朝6時まで営業! 新宿で働く人たちの元気の源であり続ける「とんかつにいむら本店」の“胃もたれしにくいトンカツ”が生まれた理由とは
昭和の高度成長期、50歳で脱サラ、修行経験なしでいきなりとんかつ店オープン!
1961年にオープンし、新宿・歌舞伎町にある人気とんかつ店「とんかつにいむら」は、店の入れ替わりの激しい歌舞伎町で、60年以上同じ場所でとんかつを提供し続けています。
そして、歌舞伎町ならではなのが、営業時間が翌朝6時までということ。深夜営業で働く人たちが、仕事終わりに出来立てのとんかつを食べられるなんて、さすが繁華街の中のお店です。
【画像】胃袋を満たす大ボリュームのカツカレーを画像で見る(15枚)

メニュー。外国人観光客が多いので、メニュー表記も4ヶ国語に
「元々、祖父が製糸会社を50歳で脱サラしたのがきっかけですね」と話すのは3代目の新村武寛(たけひろ)さん。創業者であり武寛さんの祖父が、これからはとんかつは儲かると信じ、突然会社を辞めてとんかつ店を開業。修行経験ゼロ、可能性に賭けてのオープンです。
それに巻き込まれたのが家族。創業者の奥さん、武寛さんの祖母は、商売が安定するまで、とんかつ店を手伝いつつタバコとパンを販売。睡眠時間4時間で働きます。
さらに当時大学生だった武寛さんの父、2代目は、店の手伝いのため、大学に行く時間がなくなることに。
サラリーマン(50代)が突然会社辞めて未経験のトンカツ店を始めるって…。今でいう、早期退職でいきなりラーメン店、みたいなこと!?
令和の今なら、離婚されてもおかしくない無茶振りです。高度成長期の新宿、すっごい勢いがあったんだろうなぁ。

1〜3階まであり、団体客も受け入れ可能な広い店内。写真は3階のフロア
さらにすごいのは、創業者である祖父の読みは当たって、現在では本店のほか、とんかつ西新宿店、しゃぶしゃぶにいむら本店、しゃぶしゃぶ とんかつにいむら大久保店など支店もある、”新宿でとんかつといえば”、という人気有名店になっていること。先見の明があった創業者、すごい!
そんな「とんかつにいむら」の、行ったらぜひ食べたいおすすめの3品を紹介します。
一番人気メニューは程よくジューシーで旨味の強い「黒豚ロース定食」
看板メニューの一つである黒豚ロース定食。「鹿児島の黒豚のロース肉に、衣は生パン粉、ラード100%の油を用いています。ゴハンとキャベツはおかわりできますよ」。
お米が高騰している今それはありがたい! ちょっと前まではキャベツの価格もすごいことになっていたし。

黒豚ロース定食3500円。ゴハン、お味噌汁、お新香つき
「うちのトンカツは、少し他の店とは違う作り方をするんですよ」と武寛さん。実はここのトンカツ、油で揚げるのはさっと表面だけ。その後オーブンに入れて加熱します。その結果、余分な油が落ちるので、胸焼けがしにくいと評判に。
「おそらくですが、試行錯誤していた祖父のことを見て、色々アドバイスしてくださった方がいたんですね。オーブンで仕上げるという、フランス料理の製法を取り入れたんですよ」
実際に味わってみると、衣はサクッと、そして中はむっちり。旨みを閉じ込めた感がすごい! そして、余分な油が落ちているからなのか、衣がずっとサクサクです。
表面だけ揚げて後からオーブン、家でも揚げ物を作る際に真似したい!
あの『昭和の歌姫』がコマ劇場公演時に毎日取り寄せた「丸ヒレかつ定食」

丸ヒレかつ定食2700円。一口サイズ、球体を半分に割ったような、ころっとした形も愛らしい
ロースと並ぶ人気のヒレカツ。ヒレ肉の塊をカットしたものではなく、球体の肉を半分に割ったような、とても食べやすい形をしています。
「実はこの丸ヒレかつですが、昭和の歌姫とも呼ばれた大スターが、コマ劇場で公演する際、毎日お付きの方が買いに来てくれたんですよ」
歌舞伎町の真ん中にあった新宿コマ劇場。2008年に惜しまれつつなくなりましたが、昭和の大スターたちが公演をおこなう演歌の殿堂でした。なるほど、ここで買えば、あったかいカツを楽屋で食べられたんだろうなぁ。
季節限定がいつからか通年のメニューになった「ロースかつカレー」

ロースかつカレー2800円。ライスは追加料金なしで大盛りにすることもできる
「一般的なカツカレーの場合、揚げてあるトンカツとカレーを注文が入ったらゴハンに乗せてルーをかけて、とすると思うんですが、うちはトンカツの店なので、注文が入ってから揚げます。なので作りたてのカツが乗ったカツカレーが食べられるんですよ」と武寛さん。
カレーのルーはとろっとろで、全ての食材が溶け込んだ、いわゆる具なしカレー。「カツとのバランスを考えた、カツカレー専用のルーですね」。
確かに、程よく辛味がきいていて、豚肉本来の甘味というか旨味としっくりくる。絶妙のバランスです。
ちなみにかつカレーもキャベツのおかわりOK。キャベツの千切りをソースで楽しむかルーで楽しむか。おかわりして2つの味を存分に楽しみたい!

独特のマークは、家紋ではなく、創業者の知り合いの芸術家が作った、60年以上前からのもの。今でも古さを感じさせない
最近では外国人観光客も多いだけではなく、ツアーの団体客も多く訪れるそうで、「新宿のど真ん中で、30人が一気に入れる店ってほとんどないですからね、ここで食事して、それから観光や買い物にいくお客様が多いんですよ」。なるほど。
そして壁に貼られていたのは、アクションアドベンチャーゲーム『龍が如く』の1シーンで、店をバックに登場人物が写っているもの。思いっきり「とんかつ にいむら」って出ちゃっている!
龍が如くの舞台「神室町」のモデルに歌舞伎町がなっているのは知っていたけれど、本当のお店を出しちゃっているとは! ゲーム好きの聖地巡礼の場所にもなっているようです。
「親から子、子から孫にと3代、4代で通っていただくお客様がいたり、また『何十年ぶりに食べに来たよ』と言っていただくお客様もいて、『変わらない味だね』と褒めていただくこともあります。そういう時は本当に嬉しいですね」と店主。
新宿に遊びに来た人はもちろん、新宿で遅くまで働く人たちのお腹もずっと満たしてきた「とんかつ にいむら」。オーブンで仕上げているからこそ、胃もたれせず、歳を重ねても食べられる優しさいっぱいのトンカツでした。