月収70万円超えも?豪州ワーホリ「高額報酬」の裏側

日本人の出稼ぎ先として人気のオーストラリア。現地就労中の3人に話を聞くと、現地就業の実態が見えてきた(写真:lotus / PIXTA)
「海外で暮らしながら働く」
【写真で見る】オーストラリアで就労中の3人に日々の暮らしを聞いた
コロナ後、そんなライフスタイルが現実味を増しています。なかでも日本人にとって最も「現実的な海外就労先」として注目されているのがオーストラリアです。
オーストラリアは、円安や物価の高騰により、働きながら学べる英語圏の国としてワーキングホリデー、学生ビザでの留学ともに人気です。特にワーキングホリデーは、日本が協定を結んでいる30カ国の中で最も人気の高い国となっています。
最低時給は24.1ドル(約2300円)と、日本に比べておよそ2倍もの高賃金です。ジャパレス(日本食レストラン)やカフェ、ファームといった仕事でしっかり稼げる環境が整っています。
日本のメディアでも一時「出稼ぎ」というワードがフィーチャーされ、月収70万〜80万円を稼ぐアシスタントナース(看護助手)に憧れて渡豪する若者の姿もありました。
ただ一方で「行けばなんとかなる」と考えて、まともに準備もしないまま現地入りし、滞在先やアルバイトも見つけられないままホームレスになる日本人の若者が話題になったりもしました。
現在、オーストラリアの就業事情はどのようになっているのでしょうか。
今回は、実際に現地で働く3人の日本人にインタビューし、それぞれが経験した職場、給与、生活環境、そしてオーストラリアで働くうえでのリアルな壁と希望について聞きました。
現地での「縁」が仕事につながった早川さん
「気づいたら、サッカーが仕事につながっていました」と語るのは、25歳の早川俊介(仮名)さん。

シドニーに滞在する早川さん(仮名)は、サッカースクールの指導者に声をかけられたことが仕事につながった(写真:取材対象者提供)
渡豪前は日本で社会人として働いており、スポーツを通じた交流やチームワークにも長けていた。オーストラリアでは自分の得意なフィールドを生かしながら、行動力で仕事のチャンスをつかんでいきます。
早川さんは、セカンドワーキングホリデービザ(1年滞在を延長できる制度)でシドニーに滞在しています。仕事探しのきっかけは、サッカーだったと言います。ある日の午後、語学学校が終わった後に公園で子どもたちとボールを蹴っていたところ、たまたまサッカースクールの指導者に声をかけられ、そこから人の縁をたどって日本食レストラン(ジャパレス)やケータリング業務の仕事につながっていきます。
「オーストラリアは、行動した人に仕事のチャンスがやってくる国。最初の一歩を出せるかが大事だと思います」
英語には苦手意識があったそうですが、現地での実践を通じて少しずつ聞き取れるようになってきたといいます。時給は27ドル、休日は時給が1.5倍に。生活費は週560ドル(家賃)と高めですが、2つの仕事を掛け持ちすることでバランスを保っていたそう。
「人とのつながり」がキャリアの入り口となった早川さんの体験は、掲示板やサイトから応募するのではなく、リアルな接点からキャリアが広がる可能性を感じさせてくれました。
まとめ
• ビザの種類:セカンドワーキングホリデービザ
• 職種:ジャパレスのキッチンスタッフ、ケータリング業務
• 時給:27ドル(休日は1.25〜1.5倍)
• 家賃:週560ドル(スタジオタイプ)
「住み込みのオペアで英語力UP」という働き方
「語学学校に行くお金がなくても、家族の一員になれば英語は学べます」
学生を終えたばかりの時期にワーホリに挑戦した22歳の佐藤あかねさん(仮名)は、限られた予算内で現地就労を通じて自立を目指していました。英語に自信がない中でも、自分に合った働き方を模索しながら、確実にスキルを伸ばしていきます。
佐藤さんは、セカンドワーホリでケアンズからシドニー、そしてブリスベンへと拠点を移しながら、さまざまな仕事を経験してきました。最初はファーム(農場)で働き、ジャパレスでの接客業を経て、最後にたどり着いたのが「住み込みのオペア」という働き方でした。
「英語が苦手な私にとって、毎日子どもと会話する生活は自然に学べる環境でした」

オペアで子どものお世話をしている(写真:取材対象者提供)
オペアの仕事は、住居・食事が無料で提供される代わりに、週に決まった時間だけ子どもの世話や家事を手伝うスタイルです。支給されるのは週200ドルと控えめですが、支出を抑えられるのが最大のメリットです。「英語環境にどっぷり浸かりたい人には、すごくおすすめです」と語ってくれました。
オーストラリアで外食や交通費の高さに驚きつつも、限られた予算の中で多様な働き方に挑戦した佐藤さん。どんな働き方が自分に合うのかを見つけるための「予行練習」として、オーストラリアは絶好の場所だったといいます。
まとめ
• ビザの種類:セカンドワーキングホリデービザ
• 職種:ファーム、日本食レストラン、オペア(住み込み)
• 時給:ファーム24ドル/ジャパレス18〜19ドル/オペアは週200ドル+滞在費無料
• 家賃:オペア期間中は無料、他は週200〜250ドル程度
「無給インターン」を選んだ元Webディレクター
「お金じゃなくて、経験が今はほしかったんです」
日本では企業のWeb運営やディレクション業務に携わっていた20代後半の石井真帆さん(仮名)。自らのスキルをさらに広げるために、あえて環境を変え、新しい挑戦としてオーストラリアでの生活をスタートさせました。
石井さんは、日本でWebディレクターとして働いていた経歴を持っています。現在は学生ビザでブリスベンに滞在しながら、平日はジャパレスで働き、休日は現地留学エージェントでマーケティング業務のインターンに従事しています。オーストラリアでは、学生ビザ(Student Visa:Subclass 500)でも2週間で最大48時間までアルバイトすることが認められています。インターンは無給ですが、自らのキャリアを「海外でも通用するもの」にアップデートする目的で挑戦しているのです。

お金よりも経験を求めたという元Webディレクター(写真:写真:取材対象者提供)
「日本の職場ではできなかった自由な提案ができて、実力を試せるのが楽しいです」
語学学校での勉強も並行しつつ、オーストラリアという環境を「経験を積む場」にしているという石井さん。ジャパレスの時給は平日29ドル、休日35ドルと高水準ですが、お金のためというより長期的に「次のキャリアへのステップ」に主眼を置いていると言います。
お金よりも「目的と意義」を重視することは、結果的にさらなるキャリアアップへとつながると筆者も考えます。
まとめ
• ビザの種類:学生ビザ(語学学校)
• 職種:日本食レストランの接客、留学エージェントのマーケティングインターン(無給)
• 時給:ジャパレス 平日29ドル/休日35ドル
• 家賃:週250ドル(シェアハウス)
有限なワーホリや留学を活用したキャリア戦略とは
3名のインタビューを通して見えてきたのは、各々のスタイルでオーストラリアでの生活を満喫している20代の若者の姿でした。彼らは出稼ぎ目的でもなく、また本気で移住しようとしているわけでもなく、自分の経験値やスキルを向上させる一環として、したたかに海外就労を取り入れている点が共通していました。
今回の海外就労のスタイルは次の3つに分類されると思います。
1のネットワーク型は、レファレンス採用が重視される海外ならではの方法と言えます。信頼できる人からの紹介は一考に値するとみられますので、人のご縁を活用するのは理にかなった方法と言えます。空き時間に好きなサッカーで地域の子どもたちと交流するという早川さんの行動は、偶然の出来事を積極的に活用してチャンスに変えていく「計画的偶発性理論」と言えるかもしれません。
次に2の現地制度活用型は、その国ならではの就労システムを活用するというもの。特に海外でより長く生活したいという場合は、国ごとの制度を把握したうえで計画的に行動するとより効果があります。
オーストラリアの場合は、セカンドワーキングホリデーという制度があります。もう1年滞在を延長できる制度ですが、政府指定地域にて最低3カ月(88日間)以上の季節労働(ファームステイなど)に従事した証明が必要となります。
佐藤さんはこの制度を活用して、滞在期間を延長したうえ、オペアという制度も活用しているのです。オペアは欧米では認知度の高い文化交流を目的とした海外就労の制度の一つ。住み込みで子どものお世話をすることで滞在費・食費が無料になり、決められた額のお小遣いももらえる制度です。この制度も活用することで滞在費や生活費を賄えるだけでなく、本人が言っていたように英語力の向上やさらには異文化交流も可能になるのです。
最後に3のキャリアアップ型ですが、グローバルなキャリアを目指す場合、海外で働いた経験があるかどうかが明暗を分けます。また海外でホワイトカラーの仕事をするためには、ジョブ型ならではの専門性が求められるのですが、石井さんはWebディレクターの専門性や職業経験が留学エージェントでの海外就労に繋がります。経験を得るためにあえて無給で働き、次のステップにおいて本来自分が就きたい仕事を勝ち取ろうとする石井さんの戦略は理にかなっていると思います。
留学・就業先としてオーストラリアの人気は衰えない
残念ながらオーストラリアの連邦政府の政策として、現在は留学生の数を制限する方向で動いています。ただ、日本人にとっては欧米に比べると常に選択肢のトップに位置していて、その人気はまだまだ衰える気配はありません。
ジョブ型や外国人雇用が進みつつある日本においても海外で職業経験を積んだ若者への期待感が今後さらに高まりそうです。
※本記事に登場する人物名は、すべて取材に基づいた仮名です。