大河「豊臣兄弟!」市(宮﨑あおい)の介錯と、意表突く信玄(髙嶋政伸)の死に込めた意図をチーフDが明かす【インタビュー】

浅井長政(中島歩)、市(宮﨑あおい)(C)NHK
NHKの大河ドラマ「豊臣兄弟!」の第17回「小谷落城」が3日、放送され、市(宮﨑あおい)による浅井長政(中島歩)の介錯や、武田信玄(髙嶋政伸)が餅を詰まらせて命を落とすなど、これまでの大河では見られなかった衝撃的なシーンが連発された。この日の放送は、前半戦の大きな区切りとなる大事な1話で、異例の演出の数々は、チーフ演出を務める渡邊良雄氏の渾身の勝負手。チャレンジングな試みが、物語を新たな次元へと押し上げた。

浅井長政(中島歩)(C)NHK
「豊臣兄弟!」とは?

市(宮﨑あおい)(C)NHK
豊臣秀長(仲野太賀)を主人公に、天下人となる兄・秀吉(池松壮亮)を補佐役として支えた弟の目線で戦国時代をダイナミックに描く大河。連続テレビ小説「おちょやん」や、「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」(以上、TBS)などのヒット作で知られる八津弘幸さんが脚本を担当する。

山県昌景(石井一彰)、武田信玄(髙嶋政伸)(C)NHK
市(宮﨑あおい)が長政(中島歩)を介錯!血飛沫と夫婦の愛の裏側
渡邊氏が「(全話の)折り返し地点」という第17回は、前半戦の大きなヤマ場。織田軍に追い詰められた長政と別れの言葉を交わした市が、木下藤吉郎秀吉(池松)と小一郎長秀(仲野)に連れられて小谷城を去りかけた矢先、小一郎の太刀を手に取って引き返し、割腹し苦しむ長政を介錯して返り血を浴びるというショッキングなシーンで幕を閉じた。史実にはない衝撃展開だが、渡邊氏にとっては「脚本作りの初期段階からあったアイデア」で、「長政と気持ちを通い合わせた市だからこそ、最後の介錯をするというエピソードで第17回を終わらせようと決断した」と明かす。
このシーンの最後のカットでは、アップになった宮﨑の顔に血飛沫がかかるため、やり直しがきかず、本番は一発勝負になった。渡邊氏は長政の思いを、市が精神的に受け止めるという意味合いを表現するため、血の量やかかる場所にはこだわったと話す
また、介錯に至るまでの感情の持っていき方については、視聴者に違和感を与えないよう、監督と宮﨑、中島の3人で議論を重ねた。長い会話の芝居のなかで、夫の死を受け入れ、刀を借りて自ら手を下すまでの複雑な感情の動きをいかにスムーズに見せるかが、撮影において非常に難しいポイントだったと振り返る。
餅をのどに詰まらせる信玄(髙嶋政伸)…異例の演出に込めたメッセージ
第17回でもう1点、ひときわ異彩を放ったのが、前半で描かれた信玄の最期。過去の大河ドラマでも幾度となく描かれてきた巨星の死だが、本作は「自らついた餅を喉に詰まらせて死ぬ」という展開で見る側の意表を突いた。。死の直前のシーンでは、家臣が持ってきた握り飯に毒が混入されていたにもかかわらず暗殺の危機を逃れ、「天はわしに味方しておる」と豪語した。だが、その翌日、自らがついた「安全な餅」であっさり命を落とす。「人間って何のタイミングでどういう時に死ぬかわからない」。このエピソードは戦国時代ならではの「不条理な死」や、死が日常のすぐ隣にあった時代の残酷さを表現するための仕掛けだ。
次回予告なしは深い余韻残すため
さらに第17回は、ドラマの「顔」とも言えるオープニングのタイトルシークエンスを省略。キャストのクレジットが本編に重ねるテロップの形に変更された。朝ドラでは、象徴的な回でよく使われる手法だが、大河ではレア。また、これまでにも数回あったが次回予告も省かれ、最後は黒バックに白抜き文字でスタッフのクレジット2枚が映るだけという異例の構成となった。これは、視聴者に深い余韻を残すための演出で、渡邊氏は「(本編終了後、視聴者に向けて)ちょっと一旦、自分の中で噛み締める時間を作ってほしいな、というこちらの意図でなくしています」と説明する。渡邊氏によると、第18回(10日放送予定)から物語は新たなフェーズへと入り、豊臣兄弟の運命はさらに大きく動き出していくという。