上野東京ライン「川口停車」次に続く駅はあるか

線路はあるがホームはない, ホーム設置費用は市が負担, 鶴見や新松戸でも「ホーム設置・停車」の声, 川口に次ぐ駅は出てくるか?

京浜東北線川口駅ホームの横を通過する上野東京ラインの列車(記者撮影)

東京都心部を貫いて、東海道本線と宇都宮線・高崎線を直通するJRの「上野東京ライン」。主要な駅のみに停車して高速で走る「中距離電車」の同線に対し、ほぼ同じ区間をこまめに停まりながら走るのが京浜東北線だ。

【写真をすべて見る】JRの京浜東北線と上野東京ライン、湘南新宿ラインの線路が通る川口駅、ホームがあるのは京浜東北線のみ。駅とその周辺の線路はどうなっている?鶴見駅も相鉄・JR直通線のホーム設置を求める声がある

その京浜東北線のみが停車する川口駅(埼玉県川口市)に、上野東京ラインが停まることになる。川口市とJR東日本大宮支社は4月下旬、同駅への上野東京ライン停車に向けたホームなどの整備について協定を締結。今年度以降、調査や設計などを進める予定だ。

市の長年の「懸案」だった中距離電車の停車。同じように、今は電車が通過している駅にホームを設けて停車させようという動きはほかにも存在する。

線路はあるがホームはない

川口市は埼玉県南部に位置し、荒川を挟んで東京都と向かい合う人口約60万人の市。県内でさいたま市に次いで2番目に人口の多い自治体だ。市を代表する駅がJR川口駅。1日の平均乗車人員は約7万4000人(2023年度)で、埼玉県内のJRの駅では大宮駅(約24万4000人)、浦和駅(約8万8200人)に次いで多い。

【写真】京浜東北線と上野東京ライン、湘南新宿ラインの線路が通る川口駅、ホームがあるのは京浜東北線のみ。駅とその周辺の線路はどうなっている?鶴見駅も相鉄・JR直通線のホーム設置を求める声がある

同駅には京浜東北線のほかに、上野東京ラインと湘南新宿ラインの走る線路がそれぞれ2本、計6本の線路が並んでいるが、ホームがあるのは京浜東北線だけ。上野東京ラインなどの電車は高速で通過していく。

市が同駅の課題として挙げるのは、利用者数が県内のJR駅で3番目である一方、利用できるのが京浜東北線1路線のみという点だ。ラッシュ時の混雑に加え、列車の運休や遅延の際には駅舎内や駅前広場に利用者があふれるという。国土交通省が毎年公表している都市鉄道の混雑率データによると、京浜東北線の最混雑区間は川口→赤羽間の150%(2023年度)で、首都圏のJR線の中でも比較的高い。

以前から市は、湘南新宿ラインや宇都宮線・高崎線など中距離電車の停車を求めており、2008年度から継続的にJRや国交相などに対して要望活動を行ってきた。「現市長の就任以降、市としての動きが活発化した」と市の担当者はいう。2022年には、市とJRがホーム増設などの調査について協定を結び、検討を進めてきた。

線路はあるがホームはない, ホーム設置費用は市が負担, 鶴見や新松戸でも「ホーム設置・停車」の声, 川口に次ぐ駅は出てくるか?

川口駅は京浜東北線のみ停車し、手前の上野東京ラインと湘南新宿ラインの線路にはホームがない(記者撮影)

ホーム設置費用は市が負担

停車の対象を上野東京ラインに絞ったのは、「混雑などを考慮したため」(市担当者)だ。湘南新宿ラインが停まれば、現在は乗り換えが必要な新宿方面にも1本で行けるメリットがあるが、同線は朝7~8時台の本数が12本で上野東京ラインの29本と比べて少なく、混雑率も高い。また、同じ線路を埼京線や貨物列車も通る湘南新宿ラインに比べて「緊急時の代替性」も高いという。

市とJRが結んだ基本協定では、ホーム設置や駅の改良に伴う自由通路の整備費用は市が負担する。市はこれまでの想定で、ホームの設置や駅舎改良などの概算事業費は400億円前後と見込んでいる。費用については「国の補助金などが活用できないか検討していく」(市担当者)方針だ。

線路はあるがホームはない, ホーム設置費用は市が負担, 鶴見や新松戸でも「ホーム設置・停車」の声, 川口に次ぐ駅は出てくるか?

線路の西側に広がる緑地と湘南新宿ラインの列車(記者撮影)

上野東京ラインの線路は京浜東北線と湘南新宿ラインの間を通っており、ホームを設置するには湘南新宿ラインの線路を移設して用地を広げる必要がある。ただ、拡幅するスペースは駅西側に市が保有する緑地などがあるため、用地の買収は基本的に不要という。

市は現時点で具体的な開業時期などは示していないが、設計・測量に数年、その後ホームの工事期間に10~12年を要すると見込む。現時点では測量などにはまだ着手しておらず、「今年度以降、随時行っていく」(市担当者)という。工期などを考えると、列車が停車できるようになるのは2040年代になりそうだ。

線路はあるがホームはない, ホーム設置費用は市が負担, 鶴見や新松戸でも「ホーム設置・停車」の声, 川口に次ぐ駅は出てくるか?

川口駅を発車して大宮へ向かう京浜東北線の列車(記者撮影)

ホームを新設して、現在は通過している列車の停車を求めている駅は川口駅だけではない。同駅と同じく京浜東北線しか停まらない鶴見駅(横浜市鶴見区)でも、地元は以前から中距離電車の停車を要望している。また、常磐線の新松戸駅(千葉県松戸市)でも、市が現在は通過している快速の停車について検討を行っている。

鶴見や新松戸でも「ホーム設置・停車」の声

鶴見駅については2014年、地元住民や企業など各種団体の代表者からなる、中距離電車の停車を求める「推進期成会」が発足。鶴見区によると、同期成会は同駅にホームがなく通過している路線のうち、相鉄・JR直通線の停車に向け、市やJRへの要望書提出などの活動を行っているという。

相鉄・JR直通線の鶴見駅停車は、神奈川県や県内自治体などで構成する、鉄道の輸送力や利便性向上を求める団体「神奈川県鉄道輸送力増強促進会議」が毎年実施している鉄道会社への要望にも盛り込まれている。

線路はあるがホームはない, ホーム設置費用は市が負担, 鶴見や新松戸でも「ホーム設置・停車」の声, 川口に次ぐ駅は出てくるか?

鶴見駅付近の線路。京浜東北線はホームがあるが、東海道本線や横須賀線・湘南新宿ライン、相鉄・JR直通線はホームがないため停まらない(記者撮影)

【写真】ホーム設置・停車なるか?鶴見駅付近を走るネイビーブルーの相鉄線の電車

ただ、同要望に対するJR側の回答は例年、「鶴見駅への相鉄・JR直通線の停車については、駅構内にホーム新設スペースがないことから大規模な施設改修が伴うことや、貨物輸送への影響が大きいことなどから関係自治体のご協力が不可欠である長期的な検討課題と考えております」との内容。実現に向けた課題はまだ多そうだ。

常磐線の新松戸駅では、地元の松戸市が現在はホームがなく通過している快速の停車を検討している。市によると、検討を開始したのは「2017年ごろから」(担当者)。現状では要望活動などはしていないという。

同市は3月、2022~2023年度に実施した整備効果などの調査結果を公表。快速が停車すれば、上野駅や東京駅など都心部への所要時間は3分以上の短縮が見込まれるとしている。

調査結果の資料によると、市が2021年にJRに依頼した調査設計では、ホームの新設など駅の改良工事費は約232億円で、施工期間は10年。数値が1を上回ると整備効果があるとされる「費用便益比」は、工事費の高騰などを見込んでも30年間で1.45、50年間で1.80となり、費用対効果があるとの試算だ。

川口に次ぐ駅は出てくるか?

ただ、こちらも課題は多い。調査結果では財源について「鉄道事業である駅等改良工事について、松戸市が補助金を確保し、起債することは現状で見込めない」としている。市によると、これは鉄道事業の補助金は事業者による活用が前提であり、市が主体になると申請などが難しいためという。費用負担なども含め、今後さらに検討を深めるべき点は多そうだ。

線路はあるがホームはない, ホーム設置費用は市が負担, 鶴見や新松戸でも「ホーム設置・停車」の声, 川口に次ぐ駅は出てくるか?

川口駅に停まる京浜東北線と通過する上野東京ラインの列車。ホームを設置して通過列車の停車を求める声は各地にある(記者撮影)

【写真をもっと見る】京浜東北線が停車する鶴見駅と、付近を通過する横須賀線や湘南新宿ライン、相鉄・JR直通線など

ホームのない線路を高速で通過していく列車がこの駅に停まってくれたら――。各地の駅で、そう思っている利用者や自治体関係者は少なくないだろう。一方でホームの新設は多額の費用が必要となり、鉄道会社や他駅の利用者から見れば、停車駅の増加がメリットとならない面もある。今後、川口駅に次いで「ホーム新設・通過列車の停車」が実現する駅は出てくるだろうか。