朝井リョウさん「『もっと自由に書いていい』と言われた気が」…「イン・ザ・メガチャーチ」で2026年本屋大賞

 全国の書店員が「一番売りたい本」を選ぶ「2026年本屋大賞」の発表会が9日、東京都内で開かれ、大賞は朝井リョウさん(36)の「イン・ザ・メガチャーチ」(日本経済新聞出版)に決まった。投票した書店員らに囲まれ、朝井さんは「書店には、たくさんの作家の極端や極北が詰まっている。これからも自分の中の偏りを大切に作品を書き、その本棚の一部になっていけたら」と喜びを語った。(樋口薫)

◆「推し活」題材に「ファンダム経済」の功罪に斬り込む

 受賞作はアイドルや俳優を熱狂的に応援する「推し活」を題材に、ファンたちの行動力によって生み出される「ファンダム経済」の功罪に斬り込んだ社会派エンタメ小説。

「イン・ザ・メガチャーチ」で2026年本屋大賞を受賞し、書店員と記念撮影する朝井リョウさん(中央)=東京都港区で(池田まみ撮影)

 朝井さんは2009年、映画化もされた「桐島、部活やめるってよ」で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。その後も「何者」で直木賞、「正欲」で柴田錬三郎賞を受賞している。

 翻訳小説部門は、メリッサ・ダ・コスタ著「空、はてしない青」(山本知子訳、講談社)に決まった。

2026年本屋大賞を受賞した朝井リョウさんの「イン・ザ・メガチャーチ」=東京都港区で(池田まみ撮影)

 本屋大賞は2004年から始まり、今回が23回目。1次、2次を合わせ、延べ約1200人の書店員が投票した。2位は佐藤正午さんの「熟柿」(KADOKAWA)、3位は村山由佳さんの「PRIZE─プライズ─」(文芸春秋)だった。

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◆「今の時代、何が人を動かすのか…現象を描きたかった」

 大学時代にデビューし、気鋭の書き手として多くの読者を獲得してきた。全国の書店員から「一番売りたい本」に選ばれ、「自分の作品は読んでいて気持ちよくなる本ではないので、受賞は寝耳に水」と目を丸くさせた。

「イン・ザ・メガチャーチ」で2026年本屋大賞を受賞し、前年受賞者の阿部暁子さん(右)から花束を受け取る朝井リョウさん=東京都港区で(池田まみ撮影)

 受賞作で扱ったのは「推し活」。アイドルを推すことに自らの存在価値を見いだす女子大生、その運営に携わる孤独な中年男性、推しの俳優の死を機に陰謀論へと傾く女性──。群像劇を通じ、熱狂的なファン集団と資本主義とが結びついた「ファンダム経済」の実相を掘り下げた。

 推し活は今や、政治の世界でも有力な手法として注目される。「今の時代、何が人を動かすのか、現象を描きたいというモチベーションがあった」と振り返る。

 「昔はもっとサービス精神があったが、今は読者を意識せずに書いている」

 その言葉通り、特殊とされる性的指向を扱った「正欲」、人類でない存在を語り手とした東京新聞連載の「生殖記」など、読者を揺さぶる意欲作の刊行が続く

 「今回の受賞で『もっと自由に書いていいよ』と言われた気がします」

 朝井リョウ(あさい・りょう) 1989年生まれ、岐阜県出身。2009年「桐島、部活やめるってよ」でデビューし、小説すばる新人賞を受賞。「何者」で直木賞、「正欲」で柴田錬三郎賞、「イン・ザ・メガチャーチ」で本屋大賞を受賞した。

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