酒だけじゃない? 肝臓を壊す危険な成分の正体

肝臓を壊す「体によさそう」なものとは?(写真:freeangle/PIXTA)
※読者の反響が大きかった記事を再配信します。本稿は2025年7月18日に公開した記事を再配信したものです。
肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を指す「脂肪肝」。
実は近年、「単に脂肪がたまっているだけ」ではなく、軽視してはいけない重要な病気と位置づけられるようになっています。
健診でわかる「危険な肝臓の値」
脂肪肝について紹介する前に、まずは健康診断でわかる肝臓の健康状態について解説しましょう。
代表的な肝臓の検査項目は、AST(GOT)とALT(GPT)、γ-GTPの3つ、さらにALPと総ビリルビンがあります。
ASTやALT、γ-GTPは肝細胞が障害を受けた際に血中に漏れ出る酵素です。なかでもALTは肝臓に特異性が高く、肝障害の鋭敏な指標となります。γ-GTPは、アルコールや薬剤による肝障害で上昇しやすく、日常的な飲酒量の多い方では特に注目される数値です。
ALPは胆汁の流れが滞ると上昇しますが、骨の病気でも上がることがあるため、単独では診断が難しい項目です。総ビリルビンは黄疸の有無や胆道系の障害を反映します(※外部配信先では基準値を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
このほか、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)や空腹時血糖、中性脂肪、HDL/LDLコレステロールといった項目は、直接的ではありませんが、脂肪肝のリスク因子として重要です。
会社などで受ける健康診断(法定健診:労働安全衛生法に基づく定期健康診断や雇入時健診)では、AST、ALT、γ-GTP、空腹時血糖、中性脂肪、HDL/LDLコレステロール検査が必ず含まれており、40歳以上の労働者は全員が対象になっています。
肝臓の異常値で考えられる病気
ASTやALTの数値が異常値である場合、次のような病気が疑われます。
たとえば、アルコール性肝障害ではγ-GTPの上昇が目立ち、ASTがALTより高い傾向にあります。
一方で、肥満や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が背景にあり、現代人に非常に多く見られる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、ASTとALTがともに上がりますが、とくにALTがASTよりも高くなります。γ-GTPが上昇することもあります。
ウイルス性肝炎(B型・C型)もALTがASTより高くなりがちです。
慢性肝炎では上昇の程度は軽いですが、急性肝炎では数百〜数千と著しく上昇するのが特徴です。
そのほか、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎などの自己免疫疾患、薬の副作用による薬剤性肝障害なども考えられます。
■やせている人も脂肪肝、チェック方法は?
さて、脂肪肝の話に戻ります。
脂肪肝は主にアルコール摂取が原因となるアルコール性脂肪肝(AFLD)と、飲酒が少ないか、まったくなくても発症する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に分けられます。
NAFLDはさらに、単なる脂肪の蓄積にとどまる単純性脂肪肝(NAFL)と、炎症により肝細胞の壊死(えし)や線維化が進行する、代謝異常に関連した脂肪肝炎(MASH)に分類されます。
診断の際には、ASTとALTの比率や中性脂肪、空腹時血糖などを評価し、腹部超音波検査で肝臓の異常の有無を確認します。
なお、健康診断でASTやALTが正常範囲だったからといって、油断できません。超音波検査で脂肪肝が発見されることは少なくないからです。
特に単純性脂肪肝では、血液検査の値が基準範囲内にとどまることが多いため、画像検査による評価が重要です。最近はやせている方の脂肪肝が多いので、一定年齢(たとえば50歳など)になったら法定健診だけでなく、人間ドックなどで腹部超音波検査を受けることが望ましいです。
■脂肪肝が怖いのは肝細胞がん・肝硬変に進むから
近年、脂肪肝が注目されている背景には、単に肝臓の異常にとどまらず、生活習慣病や全身の健康リスクと密接に関わっていることが明らかになってきた点が挙げられます。
日本人の3人に1人が脂肪肝と推定されるなかで、その多くが自覚症状のないまま進行し、MASHを経て、致死的な病気である肝硬変や肝細胞がんへと至ります。脂肪肝の20〜30%がMASHへと進行し、MASHは数年から十数年で肝線維化をきたし、肝硬変や肝細胞がんへと至るとされています。
また、心血管疾患や糖尿病、慢性腎臓病といった病気とも強く関連しており、“肝臓からの警告”として注目されています。
脂肪肝になりやすい人の特徴
脂肪肝になりやすい体質があります。その1つは内臓脂肪型肥満です。腹囲が大きい人(男性85㎝、女性90㎝が目安)や、BMIが25を超える人は要注意です。
また、砂糖や脂肪分の多い食事ばかりの人や、清涼飲料水や果糖ブドウ糖液糖をよく飲む人、加工食品をよく食べる人は、肝臓内の脂肪蓄積が進みやすいです。
■体によいはずが、実は「毒」だった?
なかでも問題なのは、果糖(フルクトース)です。その名前の通り、果物に含まれる糖で、なんとなく健康によいイメージがありますが、そうではありません。果糖はブドウ糖と異なり、主に肝臓で代謝され、過剰に摂取されると脂肪として蓄積されやすい性質があります。
では、果糖がダメというと「果物は大丈夫なのか?」と心配になる人もいるでしょう。
結論を申し上げると、果糖を果物として摂る場合は、果肉に食物繊維が多く含まれるため消化吸収が緩やかであり、過剰に摂取しない限り大きな問題にはなりにくいとされています。
注意したいのは、果汁100%ジュースです。一見健康によさそうですが、食物繊維が除かれ果糖が濃縮されているため、短時間で大量の果糖が肝臓に届きやすくなります。実際、果汁ジュースの多飲は脂肪肝のリスクを高めるという研究報告もあります。
若い女性に人気のスムージーもまた健康によさそうですが、やはり果物として摂るより吸収が速いので、おすすめできません。
「果糖は、吸収時間が早いものほど脂肪肝のリスク」と覚えておいていただけたらと思います。
摂取アルコール量の求め方
運動不足も大きな要因で、1日5000歩未満の活動レベルの人は、脂肪肝のリスクが高まります。
もちろん、飲酒もよくありません。AFLDの場合は習慣的な飲酒が主な原因です。蒸留酒と醸造酒はどちらがいいかとか、水で割ったほうがいいのか、いろいろ気になるところですが、実際は純エタノールの量そのものが問題となります。
1日あたり純エタノール男性30g、女性20gを超えないことが望ましいです。アルコールの量(g)は<酒の量(mL)×アルコール度数/100×0.8(アルコールの比重)>で計算できます。
注意したいのは、醸造酒でも甘いチューハイなど、糖分が含まれている場合は、よりエネルギー過多となります。
また、栄養過多になるからと、酒だけを飲むのは絶対にやめましょう。つまみは、焼き鳥や冷ややっこなど、たんぱく質が多めのものを選ぶといいでしょう。
遺伝やそのほかの病気の関係
最近では、遺伝的な要素として「PNPLA3」と呼ばれる遺伝子変異が脂肪肝の発症と関連していることが明らかになってきました。祖父母や親の血縁者で、肝硬変や非ウイルス性の肝がんになった人がいる場合は、リスクが高い可能性があります。
また、睡眠時無呼吸症候群(SAS)や甲状腺機能低下症などを合併していると、脂肪肝が悪化しやすいことも報告されています。
SASに伴う断続的な低酸素状態(低酸素血症)や炎症が、NAFLDの進行を促進してしまうのです。甲状腺機能が低下すると新陳代謝が低下し、血液中や肝細胞中に中性脂肪が蓄積しやすくなります。
女性では更年期以降に脂肪肝に注意しましょう。
女性ホルモン(エストロゲン)は内臓脂肪などに働きかけて、肥満を抑制する作用があります。しかしながら、更年期でホルモン分泌が急激に低下することにより、脂質代謝が変化し、内臓脂肪が蓄積しやすくなる傾向があるのです。
最後に治療について紹介します。
アルコール性脂肪肝の治療で最も重要なのは、完全な禁酒です。これに加え、栄養バランスのよい低脂肪・高タンパクの食事や、ビタミンB1や葉酸などの栄養素の補充が必要になることもあります。
単純性脂肪肝の場合は、食事内容の見直しと適度な運動を継続することで、体重を減らすことが第一の治療法です。体重を5〜10%程度減らすと、肝脂肪が改善するとされています。
いずれにしても、生活習慣の改善などを中心とした治療で、脂肪肝を改善させることが可能です。
MASHの場合、上記の生活習慣改善に加えて、インスリン抵抗性を改善するピオグリタゾンや、肝脂肪を減らす効果のあるGLP-1受容体作動薬が効果的であることが報告されています。日本では保険適応外で、自費治療となります。
MASHが重症化して肝硬変に至った場合は、最終的に肝移植が選択されることもあります。
脂肪肝を甘く見ないこと
脂肪肝は単に肝臓だけの問題でなく、普段の食習慣や運動習慣、更年期など全身の健康リスクと関係する病気です。
健診結果を見せたときに「ああ、脂肪肝ですね、様子を見ましょう」という医師でなく、積極的に健康状態の改善に取り組むようアドバイスしてくれる医師をかかりつけ医にして、より健康になるよう指導や治療を受けるようにしましょう。

果汁ジュースは控えたほうがよさそうです(写真:Rutchapong/PIXTA)