【実態】「安全を確保できない」万博EVバスが“負の遺産”に…関係者が明かす“補助金目当て”の無責任体質
大阪・関西万博で来場者を輸送したEVバス。環境にやさしい乗り物として導入されましたが、安全性に致命的な問題があり路線バスなどへの転用は断念されました。相次ぐトラブルや関係者が明かす販売会社の無責任な体質など、負の遺産となった背景に迫ります。(読売テレビ 報道局:瀬川 裕大)
■万博の“レガシー”から“負の遺産”へ・・・公共交通としての致命的な問題

“塩漬け”状態のEVバス(大阪市城東区) ©ytv
万博の“レガシー”として活躍するはずだったEVバス。閉幕後は、“バスの墓場”とも揶揄される大阪市城東区の敷地で、“塩漬け”状態となっていました。

トレーラーに乗せられ、撤去されるバス(5月18日) ©ytv
5月18日、バスはトレーラーに乗せられ、撤去に向けた作業が始まりました。“負の遺産”となったEVバスの側面には、ブルーシートが貼られ、ラッピングが見えない状態に…。なぜ、このような末路をたどることになったのでしょうか。

万博開催中に走行していたバス(去年) ©ytv
大阪・関西万博で、来場者を輸送したEVバスは電気で動くため、環境にやさしい乗り物だとして、大阪メトロが導入し、万博閉幕後は、路線バスなどへの転用が予定されていました。しかし…。

大阪メトロ・河井英明 社長 ©ytv
(大阪メトロ・河井英明 社長)
「当社保有の当該EVバスすべてについて、運行を再開せず、今後使用しないことをお知らせいたしました」
背景にあるのは、「安全性を確保できない」という、公共交通としての致命的な問題です。

ドライブレコーダーの映像 ©ytv
万博開催中の去年9月、回送中に大阪市内を走っていた、大阪メトロのEVバスのドライブレコーダーの映像には、バスが交差点を通過した直後、中央分離帯にぶつかる様子が映っていました。運転手は左にハンドルを切っていますが、バスは反対の右方向に進んでいるのがわかります。

左にハンドルを切っているのにバスは右方向に進んでいる ©ytv
このとき、バスは中央分離帯に衝突し、縁石に乗り上げました。事故当時、乗客はおらず、ケガ人はいませんでしたが、一歩間違えば、大惨事につながりかねない事故でした。
(男性運転手)
「衝突直前、ハンドルを左に切ったが、右に流れていくような感覚があり、車体をコントロールできなかった」

福岡・筑後市の小学校で導入されたEVバス ©ytv
実は大阪メトロにEVバスを販売した会社が扱うバスをめぐっては、他の地域でもトラブルがありました。福岡県・筑後市の小学校は、去年4月に、4台を「スクールバス」として導入しました。ところが…。

スクールバスの運転手 ©ytv
(スクールバスの運転手)
「カーブでハンドルが切れなかった。それには正直びっくりした。信号でエンジン停止とか、あとはブレーキの利きが悪いとか。途中、折り返し地点でハンドル操作をしたら(勝手に)ハンドルがいきなり回ったとか。子どもたちにも気を使わないかん、バスにも気を使わないかんということで、結局、気苦労がものすごくあった」

EVモーターズ・ジャパンのHP ©ytv
導入からわずか2週間、筑後市はこのバスの使用の中止を決めました。トラブルを起こしていたバスの販売会社は、福岡県に本社を置く、『EVモーターズ・ジャパン』です。
国土交通省は、相次ぐトラブルを受け、万博会期中の去年9月、会社に対し、全車両の点検を指示しました。その後、去年11月には、この会社が販売したEVバスのうち、万博で使われていた35台を含む85台の、リコールを発表しました。
■関係者が明かす“無責任な体質”と“補助金目当て”

バスを製造していた中国の『Wisdom Motor』 ©ytv
バスを製造していたのは、中国の『Wisdom Motor』という新興バスメーカーで、EVモーターズ・ジャパンは、バスの製造を委託し、大阪メトロや自治体に販売してきました。ただ、販売会社の関係者に話を聞くと、無責任と言わざるを得ない会社の体質が見えてきました。

「車の品質が悪すぎて手に負えない」 ©ytv
(EVモーターズ・ジャパン関係者)
「正直に申しあげると、車の品質が悪すぎてちょっと手に負えない」
さらに品質の低さを認識したうえで、補助金を得ようとしていた内情を指摘しました。

「1に補助金、2に補助金」 ©ytv
(EVモーターズ・ジャパン関係者)
「補助金に間に合わせるために品質管理はそれなりにという形で、『1に補助金、2に補助金』と社内では揶揄されているぐらい補助金を大切にするような形でやっておりました」
結局、様々な不具合などがきっかけとなり、大阪メトロは、EVバスの路線バスなどへの転用を断念しました。そのきっかけとなった今年1月の車両の点検の詳細について、関係者が今回、取材に明かしました。

「不具合が出るのが日常茶飯事」 ©ytv
(EVモーターズ・ジャパン関係者)
「『ラテラルロッド』という(車輪とつながる)金属の棒だが、そこの付け根の溶接が外れてしまい、もうこれダメだよねということも。正直に言って麻痺してますので、『また出たから解決しようね』といったような感じ方になっています。不具合が出るのが日常茶飯事なんで」

EVモーターズ・ジャパンは民事再生の手続きを開始 ©ytv
走行中に給電できることや、自動運転の実証実験ができるといった条件に合致していたとして、EVモーターズ・ジャパンの車両を採用したという大阪メトロ。今回の事態を受け、5月14日、大阪メトロは67億円の特別損失を計上したと発表しました。
大阪メトロはバスを販売したEVモーターズ・ジャパンに対し、契約の解除を伝え、購入代金の返還や大阪市内に残された車両の引き取りなどを求めていましたが、一連の問題を受け販売会社は、4月、「資金繰りの懸念」を理由に民事再生の手続きを開始したため、具体的な協議はまとまっていません。

EVモーターズ・ジャパンの“反論” ©ytv
(EVモーターズ・ジャパン)
『大阪メトロが車両の運用を停止したのは、あくまでも個別判断によるものであり、製品自体の安全性の欠如に起因するものではない。すでに契約の解除は認められない旨を回答しております』
万博閉幕後、“負の遺産”として残ったEVバス。導入に至った経緯など、さらなる検証が求められています。
(読売テレビ「かんさい情報ネット ten.」2026年5月18日放送)