仲間由紀恵、さすがの「ツンデレ演技」→にじみ出る“名家のプライド”が気高かった〈風、薫る第38回〉

『風、薫る』第38回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて12年目の著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第38回(2026年5月20日放送)の「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)
武家の出らしい千佳子様
朝ドラ名物「立ち聞き」。朝ドラでは登場人物が立ち聞きして大事なことを知ることがよくある。
千佳子(仲間由紀恵)の病室の中で声が聞こえる。夫・元彦(谷田歩)と息子・行彦(荒井啓志)と千佳子が揉めている。
りん(見上愛)が立ち聞きしていると、外科医教授の今井(古川雄大)と藤田(坂口涼太郎)と黒川(平埜生成)が通りかかる。多田(筒井道隆)を入れたら四天王。いないと三銃士?
夫と御子息に我々の仕事ぶりをみていただくいい機会だと、今井は立ち聞きで済ませる遠慮はなく、なかにぐいぐい入る。
そして千佳子の病状をその場で説明しはじめる。
なんだかいやそうな千佳子を見て、りんがおそらくわざとカルテを落とす。それをきっかけに千佳子は話を切り上げてしまった。
そっと目を合わせるりんと千佳子。なんかいい感じになってきたのでは?
その後、りんは、病室の掃除をする。千佳子の入院している上等病室には小上がりがあってそこには畳が敷いてある。洋風のベッドと椅子の入院生活が落ち着かなかったら、小上がりで和室生活ができるのだ。さすがこの病院随一の上等病室。
掃除しながら「庭の千草」を歌うりん。これはアイルランド民謡。
そういえば、忘れていたが、一時期りんは「猫じゃ猫じゃ」の端唄をよく歌っていた。
「ご不満でもお怒りでも愚痴でも文句でも 何でも よかったら、私にお話ししてください」
りんの声がけに千佳子は相変わらずむすっとするばかり。
りんはめげずに「残念ながら、私に奥様の本当のお気持ちは分かりません。看護婦見習いの他人です。ですから、ご家族のように、気遣う必要もありません」
すると、ついに千佳子が本音を吐露。デレるのがちょっと早すぎないか。いや、『風、薫る』は進行は早いのが特徴だ。
「手術は受けたくありません。手術を受けて、生きながらえたいほど、強欲な恥知らずではありません」
千佳子は元・武家の人間として潔く死ぬ、と思い詰めていた。
シマケン、槇村、もうひとり
出た、武家! りんも武家の出。この共通項によって千佳子はじわじわと心のドアを開けていく。
優しい劇伴が流れだす。
「『看護婦になるなど恥を知れ』と母には言われました」
「そうでしょうね」
「ですが今では母も力になってくれています」
そう聞いて、意に沿わない話だと感じながらも、ちょっと心が動いたかのような表情の千佳子様。
「この仕事(看護婦)は、この手は、多くの人を助けると、看護婦養成所で教わり、さらに働きたいと思うようになりました。私はまだまだですけど、でも、奥様が生きる助けになりたいと思っています」
手術を受けたくない理由があるのではとりんは聞く。
ざわざわざわと風の音。少し沈黙のあと、千佳子は理由は言わず、シーツを取り替えてとだけ言う。
りんのベッドメイキングが悪くないというのは、ツンデレ。
仲間由紀恵は、動作も表情も大きく動かさないが、複雑な感情がちゃんと出ている。いいお家の出であるプライドまで滲ませるのは、なかなかできるものではない。お着物もすごくしっくりきている。
りんと千佳子の話題にのぼった美津(水野美紀)。彼女は武家の出ながら、いまやせっせと瑞穂屋で働いている。だが、自らが汗をかくことはなく、誰かに指示する側にまわるのはやはり武家の出らしい。「働かせ上手」と言われている。
美津は琴を弾いたり、カレーを作ったり、アクションもできて、キャラが立っているが、気になるのは妹の安(早坂美海)である。
38回まで来て、第1回から出ているのに、キャラがいまいちはっきりしない。姉の代わりに嫁に行くことにしたものの、縁談がなくなって、そのあと、活躍の機会がまったくない。ここまで出番の少ない主人公のきょうだいも珍しい。なんてことを、毎作見ている朝ドラウォッチャーは考えてしまうわけだが、そんな安についにエピソードが、それも恋のエピソードが訪れそうだ。
シマケン(佐野晶哉)と槇村(林裕太)が瑞穂屋に。今日はもうひとり。
夕凪って誰?
槇村の兄・宗一(上杉柊平)は役人。背が高くしゅっとしている。
安は、環(英茉)と話す宗一から目が離せない。じっと熱い視線を注いでいる。その様子に気づいた美津はさっそく年齢と職業をシマケンにリサーチ。
でも安のほうが積極的で「ご結婚は?」とずばり聞いて、美津にとがめられる。
宗一は、安を環の母親と勘違いするが、美津は強く否定し、シマケンに仲立ちを頼む。善は急げ。
シマケンは安が宗一をロックオンしたことに気づいていない。さすがシマケン。
もし、安が宗一と結婚したら、槇村が一ノ瀬家と親戚になってしまう。シマケンよりも先に一ノ瀬家と近しい関係になってしまうのもなんだか不思議である。
安のターンがありそうな振りのあとは、再び直美(上坂樹里)の母親の行方問題へ。
直美は医者の気持ちを手玉にとるのはうまくても、患者の気持ちを動かすことは得手ではないようで。
厳しく接して、反感を買っている。
汽車の運転方(運転手のこと?)に安静を強いていたら、「見習いさん、俺はあんたと違って足を治すことばっかり考えてられないんだよ。早く退院しても働けないほど他が弱ってたら生きていけやしないんだ」と返される。
それは直美にはショックだった。
「ケガが治るだけじゃ生きていけない。汽車の運転方として働きたい」
「好きなおせんべいを食べたい」
それが患者の気持ち。
「そういうものかもしれない」
「そういうものかもしれないね」
りんと直美はなんとなく、看護のコツをつかみはじめている。
そんなとき、直美を「夕凪」と呼ぶ人物(陰山泰)が現れて……。その人物と寛太(藤原季節)が知り合いらしく……。またしても、超早送り展開! そして、世間が狭すぎる!
フォトギャラリー
主なシーンより
第8週(5月18日〜5月22日)
「夕映え」あらすじ
和泉侯爵家の千佳子(仲間由紀恵)が乳がんで入院し、りん(見上愛)が担当することになった。しかし千佳子はなかなか心を開かない。りんは直美(上坂樹里)たちと相談しながら、千佳子に寄り添い、説得を試みるが……。
連続テレビ小説『風、薫る』
作品情報
連続テレビ小説「風、薫る」。主人公はそれぞれに生きづらさを抱えた2人の女性。当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込み、傷ついた人々を守るために奔走し、時に強き者と戦う——明治という激動の社会を舞台に、幸せを求め生きるちょっと型破りな2人のナースの冒険物語です。
【脚本】吉澤智子
【原案】田中ひかる「明治のナイチンゲール 大関和物語」
【音楽】野見祐ニ
【主題歌】Mrs. GREEN APPLE 「風と町」
【語り】研ナオコ
【出演】見上愛 上坂樹里 佐野晶哉 生田絵梨花 古川雄大 菊池亜希子 藤原季節 平埜生成 中井友望 坂口涼太郎 猫背椿 飯尾和樹 筒井道隆 多部未華子 原田泰造 水野美紀 片岡鶴太郎 坂東彌十郎 仲間由紀恵 ほか
【放送】2026年3月30日(月)開始(全26週130回)