仲間由紀恵の朝ドラ史! 主人公の親友→母親を経て、たどり着いた「立ちはだかる壁」〈風、薫る第36回〉

『風、薫る』第36回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて12年目の著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第36回(2026年5月18日放送)の「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

仲間由紀恵の朝ドラ史ふりかえり

 仲間由紀恵の登場で画面が一気に華やいだ。

 第8週「夕映え」(演出:佐々木善春)は仲間由紀恵が演じる侯爵夫人の入院エピソードになる。

 りん(見上愛)が彼女の担当を任されて……。

 仲間はこれまでも朝ドラに出演してきた。まず、仲間由紀恵と朝ドラを振り返っておこう。

 2014年には『赤毛のアン』の翻訳家を主人公のモデルにした『花子とアン』(脚本:中園ミホ)へ出演。このときの仲間もいいところのお嬢様・蓮子役であった。主人公の対比になる理想的なキャラクターだった。

 モデルは作家・柳原白蓮。華族の娘で、主人公・花子(吉高由里子)の学友で、やがて親友になる。花子が飲ませたぶどう酒で蓮子が酔っ払うエピソードは『赤毛のアン』のダイアナを思わせた。

 家のために意に沿わない結婚をするも、粗野な夫(吉田鋼太郎)がいやすぎて、知的な青年(中島歩)と道ならぬ恋をして駆け落ちするというドラマティックな展開(美輪明宏の歌う『愛の讃歌』を劇伴にして)は、まるで主人公のようだった。戦争になると、花子と立ち位置の違いに猛反発することになる。

 こうして『花子とアン』を振り返ると、吉田鋼太郎、中島歩といま、大活躍している俳優たちがテレビドラマに出て全国区で認識されたきっかけになった記念すべきドラマであった。

 続いて出演したのは、2022年、沖縄生まれの主人公を描いた『ちむどんどん』。ここでは主人公・暢子(黒島結菜)の母親役。早くに夫(大森南朋)を亡くして、女手ひとつで3人の子どもを育てる苦労人を演じた。お嬢様キャラクターとは反対のキャラクターで、工事現場で肉体労働をする場面は美輪明宏の『ヨイトマケの唄』の世界。涙なくしては見られなかった。

 仲間は沖縄出身だけあって沖縄の歴史をわかったうえでのおおらかな気風が感じられ、ドラマの支柱となっていた。

 そして、『風、薫る』は入院患者としてゲスト出演。気難しい侯爵夫人として、りん(見上愛)たちの看護婦見習いに立ちはだかる。

院長たちの悪だくみ

『風、薫る』で仲間由紀恵が演じる千佳子は和泉侯爵(谷田歩)の妻で、乳がんの疑いがあって入院してきた。

 上等病室に入ったにもかかわらずそこが気に入らないから退院すると言いだし、病院は大慌て。

 院長たちは千佳子の看病の担当者として、りんに白羽の矢を立てる。

 バーンズ(エマ・ハワード)は失敗したら養成所のせいにする気だと気づいて、渋る。

 だが直美(上坂樹里)は逆手にとって、うまくいけば実習生の手柄になるし、りんは元家老の娘だから、千佳子とウマが合うんじゃないかとバーンズに英語で進言する。

 バーンズと直美が英語で行う悪巧みを、院長たちは理解できない。病院の4トップの誰ひとりとして英語が話せないなんてことはあるのか。ポンコツすぎないか。医学といえばドイツ語、ドイツ語ならできるけどね、みたいな感じなんだろうか。

「もう少し長くなかったか?」と多田(筒井道隆)が直美の訳を疑うのにはリアリティがあった。英語は言葉の分量が日本語より多く、それを日本語にすると短く感じることがある。通訳はかなり手短に訳してしまうので、細かい部分のニュアンスが抜けてしまうのだ。直美の場合は、相手がわからないのをいいことに嘘(うそ)の通訳をして、院長たちを欺いた。

 案の定、“四天王”たちは問題が起きたら、養成所にかぶってもらえばいい、と考えていた。はたしてりんは彼らの鼻を明かすことができるだろうか。

 ただ、ここで疑問。この養成学校は、捨松(多部未華子)肝いりの学校である。彼女もずいぶん偉い人のはずなのに、その威光は彼らにはまったく効かないのだろうか。

 りんにとっては2人目の担当患者。ひとりめの園部(野添義弘)とは失敗して、落ち込んでいたから、今度こそうまくやって立ち直ってほしい。直美もバーンズもそういう気持ちもあるに違いない。当人もきっと、今度こそうまくやりたいと思っているだろう。

 だがそうは簡単にはいかない。園部と同じく千佳子も不機嫌そうに背を向けている。

 りんにいきなり「お引き取りください」と冷たい千佳子。

 ふたり続けて患者に背を向けられるりんのメンタルが心配になる。だがりんはめげない。

 看護婦という概念がない千佳子に、辛抱強く理解してもらおうと努める。

 声はワントーン高めのよそ行きで。

 まずは、きれいなシーツの敷き方を披露する。

「少しでも退屈しのぎになればなと」

千佳子様が読んでいるのは「源氏物語」

 残念ながら千佳子はシーツや換気には心が動かされない。だが、千佳子が読んでいる本が『源氏物語』だと気づいたりんが「すてきなものをお読みですね」と声をかけると、少しだけ心が動いた様子。

 おそらく千佳子は、りんにはそれなりの教養があると感じたことだろう。これが、家老の娘のりんを担当にする理由のひとつである。

『源氏物語』をきっかけにふたりの関係が良好になるかと思ったら、ことはそれほど簡単ではなかった。

 食事やお通じの質問をすると、食事はともかくお通じの段になって、千佳子が激怒。

「無礼者!恥を知りなさい!」

 奥様はデリケートなのだ。

 園部には「下女風情」、千佳子には「女中」「恥を知りなさい」と自尊感情が傷つけられまくりなりん。

 その後も何もさせてもらえない。

 同僚たちは、その話を聞いて、意見交換する。

 他人にからだを触られるのがいやなんじゃないかと、東雲(中井友望)。

 トメ(原嶋凛)は、自分の村では赤ん坊に乳をやるときなど人前でも胸を出していたという。

 だが、千佳子は華族の出だ。胸をさらすのはちょっと、と言って「三十路、過ぎてますけど、私に子がいないからかしら」と自分の立場で考える泉喜代(菊池亜希子)は、第33回で赤ん坊の抱き方を知らないと看病婦に「子守りなんて8つの子どもでもできるのに」と呆れられていた。

「私も他人に体を触られるのは、それだけで緊張します」と松井(玄理)が同意する。

「もし患者なら」ますますそうではないか。そんなことに思いを致すりんたち。

「患者さんと同じ気持ちになってみる」

 この課題にトライするりん。

「私、奥様のおつらい気持ちはよく分かります」

 そう言ってみた。

 すると「気持ちが分かるなんてたやすく言わないでちょうだい」「思い上がらないで」と、またおかんむり。

 相手の気持ちに寄り添うことは大事だけれど、「わかる」と言ってしまうと、わかるわけないとかえって反感を抱かれることもある。共感を示すことって難しい。視聴者が共感しそうなエピソードだった。

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主なシーンより

第8週(5月18日〜5月22日)

「夕映え」あらすじ

和泉侯爵家の千佳子(仲間由紀恵)が乳がんで入院し、りん(見上愛)が担当することになった。しかし千佳子はなかなか心を開かない。りんは直美(上坂樹里)たちと相談しながら、千佳子に寄り添い、説得を試みるが……。

連続テレビ小説『風、薫る』

作品情報

連続テレビ小説「風、薫る」。主人公はそれぞれに生きづらさを抱えた2人の女性。当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込み、傷ついた人々を守るために奔走し、時に強き者と戦う——明治という激動の社会を舞台に、幸せを求め生きるちょっと型破りな2人のナースの冒険物語です。

【脚本】吉澤智子

【原案】田中ひかる「明治のナイチンゲール 大関和物語」

【音楽】野見祐ニ

【主題歌】Mrs. GREEN APPLE 「風と町」

【語り】研ナオコ

【出演】見上愛 上坂樹里 佐野晶哉 生田絵梨花 古川雄大 菊池亜希子 藤原季節 平埜生成 中井友望 坂口涼太郎 猫背椿 飯尾和樹 筒井道隆 多部未華子 原田泰造 水野美紀 片岡鶴太郎 坂東彌十郎 仲間由紀恵 ほか

【放送】2026年3月30日(月)開始(全26週130回)