「#ママ戦争止めてくるわ」はなぜ共感され、非難されるのか 戦争を「自分の問題」にしたメッセージの意義は

 衆院選終盤の一人の女性の投稿をきっかけに、X(旧ツイッター)で1億8000万回以上表示された「#ママ戦争止めてくるわ」に今も賛否の声が寄せられている。産経新聞は22日、自社サイトで「ママは何を止めにいったのか」から始まる見出しで批判的に論評した。何が議論を引き起こしているのか。(福岡範行)

◆「戦争しようとしている日本というレッテル」

 始まりは、投開票日の3日前の5日夕、期日前投票に出かけた東京都内在住のエッセイスト清繭子さんが、直前に子どもにかけた言葉のまま、「ママ、戦争止めてくるわ」とXに投稿した。すると、「オッサンも」「サラリーマンも」と続く人たちが現れた。検索の目印になる「#(ハッシュタグ)」が付き、清さんの元投稿を見ていない人たちにも、言葉が拡散した。

清繭子さんが最初に投稿した「ママ、戦争止めてくるわ」

 SNS分析ツール「メルトウォーター」の推計によると、「#ママ戦争止めてくるわ」は投開票日の8日にかけて急激に拡散。投稿のほとんどが、コメントをつけない「リポスト(再投稿)」だった。投稿者は女性が多かった。

 共感が広がる中で、この言葉に違和感を示す反応も増え始めた。選挙後のネット動画配信サービス「ABEMA」のニュース番組では、出演者が「すごく気持ち悪かった。いかにも戦争しようとしている日本。そういうレッテルにしか見えなくて」と発言した。

◆「語られなかった論点をすくい上げた」

 SNSマーケティングに詳しい桜美林大の西山守准教授は「市民運動にしようという気持ちではなく、つぶやいたものが、共感や反感を受けたりした。人々に引っかかる言葉だったと思う」と受け止める。

清繭子さんの「ママ、戦争止めてくるわ」に反応した「株式会社明後日」は俳優の小泉今日子さんのアカウント

 「ママ」という個人的かつ「パパ」などの別の一人称にも言い換えやすい言葉を使い、「戦争を海外の問題ではなく、自分に関わることだとすごく端的な言葉で表現した」ことで、見た人にとっても「自分事」になり、賛成や反対の感情を引き出したとみる。

 投稿に共感した側が抱く高市政権による防衛費増強などへの不安が可視化され、「表面化していなかった論点をすくい上げて提起した」意義があったと西山氏は語る。選挙期間中、経済対策としての積極投資への言及に比べ、高市早苗首相による安全保障に関する発言は少なかった。

 投稿への反発が広がった背景には、国際情勢の変化がありそうだ。政治ライターの平河エリ氏は、ロシア軍によるウクライナ侵攻が続く中で、「戦後的な、消極的な関与」だけでは対応しきれないと考え、別の方法で国際社会での存在感向上を図る「新しい日本像に肯定的な人が増えている」とみる。

◆異なる意見の人たちにも投稿が届く

 産経の22日の論評もロシアや中国、北朝鮮に対する危機感の広がりに触れ、「戦争とは、向こうからやって来るものという認識に変わっている」と指摘した。

足を止めて選挙演説を聞く有権者ら=1日、東京都内で(芹沢純生撮影、一部画像処理)

 平河氏は、現状を「複雑性の高い議論が必要だが、なかなか行われていない」とし、野党候補者らが単純化された言葉に積極的に賛同したことを疑問視。投稿が政治色を帯びて広がったことを「『ムーブメントにしよう』という意思が働いた印象がある」と受け止める。政治家らに対して「戦争とはどういう戦争で、止めるとはどういうことかを訴えて、議論を喚起すべきだったんじゃないか」と述べた。

 SNSは自分と似た意見ばかりが集まりやすいとされる。前出の西山氏は今回、賛否が相次いだことで、自分とは異なる意見の人たちまで投稿が届いたことを前向きにも捉える。「(異論を)攻撃する前に、なぜこの人はこう考えているのかという背景を見ると、新しい視点を発見し、自分の思考を深めることができる」からだ。「民主主義は大勢の声だけでなく、そこに反する声も拾い上げることで健全性が担保される」

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