MacBook Neoの「イイところと課題」iPhone用CPU搭載&10万円切りの入門機に迫る

13インチのMacBook Neo。MacBookシリーズとして初めてAppleシリコンAシリーズチップを搭載した入門機です
アップルが3月11日に発売するMacBookシリーズの新製品「MacBook Neo」の先行レビューです。気になる本機のパフォーマンスやポータビリティー、デザインなど、実機を試しながらレポートします。
軽量・コンパクトな13インチ MacBook初のカラバリ「シトラス」
今回筆者が試したMacBook Neoは、内蔵ストレージを512GBに増量、Touch ID搭載Magic Keyboardのオプションを付けたモデルです。256GBのストレージ、Touch IDなしのモデルは価格が9万9800円ですが、オプションを付けると11万4800円になります。
それでも、アップルが同日発売する14インチM5搭載MacBook Airは値上げして18万4800円からなので、Neoのオトク感は強くあります。
Neoが搭載するLiquid Retinaディスプレイのサイズは13.0インチ。現行MacBook Airは13.6インチなので、小数点以下を切り捨てると同じ13インチではあるものの、画面と本体のサイズ感はNeoの方が少し小さめです。
筆者が所有するM1搭載MacBook Air(2020年モデル)と、2010年に購入した11.6インチのMacBook Airのサイズ比較を参考までに紹介します。

左側Neoは横幅29.75cm、縦幅20.64cm。右側のM1搭載MacBook Airは横幅30.41cm、縦幅21.5cm

右側の11.6インチMacBook Airは横幅30cm、縦幅19.2cm
重さは現行のM5搭載Airの13インチと同じ、1.23kgです。本体の高さ=厚みはAirの方が14mmほど薄いのですが、Neoも1.27cmなので十分に薄いと言えます。11インチのM4搭載iPad ProにMagic Keyboardを装着した状態の厚さに近いです。
最初にNeoを手に取った時には本体コーナーの角R(角の丸み)がより大きくラウンドしているように感じられました。15インチのM5搭載Air、14インチのM5 Max搭載Proに重ねてみると、やはりNeoの方がややラウンドが大きくゆったりとカーブを描いています。

奥はM5搭載MacBook Air。角RはNeoの方が少しゆったりとしたサイズのようです
4色あるカラーバリエーションの中から、今回はシトラスのNeoを試しています。イエローに分類されるカラーリングですが、光の当たり方によってライムグリーンにも見えます。アップルのウェブサイトで公開されている公式の画像に比べると、実物はややメタリック調で、やはり光の当たり方による陰影が生まれることから「落ち着いたイエロー」に見えます。

今までのMacBookシリーズにはなかったイエロー系の「シトラス」が登場
Magic Keyboardはピッチ幅が現行のAirやProと変わらない、ゆったりめの配置で窮屈さはありません。ただ、おそらくキーボードの材質が異なるため、筆者が使っているM3搭載MacBook Proよりも打鍵感は軽い感触があります。表面の仕上げが少しだけマットなので、長く使っていると汚れが目立つようにならないか気になります。
さらに大きな違いは、Neoのキーボードにはバックライトがありません。近年のAirやProに慣れていると、最初に暗い場所でNeoを開いた時に意表を突かれます。

キーボードも明るい色合いに。現行のProやAirよりもキータッチがやや軽めな印象です。バックライトがありません
トラックパッドも上位モデルと少し違います。Neoにもすべての箇所を均等な圧でクリックできて、マルチタッチジェスチャー対応のトラックパッドが載っています。一方、ハプティック式のForce Touch(圧力感知機能)ではないため、AirやProならできる「Forceクリック(強押し操作)」には非対応です。

メカニカルトラックパッドは圧力感知機能が非搭載。クリック感が少し違います
新しいMacBookユーザー獲得を狙う入門機
アップルは2020年に発売したM1搭載MacBook Air以降、Macの新製品に独自設計のAppleシリコンを採用してきました。その過程で、ハードウェアとmacOSの進化に歩調を合わせながらAppleシリコンの展開を拡大してきたわけですが、Macの開発チームの中では「新しいMacBookユーザーを開拓するための、良質な入門機をつくりたい」という思いが次第に強くなったそうです。
Mシリーズをはじめ、AシリーズやSシリーズといった主要なAppleシリコンにも独自の技術的知見が蓄積され、異なるデバイス間での応用も広がりました。もともとAシリーズを搭載してきたiPadにMac向けのMシリーズを採用するなど、デバイスの垣根を越えたチップの展開も進んでいます。さらにAppleシリコンを搭載するMacでは、iPhoneやiPad向けアプリがそのまま動作する環境も整いました。

AppleシリコンAシリーズのチップを搭載したこともMacBookシリーズ初
加えて、Apple TV 4KやHomePodといったスマートホームデバイスにもAppleシリコンが展開されたことで、現在では年間数億台規模のAppleシリコン搭載デバイスが出荷されています。半導体にOS、アプリ、そしてデバイスまで連なる垂直統合の中でスケールメリットを生み出せたことが、世界的な半導体不足や原材料費の高騰が伝えられる状況下で、「良質な入門機」であるMacBook Neoを発売する原動力にもなったと言えます。
MacBook Neoは初めての「Aシリーズのチップを搭載するMacBook」です。2024年に発売されたiPhone 16 Pro/16 Pro Maxが搭載していたチップです。
元を辿ればApple M1は、iPhone 12で搭載されたA14 Bionicをベースに開発されたチップです。iPhoneのようにバッテリーで駆動するデバイスにおいて高いパフォーマンスと低消費電力を発揮しつつ、SoC全体の放熱を抑える設計の最適化を図ってきたことから、AシリーズのチップはNeoのようなエントリークラスのモバイルPC上でも十分に性能を発揮することが期待できます。
また、macOSがiOSと同じArm系アーキテクチャを前提に設計されていることから、OSレベルでの互換性もクリアできています。
A18 Proチップと8GBユニファイドメモリの実力
あとは実際にAシリーズのチップで、動作に不安がないのか、力不足を感じないのかが気になります。
筆者がNeoを数日間試用した限りでは、日常的に使っているアプリケーションの動作はとても安定しています。Adobe Photoshopによる写真加工や、Microsoft Office系ツールなど比較的軽量なアプリケーションを中心とした用途では、いずれも単体で快適に動作しました。
一方で、Ollamaを使ってローカルLLM(Llama3/パラメータ数約80億)を動かしてみると、8GBのユニファイドメモリを搭載するNeoでは計算負荷が高まり、動作がやや不安定になる場面がありました。同時に起動していた「ミュージック」アプリの音楽再生が途切れたり、ノイズが目立つことも……。
メモリ16GBの15インチM5搭載MacBook Airで、Ollamaを起動して同じローカルLLMを同じコマンドで実行すると、やはりAirの方が動作は安定します。
Appleシリコンは、CPU・GPU・Neural Engineが同じメモリプールを共有する、ユニファイドメモリを採用しています。そのためAIモデルを動かす場合、チップの種類や世代だけでなく、搭載するメモリ容量によっても処理の快適さが大きく左右されます。

AppleシリコンのA18 Proを搭載。ユニファイドメモリの拡張オプションは用意されていません
最近は写真や動画など、Mac上で大きな容量のファイルを扱う機会も増えてきました。Neoはオプションで最大512GBのストレージまで拡張できますが、メモリは8GBのみで選択肢がありません。AIエンジニアリングのほか、動画編集や音楽制作など高い負荷がかかる用途を想定する場合には、Neoではなく上位モデルを選び、メモリ容量などを強化する選択も検討した方がよいかもしれません。
もっとも、先述したように軽めのアプリケーションを中心に使ったり、動画や音楽などのエンターテインメントコンテンツを楽しむ用途であれば、Neoで力不足を感じる場面はほとんどありません。NeoもAirと同じくファンレス設計の筐体を採用しているため動作音がなく、とても静かに使える点も魅力です。
最速USB 3のデジタルポートは上手く使いこなしたい
USBポートは左側に2基(奥がUSB3/最大10Gbps、手前がUSB2/最大480Mbps)を備えています。MagSafe充電ケーブルが使えないため、Neoを給電しながら使用する間はフリーになるUSBポートが1つだけになります。

2つのUSB-C形状のポートを搭載しています
同じ仕様のM1搭載MacBook Airを使ってきた筆者には、ポート数の制約もさほど大きな問題ではないと思っていました。ところが、このところはMacBookにも高速伝送に対応するUSB-C形状のThunderboltポート(TB4なら最大40Gbps)が普及しているので、Neoをセットアップする際に移行アシスタントによるデータ転送の時間が長くかかったことにあらためて不便さを感じました。Mac同士をThunderboltケーブルでつなぎ、データを高速伝送する手段が使えないので、あらかじめTime Machineバックアップを作成しておくべきです。
筆者は3月4日にアップルがMacBook Neoを発表した当日、今回試用したものと同じスペック・同じカラーのモデルを購入しました。3月11日に手元へ届いた後は、バッテリーの持ちなど、実際に長く使うと見えてくる細かな使い勝手の良し悪しを検証してみたいと思っています。
10万円前後という魅力的な価格を実現したMacBook Neoは、アップルが意図したとおり「新しいMacBookユーザー」を数多く獲得するモデルになるでしょう。より大きくて重いMacBookを使っている既存のユーザーにも、軽快に持ち運べるサブ機として注目を集めそうです。
筆者紹介――山本 敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。