ヒカル「タモリ面白くない」にナイナイ岡村が突く“残酷な壁”とタモリの狂気

「しゃべれんねん」と「話芸」の残酷な壁, ヒカルは「タモリさんが凄いのはもちろん理解している」と反論, 赤塚不二夫が全財産を投じた「密室の狂気」, 牙は抜かれていない。『徹子の部屋』36年連続出演の真意 , 世代間ギャップが浮き彫りにする「凄み」

それがタモリだ

人気YouTuber、ヒカルの「タモリさんって、面白くないんじゃないの?」という発言を発端とした、いわゆる「タモリ論争」がいまだに収束の気配を見せない。ネット空間の無造作な一言に対し、お笑い界や文化人から次々と反論や苦言が呈され、図らずも日本のお笑い史におけるタモリの狂気が改めて浮き彫りになっている。

「しゃべれんねん」と「話芸」の残酷な壁, ヒカルは「タモリさんが凄いのはもちろん理解している」と反論, 赤塚不二夫が全財産を投じた「密室の狂気」, 牙は抜かれていない。『徹子の部屋』36年連続出演の真意 , 世代間ギャップが浮き彫りにする「凄み」

岡村隆史

「しゃべれんねん」と「話芸」の残酷な壁

「しゃべれんねん」と「話芸」の残酷な壁, ヒカルは「タモリさんが凄いのはもちろん理解している」と反論, 赤塚不二夫が全財産を投じた「密室の狂気」, 牙は抜かれていない。『徹子の部屋』36年連続出演の真意 , 世代間ギャップが浮き彫りにする「凄み」

立川志らく

ヒカルの発言に対し、20代の頃からタモリと共演してきたナインティナインの岡村隆史が、ラジオ番組でこの件に言及。

「タモリさんが面白いっていうのだけは分かる」と実力を絶賛した上で、YouTuberとの「評価軸の違い」を指摘した。

岡村は、YouTuberのトークについて「おもろいんじゃなくてね、しゃべれんねん。話芸とはまた違う」と述べ、“ただ流暢に話せること”と、プロの芸人としての“笑わせる技術(話芸)”は根本的に異なるものであると強調した。

「しゃべれんねん」と「話芸」の残酷な壁, ヒカルは「タモリさんが凄いのはもちろん理解している」と反論, 赤塚不二夫が全財産を投じた「密室の狂気」, 牙は抜かれていない。『徹子の部屋』36年連続出演の真意 , 世代間ギャップが浮き彫りにする「凄み」

黒柳徹子

また、落語家の立川志らくは自身のX(旧ツイッター)でヒカルの発言を痛烈に批判した。

「面白くないと思うのは個人の自由」としつつも、それを公言することは「見識不足の露呈で恥をかくことになる」と指摘。チャップリンやピカソ、モーツァルトを引き合いに出し、歴史的評価が定まった存在を安易に否定する愚かさを説いた。

その上で、かつての冠番組「今夜は最高!」を見れば、喜劇人としての凄さは自ずとわかると断じている。

ヒカルは「タモリさんが凄いのはもちろん理解している」と反論

しかし、ヒカルはこの志らくの投稿に対し、「タモリさんが凄いのはもちろん理解していてそれは動画の中でも話していますよ。リスペクトももちろんあります」と反論。

「たぶん動画をちゃんと見ずにこの発言されていますよね?動画をちゃんと見ずに、僕のこともさほど知らずに発言する事は見識不足なんじゃないでしょうか?」

「僕は芸能人の方をYouTuberよりも遥かにリスペクトしています。テレビで育ったので芸能人が好きです。ミーハーなレベルだと思います。それを常々発言していますが悪いところだけ切り抜かれてしまい、それだけを見られて発言していませんか?」

「僕がタモリさんをあまり知らない事は無知なので申し訳ないです。ただ志らくさんも僕のことをあまり知らないと思うのでそれで僕に関して発言していたら同じことをしていることになりますよ」ともつづっている。

赤塚不二夫が全財産を投じた「密室の狂気」

若い世代がタモリを「温厚な司会者」「博識なおじいさん」と捉えるのも無理はない。しかし、タモリの原点は、常人には理解しがたいシュールでアバンギャルドな「密室芸」にある。

素人時代、その特異な才能を見出したのが、漫画家の故・赤塚不二夫だった。タモリの面白さにほれ込んだ赤塚は、自身のマンションにタモリを居候させ、毎晩のように酒を飲みながらその芸を堪能した。

デタラメな言語で麻雀を打つ「四カ国語麻雀」や、爬虫類の動きを完璧にトレースする「イグアナの形態模写」など、知性と狂気が入り混じった独自の芸風は、赤塚という強力な後ろ盾を得て、世に放たれた。タモリは間違いなく、当時のお笑いのセオリーを破壊する「怪人」だった。

牙は抜かれていない。『徹子の部屋』36年連続出演の真意

その後、「笑っていいとも!」などの長寿番組を通じて、タモリは自身の持つ「毒」や「狂気」をオブラートに包み、国民的司会者としての地位を確立した。

しかし、「怪人」としての牙が完全に抜かれたわけではない。

その片鱗を現在でもうかがい知ることができるのが、テレビ朝日系『徹子の部屋』への出演だ。1977年から2013年まで36年連続で年末最後のゲストを務めるという前人未到の記録を打ち立て、近年も再び年末の風物詩として復活している。

「タモリさんはまったく無名のときに『徹子の部屋』に登場して、黒柳徹子さんを圧倒しました。それから盟友とも言える関係が続いています。出演するたび、タモリさんは徹子さんを相手に、現在ではほとんど見せないシュールな密室芸や、独特の観察眼から生まれるマニアックなトークを披露しています。この2人の間に流れる阿吽の呼吸と、テレビの枠組みすら軽やかに逸脱するやり取りは、かつての“アバンギャルドな怪人”を現代によみがえらせる貴重な瞬間です。果たして、これをヒカルさんができるのかということでしょうね」と演芸関係者は話す。

世代間ギャップが浮き彫りにする「凄み」

今回の論争は、テレビの黄金期を牽引してきた「話芸」のプロと、自己表現を主眼に置くYouTube文化との間の、埋めがたい認識のギャップを浮き彫りにしたといえる。

「ヒカルさんの発言は、現在のタモリさんの表面的な部分だけを切り取っただけの結果です。しかし、何十年にもわたって日本のエンターテインメントの最前線に立ち続けたという歴史の根底には狂気がひそんでいるのです。それを見ずして、表面的な“しゃべり”の基準で評価を下すことはやはり恥ずかしいことです」と先の演芸関係者。

いまだに論争が続くこと自体が、タモリという存在が持つ多面性と、影響力の大きさを何よりも物語っている。それ自身が「怪人・タモリ」の底知れぬ凄みだろう。