バイオリニスト・廣津留すみれの“音楽脳”と“勉強脳”。共通点はマクロとミクロ?

小中高と大分の公立校で学び、米・ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(32)。その活動は国内外での演奏だけにとどまらず、大学の教壇に立ったり、中央教育審議会委員を務めたりと、幅広い。「才女」のひと言では片付けられない廣津留さんに、人間関係から教育やキャリアのことまで、さまざまな悩みや疑問を投げかけていくAERA DIGITAL連載。今回は、近年注目を集める「音楽と脳」を切り口に、自身の体験を通して感じた楽器の練習と勉強の頭の使い方について語ってもらった。

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■Q. 最近、「音楽と脳」の関係が注目されています。廣津留さんは音楽にかかわる脳と、勉強、語学にかかわる脳が感覚的に共通していると思うことはありますか?

A. 記憶するという面では、音楽と勉強、特に語学はアプローチの仕方が似ているかもしれません。私のバイオリンの先生は、1曲にじっくり時間をかけて取り組ませるというタイプではなくて、小さい頃から相当な数の曲をものすごいペースで暗譜させる指導方針でした。楽譜を1小節ずつ覚えていくというよりも、指や腕に“マッスルメモリー”のようにインプットしていき、頭の中では楽曲の流れを記憶するという感じだったと思います。言語も小さいときに学ぶと習得が早いといわれるのは、一つひとつの単語や言葉を覚えていくのではなくて、「この言葉が出てきたら次はこれがくる」といった具合に会話や文章の流れで覚えているからなんじゃないかな。「聞く」「話す」という身体的なアクションを伴って記憶するところも似ている気がします。

 でも、暗譜して本番を迎えた際に時々怖くなるのが、ふと我に返ったときに「あれ? 次の音なんだっけ?」と思ってしまうこと。そうなってしまうとかなり焦るので、普段から伴奏部分などに記憶の目印になるものをいくつか作っておき、曲の流れに戻っていけるようにしています。「2回目のこのフレーズが来たら次はこの音」のような感じで。そうしたポイントがあると楽曲の全体像を捉えるロードマップにもなるので、より記憶をよみがえらせやすい気がします。これは全体の流れを把握することが大事な歴史などの暗記系の勉強にも使えますよね。個々の出来事を1つずつ覚えるよりも、引き出しを1カ所作るような感覚でトリガーになるようなポイントを作っておくと、そこにひもづいて前後が思い出せます。

 楽器の練習も勉強も、マクロとミクロの両方の視点が大事なんですよね。バイオリンを効率よく練習するには、まず曲の全体像を把握して、そこからミスしやすい箇所や苦手なところを集中的に練習したうえで通して弾くのがベストだと思っています。勉強も全体像を捉え、大きな目標に向かって自分の弱点や苦手な部分を重点的に勉強していきますよね。単語の暗記もやみくもに覚えるよりも、センテンスが言えるかどうかなど完成形をイメージして取り組んでいく。また、すでに自分が理解できている部分や得意な問題まで含めて何度も通して勉強する必要はないわけです。

 楽器はこれまでの土台があるとはいえ、私は毎年なるべく新しい曲に挑戦するようにしています。今年もこれまで弾いたことがないコンチェルトを演奏する予定で、いまは何度も楽曲を繰り返し聴いている段階です。耳が完全にこの楽曲に慣れ親しんだら、譜面を見て弾き始めていこうかなと思っています。ぜひ楽しみにしていてください!

■Q. 受験勉強とバイオリンをなぜ両立できたと思いますか? どのように頭を切り替えていたのでしょうか?

A. 当時は頭を切り替えるという意識はあまりしていなくて、バイオリンの練習は小さい頃からずっとやっていたことなので、ルーティンとして当たり前にやるもの、という認識でした。

 ただ、受験勉強とのバランスは考えていましたね。受験期は勉強8割、バイオリン2割という力の入れ具合でやっていて、高校3年生のときは半年くらいバイオリンのレッスンはお休みしていましたが、バイオリンにまったく触らないということはなかったです。1時間くらいスケール(音階)を練習したり、これまで演奏したことがある曲を通しで流すように弾いてみたり。さすがにコンクールの予定は入れませんでしたが、自分の手がいつでもしっかり動く状態をキープすることに集中するようにしていました。手さえなまっていなければ、取り組んだことがある曲なら頭で考えなくても勝手に手が弾いてくれる。もちろん、新しい曲のレパートリーは増えないですけどね(笑)。

 そうやって受験勉強のときにもバイオリンをやめずに弾き続けてきたからこそ、大人になった今、だいぶ助かっています。子ども時代に築いたベースがあると、過去に演奏したことがある曲なら練習時間がぐっと短縮できるんです。音楽以外の活動もするようになって忙しくなればなるほど、あのとき勉強に完全に振り切らずに本当によかったなと思います。

 音楽は年齢を重ねて人生経験を積むことで表現の幅が広がりますし、音楽そのものの楽しみ方も変わってきます。受験勉強に集中するためにそれまで頑張ってきた習い事や部活をやめる人も多いと聞きますが、せっかく積み上げてきたものを手放してしまうのはもったいない。ペースダウンしてでも続けてほしいなと思います。

構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS

AERA DIGITALでは、ハーバード大学とジュリアード音楽院を卒業・修了した廣津留すみれさんのライフヒストリーを紹介する連載「廣津留すみれのアタマの中」を掲載。2023年からは「Season 2」として、バイオリニストでありながら大学の教員など多方面で活躍する廣津留さんが、勉強やキャリア、海外のことなどにまつわるさまざまな悩みや疑問に答えます。

そこで、みなさんからの質問を大募集します! お子さんから学生、大人まで、年齢は問いません。

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(https://dot.asahi.com/articles/-/274494?page=3)

例えば……

·「歴史と英単語の暗記のコツを教えて」

·「これって今の英語ではなんて言うの?」

·「ピアノがなかなか上手くなりません。習い事はいつまで続けたほうがいい?」

·「日本に遊びに来た若い外国人を、廣津留さんならどこに案内しますか?」

·「英語でプレゼンするときに相手に響くポイントは?」

·「今、勉強しておくといいジャンルは何だと思いますか?」

·「ずばり、日本の教育を変えられるならどこを変える?」

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