ワークマン「780円シューズ」累計850万足爆売れの訳

ワークマンで780円のシューズを発見, 「建さん作業靴Ⅱ」3つの特徴, コンビニおにぎりが2倍になる時代、なぜ780円を維持できる?, バンドマンにタクシードライバーも愛用!

ひもがないシンプルなデザイン(写真:筆者撮影)

人間が生きるうえで不可欠な「食と健康」に、ユーモラスかつ真剣に挑む連載「中たんぺいのまんぷくウェルネス」。連載第4回はジム通いの愛用品について紹介します。

健康のため、筆者はジム通いをしている。本格的な運動に取り組もうと思った時に悩むのがシューズ選びだ。

【写真を見る】ワークマンのコスパ抜群《780円シューズ》はこんな感じ

運動する時に日常履きのスニーカーを使うと汚れやソールの摩耗が気になる。一方で、週に数回の運動のためだけに数千円の専用シューズを購入するのは気が引ける。

ワークマンで780円のシューズを発見

「安くて動きやすいシューズはないだろうか?」と考えていた時に見つけたのがワークマンのシューズだ。商品名は「建さん作業靴Ⅱ」。価格はなんと780円だ。SNSやYouTubeの筋トレ界隈で使用している人の姿もよく見かける。

「建さん作業靴Ⅱ」という個性的なネーミングの由来は「建設現場」の「建」から。その名の通り建設現場で働く人のために開発された商品であり、販売開始は2010年。販売開始から16年経った現在も毎年約50万足が安定的に売れている。

シューズ市場では1年間で1万足売り上げが上がればヒット商品と言われる。そのことを考慮すると「建さん作業靴Ⅱ」は異例のロングセラー商品だ。

なぜここまでの人気なのか。短期間でトレンドが変わるアパレル市場において、なぜ安定的に売れ続けているのか。株式会社ワークマン広報部の松重尚志さんに話を聞いた。

「建さん作業靴Ⅱ」3つの特徴

まずは「建さん作業靴Ⅱ」の機能性について触れたい。その特徴は次の3つのポイントにある。

①足裏感覚を重視したソールの設計

最も特徴的なのは、地面の踏み心地のよさだ。ソールが薄いため、裸足で地面の上に立っているような感覚がある。

この機能に大きく寄与しているのが、ソールの素材に採用している天然ゴムだ。

ツルツルとした樹脂系の素材とは異なり、弾性があるため滑りにくくい。また、ソールをウェーブ状に加工することで強いグリップ力を実現している。筆者は筋トレでマシンやバーベルを使う時に使っているが、普段履きのスニーカーより足を固定できるように感じる。

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地面をつかみやすい形状にしている(写真:筆者撮影)

なぜこのような機能を持たせているのか。それは建設現場で求められる機能だからだ。

「このシューズはひもがない足袋靴と呼ばれるシューズです。内装工事のような安全靴を使わない現場でよく使われています。脚立を使って高いところに登ったり、座りながら作業をするため、地面を踏む感覚が重要になるんですよね」

②薄さと疲れにくさの両立

2点目が、疲れにくいことだ。ソールの薄いシューズのデメリットとして、足裏が痛くなりやすい点が挙げられる。「建さん作業靴Ⅱ」もソールが薄いため、ジョギングなどで使用していると足やふくらはぎに疲労感を感じやすい。しかし、それ以外の場面で使いにくさは感じない。

筆者の主な用途は24時間ジムでの使用だ。玄関でシューズを履いてジムに向かい、着替えることなく運動を始める。自宅からジムへ移動する時には多少の歩行をするが、地面からの衝撃をほどよく吸収してくれる(※筆者が通うジムは運動に適したシューズであれば履き替えなくてOKだ。施設により「土足厳禁(内履き必須)」と「土足OK」に分かれるため、靴の履き替えは通う施設のルールをご確認ください)。

これを実現しているのが試行錯誤を重ねて開発した中敷だ。

「足裏の感覚を重視しているのでソールの薄さにはこだわっています。ただ、疲労感の軽減のために、中敷を少し厚く作ってあるんですよね。現場での仕事時間は8時間あります。職人さんたちが作業に集中できるように調整を重ねて開発しました」

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中敷には筆文字のようなフォントで商品名がデカく刻印(写真:筆者撮影)

さらに、シューズの横幅も広く設計されている。筆者の靴のサイズは27センチだが、日常履きのスニーカーを同サイズで購入した場合、親指と小指が窮屈に感じることがある。サイズアップすると踵が擦れることもあり、シューズのサイズ感は悩みのタネだ。「建さん作業靴Ⅱ」は足の締め付け感がない。足の幅が広い日本人にマッチしたサイズと言える。

「足元の感覚を重視した職人さんたちが使うので、サイズも製品開発時に細かく調整しています」

③現場の作業に耐えられる丈夫さ

最後に挙げたいのが、シューズの耐久性だ。シューズの表面に厚手の布が採用されているため、破れにくい。筆者のように運動で使用する場合、マシンやダンベルにシューズが当たることがある。それでも傷まないため、安心して筋トレに集中することができる。

「シューズの表面にはポリエステルなどの素材を使用することもあります。ただ、このシューズでは摩耗に強い綿の素材を採用しているんです。現場で毎日使うので、耐久性は重要ですよね」

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ヴィンテージデニムのような趣がある(写真:筆者撮影)

ちなみに「建さん作業靴Ⅱ」のカラーのラインナップは、白・黒・紺の3色だ。黒と紺が人気だが、白も根強く支持されているという。

「現場では汚れの目立つ白色は敬遠されるイメージがありますが、そんなことはありません。塗装などの現場での汚れ方の違いによって、好みの色が分かれるのかなと思っています」

コンビニおにぎりが2倍になる時代、なぜ780円を維持できる?

建設現場で使うことを意識して機能性を求めた「建さん作業靴Ⅱ」。過去には値上げを行っているが、それでも780円というお得な価格を維持している(2026年2月時点)。購入しやすい価格もこのシューズの大きな魅力と言える。原料や人件費が高騰し、この15年間でコンビニのおにぎりも約2倍に上昇している。

なぜワークマンは値上げを最小限に抑えて、1000円未満で販売を続けられるのだろうか。

その大きな理由は、長期にわたり安定的に購入されていることにある。「建さん作業靴Ⅱ」は販売開始から16年間で累計850万足が売れており、販売数量も毎年一定である。つまり、安定的な需要に応え続けることで、スケールメリットを出すことに成功している。

「作業靴にははやりや廃りが少ないんですよね。アパレル商品は季節ごとに入れ替わりますが、作業靴は一度ヒットすれば、長期間にわたって販売できます。協力工場の生産の効率化も進めやすいです」

また、作業靴は毎日使用するため、買い替え需要が定期的に発生する。これも売り上げを支える要因だ。

「職人さんは気に入った商品を継続して使う方が多いです。また、現場を転々としますよね。ワークマンは全国に1087店舗ありますし、店舗は午前7時にオープンしています。購入しやすいことも安定的な売り上げにつながっている理由のひとつだと思います」

バンドマンにタクシードライバーも愛用!

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ちょっと近所に買い物に行く際に履いても違和感はない。また、ひもがなく脱ぎ履きしやすいのもお気に入りだ(写真:筆者撮影)

「建さん作業靴Ⅱ」は建設現場以外の使用シーンに拡大している。最近では、タクシードライバーが履くドライビングシューズとして購入する人やドラムを叩く時に使用する人も増えているという。

「予想外ですよね。ただ、こういうことはたまに起こります。以前は、滑りにくさが特徴の厨房用シューズが妊婦さんに広まったこともありました。警備員さん向けのレインコートがバイクに乗る人たちの間で人気になったこともあります」

特定の用途に特化し、機能性を突き詰める。そして、長期間安定的に販売することで低価格を実現する。このビジネスモデルを後押しするひとつの要因が2018年より展開しているワークマンプラスだ。職人ではない人向けの店舗を作ることで、一般の人が機能性の高い商品を手に取りやすくなった。

最近ではアウトドアやスポーツ用のシューズ開発にも注力している。2025年度における販売数は175万足。「シューズの需要も年々増えています」と松重さんは話す。

筆者の訪れた店舗でも3000円未満のシューズが販売されていた。無骨なデザインの商品は多いが、これからアウトドアを始める人にとっては購入しやすい価格だ。

ただし、ワークマンのメイン商品は職人が使用する作業服やシューズ。「商品開発の中心はやはり作業用の商品です」と松重さんは改めて強調する。

「労働寿命を伸ばすための商品づくりが今後も中心になります。その中で培った技術や知見を生かして、スポーツやアウトドアなど他の分野にも展開していきたいと考えています」

建設現場で働く職人のニーズに応え、そこで培った開発力で新たな商品を生み出すワークマン。今後、どのような高機能商品を市場へ投入するのか。その動向に期待したい。

後編ではジム通いに愛用しているTシャツを紹介する。