わさせてあげたくて」

4歳下の次女も同じ保育園に通っている。子どもたちが少しでも安心して過ごせるように、保育園の友達が多く進学する小学校の学区内で物件を探しはじめた。

ある日、妻が理想的なマンションを見つけてきた。小学校まで徒歩3分、放課後児童クラブの施設もすぐ近くという場所だ。

勢田さんが15年間同じ駅に住み続けているのは、子どもの友人関係と学区を考慮して住まいを微調整した結果だった。ここでひとつ疑問が残る。いくら近距離とはいえ、引っ越しには当然お金がかかるはずだ。金銭的な負担については問題なかったのだろうか。

「今住んでいるマンションは2LDKで家賃9万円なので、最初に借りたところとほぼ変わりません。引っ越し費用に関しても、近距離だからトラックの拘束時間が短い分、安いんですよ。細々としたものは自転車で何往復かしましたけどね」

小・中・高と公立の教育機関が充実している

勢田さんが京浜東北線沿線に住み続けている理由は、もうひとつある。それは、さいたま市の教育環境の良さだ。

「うちから浦和一女高校まで3、4キロなんですよ。浦和高校と大宮高校は2キロぐらい。自転車通学で問題なく行ける範囲です」

埼玉県には「埼玉県立御三家」と呼ばれる進学校がある。それが男子校の浦和高校、女子校の浦和第一女子高校、共学の大宮高校の3校だ。いずれも難関大学への高い進学実績を誇り、特に浦和高校は例年40名前後の東大合格者を輩出している名門校。こうしたトップクラスの公立高校がすべて生活圏内にあるのだ。

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与野駅から少し歩くと子ども向け英会話教室があった(筆者撮影)

「東京に住んでいる同年代の人に話を聞くと、半分以上が中学受験をするそうなんです。中学受験をするとなると、せっかく仲良くなった友達とバラバラになっちゃうじゃないですか。この辺りは公立の小・中学校も教育レベルが高い。だから公立の教育機関が充実しているのは、経済的に見てもすごく魅力的だと思います」

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与野駅のバスロータリー前のメインストリートにある幼児教室(筆者撮影)

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幼児教室の向かいには2つの個別指導塾がある。間に歯医者を挟み、手前に「城南コベッツ」奥に「フリーステップ」(筆者撮影)

さいたま新都心から与野まで歩いてみたところ、確かに駅周辺にはたくさんの進学塾があった。少し進めば進学塾に出くわす状態で、その窓に張り出されているチラシも象徴的だった。

たとえば東京23区の塾では、私立中・高校の合格実績を大々的に打ち出す傾向が強い。しかし京浜東北線、特に浦和近辺の塾はまず「浦和⚪︎人、浦和一女⚪︎人、大宮⚪︎人」と公立高校の名をズラッと掲げ、そのあとに私立高校が続いていた。

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与野駅前にある塾では、県立御三家の合格者数が大々的に発表されている(筆者撮影)

子育てしやすい環境が人を呼ぶ

さいたま市は教育面だけでなく、子育て環境全般が整っているそうだ。

まず、図書館が充実している。前編でも紹介した通り、浦和駅前の浦和パルコ8階には市内最大規模の「中央図書館」があり、北浦和駅近くにはフロア全体が児童室になっている「北浦和図書館」がある。公園も豊富で、子どもが安心して遊べる場所がいくつもあるのは親にとって心強い環境だ。

新しい保育園も続々と登場しているという。

「保育園が増えましたね。うちの子どもたちが通っていた保育園は、今では老舗感が出ちゃいました。あと、子どもの送迎バスが多いです。幼稚園や保育園だけじゃなくて、民間学童保育やスポーツクラブの送迎バスも走ってる。バス停に3歳ぐらいのお子さんとお母さんが並んでいるのをよく見かけますよ」

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与野駅前にある保育ルーム(筆者撮影)

子どもだけで安全に移動できる仕組みが整っていると聞き、送迎がネックで子どもの習い事を諦めた経験のある筆者にはなんともうらやましい環境だと感じた。

そして、さいたま市には子どもが多い。小学4年生の次女の学年は5クラスあるそうだ。1クラス30人として、1学年150人。少子化の時代に、これだけの子どもがいる地域は珍しいのではないだろうか。

「子育てしやすいから子どもが多くて、さらにどんどん現役世代が入ってくる。このエリアの魅力って、そういうところだと思うんですよね」

高層マンションも増えた。新しいファミリーが次々と流入し、街が若返り続けている。子育てしやすい環境が人を呼び、人が増えることでさらに子育て環境が整う。そんな好循環がこの沿線で生まれているようだ。

ライフステージが変わっても暮らしやすい

長年、京浜東北線で通勤していた勢田さんだが、25年10月にフリーランスとして独立。今は在宅ワークが中心だ。働き方が変わっても、この沿線の暮らしやすさは変わらない。むしろフリーランスになってから、在宅ワークとの相性の良さに気づいたそうだ。

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渋沢MIX(出典:電通ライブプレスリリース)

沿線にはコワーキングスペースが多数あり、勢田さんはさいたま新都心駅直結の「渋沢MIX(ミックス)」をよく活用している。

「渋沢MIX」は埼玉県が主導する初のイノベーション創出拠点で、会員登録をすれば無料で利用可能だ。実は今回のインタビューも、勢田さんの提案で「渋沢MIX」のミーティングルームでおこなった。もちろん無料である。「家にいると光熱費がかかるし、睡魔の問題もある。ここに来ればすべて解決するんです」と顔をほころばせる。

休日は家族連れでにぎわう駅近の商業施設も「平日ってこんなに空いてるんだ」と思うほど静かだ。「渋沢MIX」の下にあるマクドナルドでコーヒーを買い、コワーキングスペースで仕事をする。そうしたちょっとした楽しみも混雑しない平日だからこそ可能なのだという。

「結婚がきっかけで住みはじめた街ですが、独り身でも居心地いいだろうなと思いますね」

将来は、親の介護が必要になれば二拠点生活を視野に入れている。夫婦とも両親が地方にいるため「ここに永住するかどうかまだわからない」という前提で、ずっと賃貸生活を続けてきた。

しかしフリーランスになったことで、働き方の自由度が上がった。家賃相場は15年間ほぼ変わっていない。二拠点生活という柔軟な選択肢を持てるのも、この沿線の暮らしやすさがあってこそだろう。

【画像34枚】便利で家賃も高くなく、教育環境もいい…住民が「見栄えより質」と例える京浜東北線の街の様子

首都圏で住むなら、やっぱりここがいい

約15年間、京浜東北線沿線に住み続けてきた勢田さんに、沿線の魅力を改めて聞いてみた。

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インタビューに応じる勢田朋来さん(筆者撮影)

「埼玉ってどことなくのどかなんですよ。荒川を越えたら帰ってきたって感じがします。やっぱり自分には、この沿線が一番しっくりきますね」

奈良県出身の勢田さんにとって、埼玉の「ちょっとゆるい感じ」は心地いいものだったようだ。

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与野駅の東西をつなぐ大原地下道。雰囲気たっぷり(筆者撮影)

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大原地下道の壁面には手書きのイラストが多数設置されている(筆者撮影)

決して不満がないわけではない。京浜東北線は混雑するし、遅れやすい。夜は終点で途方に暮れぬよう、行き先を確かめて電車に乗る必要がある。多少の不満はあるが、それを補って余りある魅力がこの沿線にはある。

「学生の頃から競馬や野球観戦であちこち出かけてきました。取材でも日本各地に行ってますけど、首都圏で住むならやっぱりここがいいんちゃうかなという気がしますね」

キッパリと言い切る彼に、京浜東北線を離れる選択肢はないようだ。

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取材後、勢田さんが連れてきてくれた「中華王様」。いつも行列ができているという(筆者撮影)

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「王様ラーメン」と半チャーハンのセットで850円。お手頃価格が嬉しい(筆者撮影)