仲間由紀恵が登場!身勝手すぎる“公爵夫人”で「やっかい」と不評〈風、薫る第35回〉

『風、薫る』第35回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて12年目の著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第35回(2026年5月15日放送)の「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

長屋の人には一生行けない病院

 嘘(うそ)によって患者の希望を叶えることに成功した直美(上坂樹里)。患者の信頼を得て、一部の医者たちとのコミュニケーションもうまくいって、同期のなかで一步リードしたかに見えた。ところが第35回ではりん(見上愛)の良さがクローズアップされる。

 丸山(若林時英)は直美よりもりんのほうがいいと言う。直美ともっとも親しくなっているように見えた丸山がなぜそんなことを?

 りんのお休みの日、直美がこの病室を仕切った。そうしたら「きびきび食事して、薬塗って、歩く稽古までさせられて」と丸山。ほかの患者も「薬のことで頼み事もしちまったし、何だかみんな文句言いづらくて」「俺たちのためにやってくれんのはわかってるけどさ。あんたがいたらなぁって」などと言う。

 りんの武家の出らしい上品なふるまいが患者たちに好まれているようだ。でも、りんはすぐに思ったことを口に出す人ですよ?

 そんなふうに思われている直美がちょっとお気の毒になる。

 この日は直美がお休み。研修中は全員、日曜日が休みだったが、病院では交代制のようだ。

 直美は長屋に立ち寄る。長屋の襖に「木挽」と書いてあるから、ここは木挽町なのであろうか?

 大家さんたち(ここでは全員「大家」と名乗っている)は、直美が立派な病院で働いていることをたたえる。立派だと思う理由は「私ら一生行けないもの」。

 何気なく出るその言葉に、長屋で暮らしている人たちが社会ではみ出していることが浮かび上がる。

 貧乏長屋の住人たちは、名字も勝手に「大家」と名乗っているだけの、市民としての立場があやふやな存在なのだ。

 朝ドラのよさは、こういったことをドラマの中心には置かないが、ときおり、ちらつかせることだ。忘れがちな大切なことを思い出させてもらえる。

仲間由紀恵、入院患者役で登場

 長屋の住人を演じているのが、松金よね子、広岡由里子、春海四方、という熟練の俳優であることで、出番は短いながら、長屋の人たちのバイタリティーが一瞬で放たれる。でもせっかくの名優たちだから、もうちょっと出番があってもいいのでは。贅沢(ぜいたく)すぎる使い方だ。

 直美が長屋に顔を出す理由は、生き別れの母親の行方を気にしているから。以前、長屋に立ち寄ったとき、離れ離れになった子どもを探しに来ている女性がいると聞いて、気になっていたのだ。

 だが、その人は直美の母とは別人だった。子どもが見つかったと長屋に挨拶(あいさつ)に来ているところに出くわし、すこし胸が痛そうな直美。

「よかったね、おっかさんと会えて。もうおっかさんとはぐれないようにしなよ。せっかく産んでもらって、お乳くれたんだから」

 子どもに語りかける台詞(せりふ)に、直美を捨てた母への思慕が滲む。

 思い切って、お守りの中身をあけてみる。直美の母親探しがはじまりそうだ。

「お乳」というワードが、次なる患者・和泉千佳子(仲間由紀恵)のエピソードとリンクする。

 病院では和泉公爵(谷田歩)の奥様が入院してくることになり大騒ぎ。一番いい病室(上等病室)に、上等な家具が運ばれてくる。

 お嬢様の東雲(中井友望)は「実は私、奥様とご挨拶したことがあって」と言う。大名の姫君という由緒ある家柄なので、ご挨拶できるだけでもすごいらしい。

 奥様には乳がんの疑いがあった。検査をしたあと、手術をする。

 緊張しながらの看護がはじまる。だが、千佳子は看護が気に入らず、次々と担当を変えてほしいと言う。どんどん不機嫌になって、退院したいと言い出した。

 理由は、窓からの眺めがよくないから。上流階級の奥様の考えは斜め上をいっている。どうでもいいが、一番いい部屋でもカーテンがないのはなぜなんだろう。

 今井(古川雄大)「手術もせずに転院されては、帝都医大病院の名折れになります」

 多田(筒井道隆)「たとえ手術をしたとしても、成功率は2割ほどだと」

 今井「もう少し早く受診してくださればよかったのですが」

 藤田(坂口涼太郎)「やっかいですね」

 院長たちの言い方はなんだか自己保身と言い訳が先に立っている。この病院が有名で大きく見えるが、中身はすかすかな印象が強調される。

りんと直美 それぞれのケアの違い

 休み明け、直美が丸山の担当をしている。「昨日は、極楽だった」と言う丸山に直美が「すみませんね。私は雑で不器用で」と不満顔。

 なぜ、丸山が昨日、楽な気持ちになったか。それは、りんから「退院したら一番何をしたいか」と聞かれ、それを想像したことによるものだった。

 丸山は、風呂に入りたい、走りたい、とあげながら、人の暮らす音が聞きたいと言っていた。

 病院は決まった音しかしないから、と丸山が音に注目するのは興味深かった。

「よく考えたら、病気以外の話、入院してから病院の人とはしたことなかったから」と言う丸山。それで気が紛れるのだろう。

 直美は嘘で物事を効率的に進めたが、りんは、想像力で患者の気持ちをケアした。退院後のことを思い浮かべることで現実逃避できるし、前向きになる。このやりかたには共感できる。

 りんは、最初の患者・園部(野添義弘)との関わりがうまくいかず落ち込んでいたわけだが、「後ろ向きに元気に」乗り越えようと考えている。当人は「後ろ向きに」だが、患者のことは前向きにさせることに成功したのだ。3歩進んで2歩下がる的なことか。

 一方、直美はぐいぐいと無理やりにでも前に進んでいく。

 比べると、りんのほうに軍配があがるような気もする。だがメンタル面だけ満たされても薬や必要な治療ができないのであれば、治るものも治らない。りんと直美、ふたり合わせると最強ということだ。

 そこへ、バーンズ(エマ・ハワード)がやってきて、りんと直美を呼ぶ。先生がふたりを連れていったのは、院長の部屋。四天王的な4人がいて、院長が思いがけないことを提案する。

 第8週は千佳子様の看護編。第2の患者・千佳子とりんや直美はどう向き合うのか。仲間由紀恵、今度の朝ドラではどんな演技を見せてくれるか、刮目したい。

フォトギャラリー

主なシーンより

第7週(5月11日〜5月15日)

「届かぬ声」あらすじ

いよいよ看護婦見習として、帝都医科大学附属病院での実習が始まった。りん(見上愛)と直美(上坂樹里)は、外科に配属され、養成所で学んだことを実践するが、ベテラン看病婦のフユ(猫背椿)たちからは煙たがられる。そんな中、りんは足の手術を終えたばかりの園部(野添義弘)を担当することになって……。

連続テレビ小説『風、薫る』

作品情報

連続テレビ小説「風、薫る」。主人公はそれぞれに生きづらさを抱えた2人の女性。当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込み、傷ついた人々を守るために奔走し、時に強き者と戦う——明治という激動の社会を舞台に、幸せを求め生きるちょっと型破りな2人のナースの冒険物語です。

【脚本】吉澤智子

【原案】田中ひかる「明治のナイチンゲール 大関和物語」

【音楽】野見祐ニ

【主題歌】Mrs. GREEN APPLE 「風と町」

【語り】研ナオコ

【出演】見上愛 上坂樹里 佐野晶哉 生田絵梨花 古川雄大 菊池亜希子 藤原季節 平埜生成 中井友望 坂口涼太郎 猫背椿 飯尾和樹 筒井道隆 多部未華子 原田泰造 水野美紀 片岡鶴太郎 坂東彌十郎 仲間由紀恵 ほか

【放送】2026年3月30日(月)開始(全26週130回)