弘南鉄道大鰐線「休止」発表でファン殺到の吸引力 「最悪の場合、死にます」看板はその一例

2028年3月末で大鰐線が休止

2025年12月、ひさしぶりに青森県の弘南鉄道に行ってきた。弘南鉄道は弘南線と大鰐線、それぞれ独立した路線を持つ鉄道会社。弘南線は通勤通学で使われ、時間帯によっては混み合う路線だが、大鰐線はどちらかというと観光客向けの路線で、乗車率はそれほど高くない。

【はじめに写真を見る】▶「休止」発表の弘南鉄道大鰐線は見どころ満載▶物騒な「最悪の場合、死にます」看板とは?

そして2025年10月、弘南鉄道から「2028年3月31日の運行をもって大鰐線を休止する」という発表があった。個人的に大鰐線はまた行きたいと思っていた路線なので、いても立ってもいられなくなり、さっそく訪れてみた。

弘南鉄道に乗車したのは今まで2回ほど。1回は大鰐線で大鰐温泉に入りに行き、もう1回は弘南線の田んぼアート駅へ田んぼアートを見に行った。

2028年3月末で大鰐線が休止, 「廃止」ではなく、「休止」, 弘南鉄道とのコラボルーム, 名物は「つゆ焼きそば」, 星野リゾートとのコラボ列車も, 硬券の入場券が人気

カウントダウンカウンターが設置された中央弘前駅(筆者撮影)

今回はピンポイントの訪問ではなく、弘南鉄道を全線乗り通しつつしっかり沿線巡りをしようと思う。弘南鉄道を楽しみ尽くしたい。

まずはJR弘前駅から中央弘前駅へ移動。初めて来た時は、この2駅が離れていて道に迷ったものだった。両者の距離は歩くと20分ほどかかり、バスだと10分ほどだ。

「廃止」ではなく、「休止」

中央弘前駅の駅前には、休止までのカウントダウンのパネルが設置されていた。まだ2年もあるのにえらく早い。聞くところによると「あまり暗いイメージにならないよう演出している」とのこと。「廃止」ではなく、あくまでも「休止」である。

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りんごねぷた列車車内(筆者撮影)

大鰐線のホームで列車を待っていたら、やって来たのは「りんごねぷた列車」。車内にはりんごの「津軽ねぷた」がたくさん飾られ、時期によって夜に光る。このような装飾列車が普通列車として走っているのがとても楽しい。

さらに1車両に1つある「ハートの吊り革」を見つけると恋がかなうと言われている。興味ない、と言いたいところだが、しっかり見つけに行った。

ちなみに弘南鉄道を走っている車両は、元東急で使われていた車両たちだ。車内にも「東急」の銘板が掲示されている。吊り革には「東急百貨店」などの広告も残る。

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石川駅の「死にます看板」(筆者撮影)

田んぼとりんご畑が広がる沿線を眺めながら、石川駅に到着。こちらは「死にます看板」という物騒な看板が有名だ。ストレートな物言いがむしろ刺さる。ここから歩いて10分ほどにあるマルヨ食堂でラーメンを食べた。弘前はラーメンも有名で、こちらは懐かしさを感じる醤油味のラーメンだった。

その後再び大鰐線で大鰐駅まで行き、駅からすぐの立ち寄り湯で大鰐温泉を楽しむ。時間がなければ駅前に足湯もある。

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平川橋梁で大鰐線を走る列車を撮る(筆者撮影)

ところで今回、取材でタクシーを使う機会があった。「弘南鉄道沿線で鉄道走行写真を撮りたいのですが…」とダメ元で運転手さんに相談してみたら、なんと「まかせてください!」と即座に助手席にあった時刻表を取り出し、一目散に車を走らせた。

なんと撮り鉄の方だった。おかげで何カ所かで列車の写真を撮ることができた。

ちなみに私はこの現象を『鉄は鉄を呼ぶ』と呼んでいる。私の行く旅先では、なぜかこういう奇跡がよく起こる。

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GOOD OLD HOTEL(グッドオールドホテル)の廊下(筆者撮影)

本日の宿は中央弘前駅から徒歩3分ほどにあるGOOD OLD HOTEL(グッドオールドホテル)。昭和に栄えたスナックが入った集合ビルを、外装や看板そのままにリノベーションしたホテルで、一度泊まってみたいと思っていた。

弘南鉄道とのコラボルーム

部屋の入口には当時の「愛人」「ニューうさぎ」などの看板があり、部屋名となっている。部屋の中にも照明や印象的な壁の一部などが残されている。今回は、その中にひとつだけある弘南鉄道とのコラボルームに泊まってみた。

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弘南鉄道ルーム(筆者撮影)

「鉄子」とある看板のドアを開けてみると、鉄道部品の数々が目に飛び込んできた。想像していた以上に鉄道ルームである。ベッドボードの壁側一面には、弘南鉄道の顔がある。マークの入ったベッドリネンはオリジナルで作ったそうだ。

入口横の机にはびっしりと鉄道部品が置かれ、引き出しの中も目一杯、鉄道グッズが詰め込まれていた。部屋の一角には列車のシートとつり革があり、楽しくてしばらくここで写真撮影をして遊んだ。

翌日は、弘南鉄道の弘前駅から弘南線に乗車した。やはりこちらの方が、学生さんたちが多く乗車していて混んでいる。まずは終点の黒石まで行き、ラッセル車の取材をした。この日はちょうどラッセルの稼働開始日だった。弘南鉄道のラッセルは日本でも希少な鉄道省時代のラッセル車だ。今も現役で稼働しているのがすばらしい。

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ラッセル車(筆者撮影)

「ラッセルは列車の始発前に動かさないとなりません。サラサラな雪なのか、重い雪なのかで運転の仕方も変わってくる。重い雪はスピードを出しても壁に向かっていくような重さを感じるので、その場合はスピードを出して雪に負けないようにします」

そう説明してくれたのは、弘南鉄道の五十嵐さんだ。

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ラッセル車の車内(筆者撮影)

五十嵐さんがラッセル車を運転し始めたのは免許を取った翌年の2018年冬から。まずは通常の電車を運転しないと地形などがわからないので、それを1年体験してからラッセル車を担当した。

弘南鉄道は運転士が15名ほどいるが、みんなラッセル車を運転できる。大鰐線が休止になったらあちらの運転士はどうするのか? と尋ねると、弘南線に来たり車両整備をしたりなど、仕事はいくらでもあるとのこと。むしろ人手は足りないくらいだそうだ。

名物は「つゆ焼きそば」

取材を終えてから駅近くにある「すごう食堂」で「つゆ焼きそば」を食べた。ソースで炒めた太めの平打麺に和風だしをかけて食べる焼きそばは、見た目の色味ほど味は濃くなく、すっきりと食べられる。地元の名物がある町はいい。

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黒石名物「つゆ焼きそば」(筆者撮影)

駅に戻るとしばらく列車がなく、寒い待合室で待つのはなあ、と思ったものの、一番近い喫茶店は歩いて15分ほどかかるという。

しかたなくまた同じ店に戻り、「黒石やきそば酒」というお酒を熱燗にしてもらって暖をとった。こういう行き当たりばったりも好きだ。まさに唯一無二の旅をしている感じがする。

今回、ほかにも中央弘前駅の近くにある「弘前れんが倉庫美術館」へ行ったり、お笑い芸人「シソンヌ」のじろうさんが開店に関わった「クルックー」というクレープ屋さんでクレープを食べたり、アップルパイ巡りをしたりもした。弘前はアップルパイタクシーというタクシーが走るくらい、アップルパイが有名だ。

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長勝寺三門へ続く禅林街のライトアップ(筆者撮影)

弘南線の平石では名物の「平石サガリ」という焼き肉を食べ、柏農高校前で降りて立ち寄り温泉に入り、「クレイジーサイダー」というりんごを使ったハードサイダーの醸造所に行って見学したり試飲させてもらったりもした。タクシーで、夜の禅林街のライトアップの中を走ったりもした。

星野リゾートとのコラボ列車も

実質、丸2日弘南鉄道沿線めぐりをしたのだが、探るとまだまだ行ってみたいところがあった。

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「津軽七雪こぎん灯篭列車」(写真:弘南鉄道)

弘南鉄道大鰐線は、休止の発表があった年の冬から、大鰐温泉駅近くにある星野リゾートの宿「界 津軽」とコラボして、「こぎん灯籠列車」を走らせている。りんご列車・きんぎょ列車など、春夏秋は装飾列車が走っていたが、冬のみテーマがなかった。

そこで冬期に「こぎん灯籠」を飾っている「界 津軽」に話を持ちかけたという。しかし大鰐線が休止となると、この「こぎん灯籠列車」もなくなる。

これについて、「界 津軽」の支配人に聞いてみたところ、「弘南鉄道大鰐線の運行休止につきましては、地域の生活に深く関わる重要な出来事であると認識しております。地域の一員として、鉄道旅を楽しみにお越しになるお客様への影響も鑑み、観光の力が地域の経済を後押しするきっかけとならないか、模索することが私たち観光事業者の使命であると考えています」と回答があった。

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中央弘前駅に並ぶこけしねぷた(筆者撮影)

夜の中央弘前駅に戻ると、駅に設置された「こけしねぷた」に明かりが灯っていた。ほんのり照らされた車両とホームが絵になる。列車が走らなくなったら、こんな風景も見られなくなるのだろうか。

硬券の入場券が人気

大鰐線の休止が発表されて以降、インバウンドや鉄道ファンが多く訪れている。彼らに人気なのは、弘南鉄道で販売されている硬券の入場券。発表してから今年3月の段階で2200枚ほど売れているそうだ。

私も大鰐線で記念にきっぷを買おうと思っていたのに、すっかり忘れていた。また弘南鉄道に行かなくてはならない。

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