作家の鈴木光司さん死去、68歳 貞子を生んだ『リング』でホラーブームを牽引

作家の鈴木光司さん死去、68歳 貞子を生んだ『リング』でホラーブームを牽引

ホラー小説『リング』で知られる作家の鈴木光司さんが5月8日に亡くなった。68歳だった。

5月9日に各報道機関が報じ、翌日には鈴木光司さんの作品を数多く刊行してきたKADOKAWAも公式Xを更新。「突然の訃報を受け、とても悲しく、寂しいです。深く感謝申し上げ、安らかなお眠りをお祈りいたします」と悼んでいる。

ホラーアイコン「貞子」を生み出した鈴木光司

鈴木光司さんは1957年静岡県浜松市生まれ。1990年に第2回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞となった『楽園』でデビュー。1995年発表の『らせん』では第17回吉川英治文学新人賞を受賞した。

代表作は『リング』『らせん』『ループ』『バースデイ』の「リング」シリーズ。特に『リング』は、1993年の角川ホラー文庫の立ち上げに伴い文庫化されるとベストセラーに。

1998年には中田秀夫監督によって映画化され、「呪いのビデオ」を再生したテレビ画面から這い出てくる怪異「貞子」が、人々に恐怖を与えると共に人気を獲得。映画はその後、アメリカ・ハリウッドなどでもリメイク版が制作されるなど、貞子は世界的に知られるホラーアイコンの一つとなった。

ほかにも、同じく中田秀夫監督によって2002年に映画化された『仄暗い水の底から』をはじめ、アメリカの文学賞であるシャーリイ・ジャクスン賞を受賞した『エッジ』などの作品を発表。2025年3月には16年振りの長編ホラー小説『ユビキタス』を発表していた。

このように鈴木光司さんは『リング』を筆頭に、1990年代のいわゆる「Jホラー」ブームを牽引。今日における国内外のホラー作品に影響を与えている。

日本のホラー小説の歴史を大きく動かした『リング』

前述した通り、鈴木光司さんの代表作『リング』は、文庫化を機にベストセラーとなった。実際、1991年の単行本刊行時にはホラーとして売り出されておらず、そこまで話題にならなかった。

ホラー/怪談/怪奇幻想小説を専門とするライター/書評家の朝宮運河さんは、著書『日本ホラー小説史』(平凡社)の中で『リング』に言及。

それによると『リング』は、ミステリー作家発掘のための第10回横溝正史賞に応募され受賞を逃した作品。しかし、結果的に受賞を逃したことが、日本ではじめて“ホラー”を冠した文庫レーベル・角川ホラー文庫の創刊に繋がったという。

その後同レーベルは多くのホラー作品を世に送り出しており、そういう意味でも『リング』は「日本のホラー小説史を大きく動かす結果となった」と評している。

「貞子」公式Xも追悼「まだ心の整理がつかない」

なお、鈴木光司さんの訃報にあたり、現在は派生した映画などが複数制作されているキャラクター「貞子」が5月10日に公式Xを更新。

投稿では「いつもパワー全開で、とてつもないエネルギーに満ち溢れていた偉大なる父。あまりに現実感がなく、信じられない出来事に、まだ心の整理がつかないです」とコメント。

その上で「今はただ、父の残した素晴らしい作品たちを胸に、ご冥福をお祈りしようと思います。本当にありがとうございました」と追悼している。