放送前に批判殺到の『102回目のプロポーズ』観てみたら意外と面白かった! 前作との共通点と相違点は?
霜降り明星・せいや主演のドラマ『102回目のプロポーズ』(フジテレビ系)が今月1日からスタートした。唐田えりか、伊藤健太郎といった攻めたキャスティングで、放送前は「駄作の予感…」と主にネットで拒絶反応が目立っていたが、実際に放送が始まると、意外にもおおむね好評を博しているという。
【クリックして画像をみる】放送前は否定的な声が多かった102回目のプロポーズ。

攻めたキャスティングを不安視する声もあったが、蓋を開けてみれば意外と面白かった(画像:フジテレビ『102回目のプロポーズ』公式HPより)
本作は、1991年に放送された『101回目のプロポーズ』(同系)の35年後を描いた続編。平成版の主人公である星野達郎(武田鉄矢)と薫(浅野温子)のもとに生まれた娘・光(唐田えりか)と非モテ青年・空野太陽(せいや)との恋愛ドラマだ。
企画したのは、元放送作家で脚本家の鈴木おさむ氏。2022年の映画『トップガン マーヴェリック』(1986年の映画『トップガン』の続編)に感銘を受け、降ってきたアイデアだったという。平均視聴率23.6%、最終回の視聴率36.7%を記録した月9ドラマの名作に対し、令和の時代にアジャストした内容で臨んでいる。
前作をオマージュする一方、設定が異なる点も

『102回目のプロポーズ』(画像:TVerより)
物語は、コンサート終了後の囲み取材の中で、大手ゼネコン会社の御曹司でピアニストの大月音(伊藤健太郎)が、恋人であるチェリストの光に「プロポーズをしようと考えています」と宣言するところから始まる。しかし、メンツを重んじる父親は音を“華やかな世界に身を置く飾り”としか感じていないようで、「これ以上、勝手なことをするなよ」と不満げだ。
そんな中、マッチングアプリの待ち合わせ場所に向かえなくなった友人の代役として太陽と光は出会う。一目惚れした太陽が光のチェロ教室に通い始めるも、全く恋愛対象として見られていない。一方音は着々と結婚の準備を進める。そんな矢先、ようやく太陽は勤務先の建設会社の社長・達郎が光の父親だと気付いて……というのが第3話までの流れとなっている。

勤務先の建設会社の社長・達郎が光の父親だと気づく『102回目のプロポーズ』(画像:TVerより)
筆者が秀逸と感じたのは、前作の設定を無理なく引き継ぎつつ、オマージュした作りが見られる点だ。

『101回目のプロポーズ』の設定を無理なく引き継ぎつつ、オマージュした作りが見られる(画像:Netflix Japanの公式Xより)
異なる点は大きくふたつある。
かつて中年の未婚者は「独身貴族」とも呼ばれポジティブな意味を含んでいたが、晩婚化が深刻な問題となっている昨今では痛々しさがともなう。アラサーへの変更は、余計なノイズを出さないための予防線だったのかもしれない。
タイパを求める現代の視聴者は、過不足なくサクサクと展開するドラマを期待する。放送前はSNS上で「攻めたキャスティング」を不安視する声もあったが、蓋を開けてみれば「意外と面白かった」という声が多かったのは時間の問題も大きいだろう。
個人的には、この点こそが強みでも弱みでもあると感じた。平成版は演出や展開にツッコミどころもあるが、伝わらないもどかしさ、すれ違いや葛藤、意中の相手が振り向いたときの高揚感などを丁寧に描くことで、登場人物に厚みをもたらしていた。
時間の短縮は、単純にその幅を制限してしまう。とくに光の婚約者である音があまりに誠実で、今のところ太陽の恋敵として機能していない点が懸念される。

光の婚約者である音があまりに誠実で、今のところ太陽の恋敵として機能していない『102回目のプロポーズ』(画像:TVerより)
かねて、お笑いタレントが映画やドラマで主演を務めるのはスターの証だった。映画が盛況した時代は、ハナ肇とクレイジーキャッツ、コント55号、ザ・ドリフターズらの主演作が何本も上映され、コメディアン出身の渥美清らが“銀幕スター”として活躍した。
1970年代にカラーテレビの普及率が90%を超えると、みるみるテレビドラマの注目度も上昇していく。NHK朝の連続テレビ小説『おしん』(83年~84年)の平均視聴率は驚異の52.6%。そんな中、86年に放送された明石家さんま主演の『男女7人夏物語』(TBS系)は、新たな時代を象徴するようなドラマだった。

『男女7人夏物語』(画像:TBSテレビ公式サイトより)
前年にドリフターズの『8時だョ!全員集合』(同系)が終了し、“視聴率100%男”と称された萩本欽一が充電目的から全レギュラー番組を降板。その翌年、さんまは“トレンディードラマの元祖”とも言われる『男女7人』シリーズの顔になり、88年にヒロインの大竹しのぶと結婚(後に離婚)している。
ビートたけしや片岡鶴太郎ら『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)のメンバー、また早くから頭角を現したとんねるずも映画やドラマで活躍したが、公私ともに世間を賑わせ“浮ついたバブル景気の狂騒”を体現するさんまの存在は特殊だった。
90年代に入ると、森脇健児が『逢いたい時にあなたはいない…』(フジテレビ系)をはじめとする多くの作品に登場し、ダウンタウン・浜田雅功が『人生は上々だ』(TBS系)や『竜馬におまかせ!』(日本テレビ系)で主演、ウッチャンナンチャン・内村光良が『生かし屋という男』(テレビ朝日系)で脚本・監督・主演を務めるなど、お笑いタレントの需要が増していく。
2000年、ダウンタウン・松本人志と中居正広のダブル主演作『伝説の教師』(日本テレビ系)が大きな話題に。同年放送の『編集王』(フジテレビ系)ではネプチューン・原田泰造が主演を務め、その後も俳優として存在感を増していった。
“現代の若手芸人の日常を描いた作品”も増えた

『芸人交換日記』(画像:DVDジャケット)
11年に上演された舞台『芸人交換日記』は、“現代の若手芸人の日常を描いた作品”として別ベクトルでテレビドラマに広がりを与えたように思う。
同作は、鈴木おさむ氏の小説『芸人交換日記 ~イエローハーツの物語~』(太田出版)をもとに作者本人が脚本・演出を務める形で舞台化されている。お笑いコンビ「イエローハーツ」を演じるのは、オードリー・若林正恭と俳優の田中圭。売れないまま30歳になったふたりが、そんな状況を打破するべく交換日記で本音をぶつけ合うストーリーだ。
当時、筆者はドラマシナリオを学んでいたのだが、ちょうどこの頃から「お笑い芸人」を主人公に据えたコンクールの応募作品が増え始めたのを覚えている。00年代に『M-1グランプリ』や漫画『べしゃり暮らし』(集英社)などによって切磋琢磨する若手芸人の存在が世間で身近なものとなり、“ドラマの素材”として汎用性が高いと認識されたタイミングだったのだろう。
その後、ピース・又吉直樹の小説を原作とする16年の『火花』(Netflix)をはじめ、劇団ひとりが演出を務めて話題となった19年の『べしゃり暮らし』(テレビ朝日系)、売れないお笑いトリオにまつわる群像劇をユニークな構成で描いた21年の『コントが始まる』(日本テレビ系)など、若手芸人にまつわる物語はドラマの定番となっている。

『コントが始まる』(画像:日本テレビ公式サイトより)
トレンディーからシリアスへ移行した時代
テレビドラマは時代の推移が反映されやすい。とくに1990年前後のドラマと経済は、驚くほど呼応している。トレンディードラマはフジテレビ系列の『君の瞳をタイホする!』(1988年)から『東京ラブストーリー』(91年1月期)をピークに潮目が変わり、翌年以降は男女の友情を描いた『愛という名のもとに』(92年)や社会的なタブーにスポットを当てたTBS系列の『高校教師』(93年)など、シリアスな作品へと主流が移っていく。
まさに『101回目のプロポーズ』(91年7月期)は、トレンディードラマの華やかさと泥臭い中年男性の悲哀や親しみやすさをミックスしたような特徴があり、バブル景気のピークと終焉のタイミングとも重なっていた。
その続編を鈴木おさむ氏が企画し、現代の若年層から支持される芸人・せいやが主人公を演じる。個人的には、そんなところにも感慨深さがあった。