展開早すぎ!放送2週目で出産!朝ドラ新作が史上最速のスピード感で進んでいるワケ〈風、薫る第7回〉

『風、薫る』第7回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて12年目の著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第7回(2026年4月7日放送)の「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)
朝ドラヒロインが結婚する時期
「嫁入りは女(おなご)の戦」(by美津〈水野美紀〉)
ということで、りん(見上愛)が白無垢(むく)姿に。OPクレジットの役名も「奥田りん」になっている。そしてこの回で出産もしてしまう。展開早過ぎるにもほどがある!
通常、ヒロインの嫁入りは視聴者も感無量になるものだが、『風、薫る』ではまだりんに慣れ親しんでいないので感情がわいてこない。これが気の進まない結婚でもあるのでなおさらだ。
ちなみに朝ドラには物事が矢継ぎ早に起こり総集編を見ているみたいと感じるパターンや、過程を省きワープやショートカットしたようだと感じるパターンが時々ある。早送りか3秒飛ばしかの違いであるが、前作『ばけばけ』は後者のパターンで『風、薫る』の第1、2週は前者である。
第2週で主人公が結婚するパターンは稀(まれ)である。2019年度後期『まんぷく』では第3週で主人公・福(安藤サクラ)が萬平(長谷川博己)と結婚したのが早いほう。2010年度前期『ゲゲゲの女房』も第3週で主人公・布美枝(松下奈緒)が茂(向井理)とお見合いして結婚した。サブタイトルが「たった五日で花嫁に」であった。
再放送中の『マッサン』(2014年度後期)は結婚したばかりで日本にやってきたふたりであったから、これが一番早いだろう。異色なのは2000年度前期の『私の青空』。主人公のなずな(田畑智子)の結婚式からはじまっていきなり夫がほかの女性と失踪してしまった。
『風、薫る』はお父さんが死ぬのも主人公が結婚するのも朝ドラ史上かなり早い。急いでいる。なぜそんなに急ぐのか。それは主人公がふたりいるからだ。
話を戻して、祝言。嫁ぎ先は運送業で成り上がって羽振りがよさそう。ザ・たっちのふたり(柴田屋と松永屋役)が双子ネタを披露して祝言を盛り上げる。
夫になる亀吉(三浦貴大)は18歳年上。でも三浦は若く見える。余談だが、見上も三浦も空前の大ヒット映画『国宝』に出ていた。
結婚、出産が早すぎる
亀吉は魚の食べ方がきれいではない。武士の家だと行儀作法を重んじるが商人の家はそういうことにこだわらない人たちもいるという描写であろう。つまりりんが今までと違う環境の家に嫁ぐということだ。
「旦那様の言うことをよく聞いてお仕えするのですよ」と美津は去っていく。一ノ瀬家からは美津と安(早坂美海)と中村(小林隆)と少人数だった。その頃、虎太郎(小林虎之介)は河原でさみしげ。
祝言の終わった晩、りんが部屋に入ると、亀吉は大の字になって寝ていた。姑(根岸季衣)は士族の娘は気位が高いと敬遠しているようで、りんはこの家でうまくいくのか心配だ。
家に戻った美津は仏壇の旦那様(信右衛門)に手をあわせ、祝言の報告をする。回想シーンになり、あのとき(第4回)、足止めをくらって信右衛門の死に目に会えなかった美津。帰ってきて「旦那様ご無事ですか」と問うと、すでに骨になっていた。これって美津の嘆きは計り知れないだろう。実際、そういう悲しいすれ違いは世の中にいくらでもあると思うのだが、物語としてさすがにこの展開は酷い。やっぱり、獅子舞のなかに入って自警団の目を盗んで帰ってきて、お父さんと会ってほしかった。
さて「奥様になったりんの話をしましょうか?」と研ナオコ(語り)。
りんは夫の仕事を手伝おうとするが、夫は仕事なんてしなくていいと思っている。学のある嫁は彼のコンプレックスを刺激するようだ。
姑(しゅうとめ)はりんの味付けが気に入らない。おお、昔は朝ドラの定番だった嫁姑問題。
奥様はやっぱり地味なものだった。そして気になる、夫の大酒飲み。お酒を控えてほしいと言っても聞いてくれない。お酒ばっかり飲んで、お魚の食べ方はいつも粗雑。
悩みながらも、あっという間にときが流れ、子どもが生まれる。女の子だった。早い早すぎる!
「家老の娘が生んだ子だ」とそこを重要視する姑。でも男の子でなかったことが不満のようだ。名前もりんの好きにすればいいとつれない。
「父上は父上は 父上、父上……」とべそをかくりん。
なかなか辛い展開である。お父さんさえ生きていてくれたらこんなことにはならなかったのに。
ちなみに2019年度の『スカーレット』では北村一輝は大酒飲みの困ったお父さん役だった。
マッチ600箱4銭も安すぎないか
それにしても、第2週で出産はかなり展開が早い。朝ドラで子どもが生まれるのはたいてい折り返し以降である。『私の青空』は結婚式の当日に夫になるはずだった人(筒井道隆)が失踪し、その後、妊娠していたことがわかり、シングルマザーの奮闘物語となる。昨年亡くなった内館牧子さんの脚本だった。
その頃、東京府で直美(上坂樹里)は何をしているのか。ドラマ内では、りんと直美の場面を交互に見せている。
直美はなんとか就職先を見つけた。だが、給料を安く叩かれた。たった2銭。前は600箱4銭だったのにと不満を言う直美。ちなみに当時、マッチ1包分(10個入)は2銭5厘、おまんじゅうが1個1銭。定期預金利息は6カ月で4分3厘9毛(いずれも朝日新聞社「明治大正昭和値段史年表」より)。
「泥棒女」だからと見下されている直美。泥棒なんてしていないのに。こういうときは、英語で悪口を言うのが直美のガス抜き。相手は英語がわからないからひどいことを言っても理解できない。優越感に浸れる唯一の方法だ。
マッチ工場で泥棒はしていなかった直美だが、第2回、東京でスリにあった美津と安を助けたとき、スリするなら金持ちから盗めと言って、美津に「金持ちから盗めというのも間違いです」とたしなめられていた(「こんな田舎者の弱い女から情ない」と言われ「田舎者」にカチンと来ての言葉)。
直美のキャラ設定は「目的のためには多少のうそやズルをもいとわない柔軟さとしたたかさがある」。
自分が生きるためならお金を持っていて悪そうな人だったら盗んでもいいと思っているんじゃないだろうか。そういう考え方がたぶん、美津の娘で生真面目なりんとは対照的なのだろう。早く出会わないかなあ。展開は早いのに、出会いは遅い。
フォトギャラリー
主なシーンより
第2週(4月6日〜10日)
「灯(ともしび)の道」あらすじ
奥田家に嫁いだりん(見上愛)は、夫の亀吉(三浦貴大)や義母・貞(根岸季衣)とうまくいかない。娘の環を出産した後も状況は変わらない中、りんは懸命に子育てに励んでいた。しかしある夜、酔った亀吉が暴れ出し……。一方、直美(上坂樹里)も仕事を追われ、職探しの日々。そんなある日、偶然ある親子に出会う……。
連続テレビ小説『風、薫る』
作品情報
連続テレビ小説「風、薫る」。主人公はそれぞれに生きづらさを抱えた2人の女性。当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込み、傷ついた人々を守るために奔走し、時に強き者と戦う——明治という激動の社会を舞台に、幸せを求め生きるちょっと型破りな2人のナースの冒険物語です。
【脚本】吉澤智子
【原案】田中ひかる「明治のナイチンゲール 大関和物語」
【音楽】野見祐ニ
【主題歌】Mrs. GREEN APPLE 「風と町」
【語り】研ナオコ
【出演】見上愛 上坂樹里 佐野晶哉 生田絵梨花 小林虎之介 早坂美海 藤原季節 三浦貴大 内田慈 菊池亜希子 丸山礼 根岸季衣 小林隆 高嶋政宏 片岡鶴太郎 多部未華子 原田泰造 水野美紀 坂東彌十郎 ほか
【放送】2026年3月30日(月)開始(全26週130回)