トランプ氏支持の選挙制度改革、不正対策か有権者抑圧か

トランプ氏支持の選挙制度改革、不正対策か有権者抑圧か
【AFP=時事】米上院では現在、連邦選挙における有権者の投票資格証明を厳格化する「有権者資格保護(SAVE)法案」が議論されている。この法案が可決されると、既婚女性やトランスジェンダーの人々にとっては、投票がこれまで以上に複雑になる可能性がある。

トランプ氏支持の選挙制度改革、不正対策か有権者抑圧か
この法案は、米国人が連邦選挙で有権者登録する際の「市民権の証明」を厳格化するもので、パスポート、運転免許証、出生証明書など、身分を証明するための公的書類の提示を義務づける。

トランプ氏支持の選挙制度改革、不正対策か有権者抑圧か
しかし、多くの女性は結婚すると名前が変わることから、出生証明書の名前と現在使用している名前とが一致しなくなる。そのため、矛盾を説明するためには、追加書類の提示が必要となる。
この問題は、書類が現在の身元を正確に反映していない可能性があるトランスジェンダーの人々にも起こり得る。
こうした状況について、ニューヨーク大学の公共政策研究所であるブレナン司法センターの専門家は「2100万人以上の米国人は、これらの書類に簡単にアクセスできない。米国人の約半数はパスポートすら持っていない」と指摘する。
また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の選挙法専門家リック・ハセン氏によれば、SAVE法では、女性とトランスジェンダーの人々が最も影響を受けやすく、パスポートを持っていない低所得層や労働者階級の米国人も同様に影響を受けることになるという。

トランプ氏支持の選挙制度改革、不正対策か有権者抑圧か
下院はすでにSAVE法案を可決している。ただ、上院では民主党の反対が強く、通過は困難とみられている。
■名前の変更
投票権の拡大を求める市民団体「フロリダ・ライジング」の政策・研究ディレクター、レティシア・ハーモン氏は、過去にワシントン州で結婚したが、その後に離婚し、これまでに2回名前を変更していると自身についてAFPに語った。
その上で「どの名前がデータベースに記録されているかわからない」ため、提示すべき書類を正確に知ることが難しいとし、ワシントン州から離婚証明書を取り寄せる必要がある場合には、費用と時間がかかると指摘した。
ホワイトハウスは、選挙詐欺を防ぎ、非市民が投票するのを防ぐためにSAVE法は必要だと主張するが、現在の米国法でもそれはすでに禁止されている。
既婚女性の問題については先月、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官が「彼女たちはその書類を更新するために州の手続きを経るだけ」と述べている。
■投票の性別差
女性有権者数百万人の投票が難しくなることが持つ意味は大きい。歴史的に見ると、男性は共和党寄りの傾向が強いためだ。
ピュー・リサーチ・センターによると、2024年の調査では、男性の52%が「共和党を支持している」あるいは「共和党寄りである」と回答したのに対し、女性で同様の回答をしたのはわずか44%にとどまった。
UCLAのハセン氏は「過去15年間で、主に共和党主導の州では登録や投票を難しくする法案が可決され、その一方で主に民主党主導の州では登録を容易にする法案が可決されてきた」と指摘する。
米選挙、政治、公職者に関する情報を提供する非営利・非党派のオンラインデータベース「Ballotpedia」によると、主に共和党主導の州の一部では現在、少なくとも一部のケースで有権者登録の際に市民権を証明するよう人々に求めていることが報告されている。
フロリダ・ライジングのハーモン氏は2014年、当時住んでいたカンザス州での予備選で投票することができなかった。有権者登録の際に、有効な写真付きIDだけでなく、出生証明書の提示が求められたためだ。
この年、同州では有権者登録できなかった市民は3万人以上に上った。そして4年後、連邦判事はこの州法を違憲と判断した。
しかし今月初め、フロリダ州のロン・デサンティス知事が、2027年1月の中間選挙後に施行される独自のSAVE法に署名している。
こうした動きについてハーモン氏は、わずか一握りの不正事例を見つけ出すためだけに、数千人もの有権者から権利を奪うのは理にかなっていないと主張する。
フロリダ州では2025年、市民権を偽って投票したとして2人が起訴されているが、そのような事例は非常に稀だ。
また、ワシントン・ポストの調査では、2010~14年に投票された約10億票のうち、「信ぴょう性のある不正事例」はわずか31件だった。(c)AFP/Victoria LAVELLE
【翻訳編集】AFPBB News