スバル「レヴォーグ レイバック」にある幸福感

ボディが大型化したレガシィの後継モデルとして、日本国内市場向けとして2014年に発売した「レヴォーグ」の派生車種として2024年に登場した「レヴォーグ レイバック」(写真:三木 宏章)
スバル「レヴォーグ レイバック(以下、レイバック)」の最新モデルがぐっとよくなっている。2026年2月のドライブでわかったのは、乗り心地など洗練度が上がっていることだ。
【写真を見る】熟成を重ねたスバル「レヴォーグ レイバック」のスタイリングやインテリアを詳しく確認する(28枚)
レイバックといえば、レヴォーグの派生車種。連想するのは、興味深いスバルのビジネスだ。ペアレントとアフィリエイトの作り方といえばいいだろうか。
コアモデルをしっかり設定し、派生車種を作る。派生車種には、コアモデルとは違うニーズを反映させる。それでいて、ひとつのファミリーとして市場価値を確固たるものとするのだ。
スバルらしい派生車種展開のビジネス
海外だと、メルセデス・ベンツやBMWが得意とする手法だ。セダンをコアモデルとして、クーペやカブリオレを作る。
昨今でいうと、SUVのバリエーションも同様。ロングルーフの機能的なコアモデルと、そこからルーフ前後長の短いクーペライクな派生車種を開発する。BMWだと「X1」に対して「X2」、「X5」に対して「X6」。メルセデス・ベンツは「GLC」と「GLCクーペ」や「GLE」と「GLEクーペ」の関係が思い当たる。
そもそも、昨今のビジネススキームに先鞭をつけたのは、スバルである。そこにレイバックのオリジンが見つかるともいえる。

レイバックのリアビュー。現在のグレード設定は、安全機能/走り/質感のバランスに優れた「Limited EX」と、ブラックホイールや本革シートで上質感を高めた「Black Selection」の2種類。価格はLimited EXが399万3000円~、Black Selectionが424万6000円~(写真:三木 宏章)
スバルは1994年に北米で「アウトバック」なる、「レガシィ」をベースに最低地上高を上げたモデルを発表。翌95年に日本でも「レガシィグランドワゴン」の名で発売され、ウインタースポーツ好きなどにはとりわけ歓迎された。
そのあと、98年にボルボが「V70XC」(のちにXC70)で追従。99年にアウディは「オールロードクワトロ」を送り出した。フォルクスワーゲンには「パサート・オールトラック」がある。思い返すと、同社は90年に「ゴルフ」に4WDシステムを組み込み、外観もそれふうに仕立てた「ゴルフ・カントリー」を発売している。
メルセデス・ベンツも、2000年代にEクラスおよびCクラスのステーションワゴンをベースにした「オールテレイン」を市場に投入しているのだ。
レヴォーグから派生したレイバック

レイバックのサイドビュー。ボディサイズは、全長4770mm✕全幅1820mm✕全高1570mmで、最低地上高は200mm(写真:三木 宏章)
世界的に市場を形成してきたステーションワゴンベースのSUVだが、レイバックは日本市場専用モデルとして企画された。ベースになったレヴォーグの最低地上高を200mmに上げ、専用チューニングしたサスペンションシステムが組み込まれている。
私が最初に乗ったのは23年。一見して、フロントマスクをはじめ、レヴォーグに対して、いわゆるラギッド感(アウトドア感)が盛り込まれたデザインに好感が持てた。
パワートレインは1.8リッターターボのみ。無段変速機「リニアトロニック」が組み合わされている。
それから何度も試乗する機会があった。パッケージングがよくて、荷物も積めるし、インフォテイメントシステムも機能的。レヴォーグの先代にあたる、レガシィの美点をちゃんとそなえている。

パワートレインは、1.8L DOHC直噴ターボのガソリンエンジンで、駆動方式のAWDのみとシンプルな構成(写真:三木 宏章)
スバルでは、「アイサイト」による安全性能と「アイサイトX」による運転支援性能の向上に努めている。加えて、取りまわりのよさ。これらでレイバックの快適性をはじめ、走破性と加速性を強調している。
今回、市街地、高速道路、ワインディングロード、そして積雪路を含めて300km以上を走行。もっとも強く感じられたのは、上記で謳われている、快適性と走破性の向上だった。
ステーションワゴンが車高の高いSUVより優れているのは、サスペンションの動きの自由度が大きい点。レイバックを走らせると、それを感じる。

タイヤ&ホイール。タイヤは、ヨコハマタイヤのSUV向けスタッドレスタイヤ「アイスガード SUV G075」でサイズは225/55R18(写真:三木 宏章)
レヴォーグより車高が高くなったぶん、レイバックの足まわりには制約が出そうだが、スプリングやダンパーといった構成部品を専用チューニングしたとされる。その効果を強く感じたドライブだった。
発売当初のレイバックは、悪くないけれど、足まわりの動きにもう一歩、というところがあったと記憶している。それが改善されているのだ。高速道路でも姿勢はフラット。乗員の姿勢保持が安全運転につながるというスバルの設計思想が表れている。
「大きな改良はないのですが、年次改良として、(ブッシュなど)細かいところを見直してきた成果でしょう」と、広報担当者は言う。
成熟したレイバックの快適性

レイバックの室内(写真:三木 宏章)
もうひとつ、感心したのはスバルが謳う「静粛性の高さ」。高速でも遮音が効いている。ハッチゲートを持つステーションワゴンというスタイルながら、風切り音は抑えられていて、タイヤから伝わるロードノイズも低い。
インテリアの作りも質感が高い。11.6インチのセンターディスプレイは多機能だし、2670mmのホイールベースを最大限活かして、後席空間も余裕が感じられる。
大人が乗るのに十分な動力性能とパッケージ。300万円台でこの出来というのは、スバルのがんばりだと、私は感心した。

筆者による雪上での試乗シーン(写真:三木 宏章)
じつは、積雪路を延々と走る機会には、これまで恵まれなかった。今回、群馬の山岳路ではその体験もできた。安定性は抜群。無理してリアを滑らそうとしても、一瞬で収束してしまう。ここがスバル車の白眉といっていいだろう。
ステアリングはダルでなく、路面状況にかかわらずインフォメーションがきちんと伝わってくる。雪上でも乾燥路面でも、印象は変わらず、車両への信頼感が醸成される。

レイバックのフロントフェイス(写真:三木 宏章)
レイバックでは、「SIドライブ」という、ちょっと簡略化された2つのドライブモードを選べる。「I」は標準というか、好燃費とともにリラックスして走っていられるモード。「S」はよりスポーティ。個人的にはこちらのほうが気に入った。
というのは、ステアリングホイールの操舵感が結構違うからだ。Iモードだとやや軽すぎる印象で、とくに高速走行だと少々気を遣う。対するSモードは操舵感に適度な重さが出る。高速走行時における安心感が高くなり、かつエンジン回転域の少し上のほうを使うので、パワーを楽しめる。
ちなみにレイバックには、スバルが得意とするオフロード用の「X(エックス)モード」がそなわらない。あれば安心感が高くなるオフロード用Xモードだが、レイバックを走らせての印象として、これがなくても大きく困ることはなさそうだ。
必要にして十分、素直さが魅力のレイバック

レイバックのリアシート(写真:三木 宏章)
ドライバーに求められているのは、悪路などでは無理な速度を出さないなど、自制心である。飛ばさなくても、速度を落としてドライブしても、レイバックは期待以上に楽しい。
エンジン回転数1600rpmで最大トルク300Nmが発生する力強さと、素直な操舵感覚が、いい相性を見せてくれている。
若い世代には、ある種のレトロ感覚ととらえられてしまうかもしれないステーションワゴン車型だが、それでいい、と私は思う。洋服でいえばトラッド、音楽ではビニール盤、撮影ではフィルムカメラ、といったジャンルが廃れないように、使う人の感覚によく馴染むステーションワゴンもエバーグリーンだと思う。
運転している自分との一体感を味あわせてくれるレイバックから降りたときに思ったのは、300kmでは足りない、ということだった。もっと遠くに出かけていきたくなる。そう思わせてくれる、よいクルマなのだ。
Subaru Levorg Layback Limited EX
全長×全幅×全高:4770mm×1820mm×1570mm
ホイールベース:2670mm
荷室容量:561L
エンジン:1795cc水平対向4気筒ターボ 全輪駆動
最高出力:130kW
最大トルク:300Nm
燃費:13.6km/L(WLTC)
価格:399万3000円〜