『デュエマ』のYouTube戦略はなぜ成功した? 当事者の声から紐解く独自の文化

開発者デッドマンが語る『デュエマ』×YouTube創成期, 公式リーグ戦「デュエチューブリーグ」始動の狙い, 第5回「UDB」を沸かせた声優界からの刺客, 演者として『デュエマ』を魅せるには? フェアリー選手らの心がけ, 強者たちの共通見解「99%以上がカジュアル勢」

『デュエマ』のYouTube戦略はなぜ成功した? 当事者の声から紐解く独自の文化

竜闘虎争のトレーディングカードゲーム(TCG)戦国時代において、20年以上の歴史を持つ古豪が『デュエル・マスターズ』だ。

相手プレイヤーを守るシールドを全て破壊し、直接攻撃すれば勝利という単純明快なゲーム性。ドラゴンや悪魔、天使とワクワクするモチーフのクリーチャーたち。両面カードに五枚が1つに合体するカード、三枚折りのカード、カレーパンの匂いがする(!?)カードなど、奇想天外なギミック──TCG界でも特異な魅力を放つタイトルである。

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また、YouTubeを介した情報発信/交流の活発さも『デュエル・マスターズ』の特徴

公式チャンネル「デュエチューブ」では新カードの情報解禁、カード開発の裏話や背景ストーリーの解説など、公式ならではコンテンツを積極的に展開。

対して、UUUM所属のシモカワチャンネルやカードゲームショップ・flat-工房、ブロガー・デネブログ、プロプレイヤーのZweiLance選手らを筆頭に、プレイヤー側も『デュエル・マスターズ』を題材にした動画を精力的に投稿。

各々YouTubeというメディアを介し、ファンコミュニティを形成している。

『デュエル・マスターズ』において、ここまで動画文化が隆盛を見せているのはなぜなのか。当事者たちへのインタビューを通じて紐解いていく。

企画/取材/編集:都築陵佑 文:オグマフミヤ

開発者デッドマンが語る『デュエマ』×YouTube創成期

現在、チャンネル登録者数15万人超を誇る『デュエル・マスターズ(以下、デュエマ)』公式チャンネル「デュエチューブ」が開設されたのは、意外にも2021年と最近のこと。

「デュエチューブ」メンバーにして、『デュエマ』開発者のひとりであるデッドマンさんは、立ち上げ期をこう振り返る。

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「もともと、公式としてYouTube上で情報を発信すること自体は10年近くやっていて。僕が開発に加わった2014年ごろには、新商品を使った対戦動画なども公開していました」(デッドマン)

ただ、それらはあくまでも『デュエマ』の販売元であるタカラトミーや原作漫画が連載されている『コロコロコミック』(小学館)のYouTubeチャンネル内の一コンテンツだった。

箱として『デュエマ』の公式チャンネルをちゃんとつくるべき」──デッドマンさん自身は長らくそう考えていたという。その想いは、『デュエマ』20周年記念企画の一環として実現することになる。

「これまでは、新カードの紹介やそれらを使った対戦動画など、“公式側が見せたいもの”だけを発信していたんです。しかし、改めてゼロからYouTubeチャンネルを立ち上げるとなると、ユーザーが本当は何を望んでいるか、試行錯誤しながら見極めなければなりませんでした。なので、立ち上げ初期の動画は、今見ると迷走してるかもしれません(笑)」(デッドマン)

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そもそも、デッドマンさん自身も、『デュエマ』の開発元であるWizards of the Coast社に入社する前は、YouTube上で対戦動画を公開していた有名プレイヤーの1人であった。

「僕が一プレイヤーとして動画を投稿していた十数年前は、YouTube上でカードゲームを取り扱うチャンネルはカードゲームショップさんのものくらいで。僕はその後追いとしてやっていただけだったんです」(デッドマン)

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「しかしここ数年、シモカワチャンネルさんにflat-工房さん、Zweilanceさんらのように、『デュエマ』が好きで『デュエマ』に関する動画を発信してくれる方がどんどん増えていきました。これはもう、本当にただラッキーなことだったと正直思っています。だからこそ、そのラッキーを『デュエチューブ』では活かすべきだと思いました」(デッドマン)

公式リーグ戦「デュエチューブリーグ」始動の狙い

プレイヤー発のYouTubeチャンネルが盛り上がり、インフルエンサーたちが続々と生まれていく。

そのムーブメントを尊重し、「デュエチューブ」ではそうした人気プレイヤーたちをゲストに招いた企画が頻繁に行われている。

「ただ、そうした企画だけを続けていくと内輪での盛り上がりになってしまうので、繋がりを広げるための挑戦として、『アルティメット・デュエマ・バトル(UDB)』や『デュエチューブリーグ』といった企画にも取り組んでいます」(デッドマン)

KAI-YOUもTCG&ホビーチャンネル「GOTCHA!」として出演した「UDB」は参加者応募型の企画。アルティメイターと呼ばれる強豪プレイヤーたちに参加者が挑んでいくというものである。

もう一方の「デュエチューブリーグ」は、2024年から始動した通年企画。強豪プレイヤーたちが中心となって3つのチームを組み、一年を通してリーグ戦を行う。

デッドマンさん曰く、後者の「デュエチューブリーグ」は「『デュエマ』ファンに対して情報発信するだけではなく、『デュエマ』ファンが盛り上がれる場所を新たにYouTube上につくろう」と、チャンネルの一つの柱としてはじめた企画だったという。

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「やっぱり、今は『デュエマ』を遊んでいないけれど、デュエチューブを見てくださっている方たちってたくさんいると思うんです。そういった既存プレイヤーではない視聴者たちも楽しめるもの、熱量を注げるものを増やすことで、全体として『デュエマ』自体も盛り上がり、ユーザーの増加に繋がっていくのではないかと考えています」(デッドマン)

第5回「UDB」を沸かせた声優界からの刺客

5月に公開された第5回「UDB」では、オリジナルのデッキで企画を沸かせたチャレンジャーがいた。YouTubeチャンネル「声優デュエマ部」から参加した菅原雅芳さんだ。

『デュエマ』のアニメシリーズに声優として参加しており、「UDB」では自らが声を担当したキャラクターたちの関連カードを使ったデッキでアルティメイターたちに挑んだ。

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「『デュエマ』のアニメには『VS』シリーズ(2014年~2017年放送)から参加しているんですが、当時から小林由美子さん(切札勝舞、切札勝太など歴代主人公たちの声を担当)の家でキャストたちが集まって『デュエマ』をすることがあったんです。その集まりを『声優デュエマ部』と呼んでいました」(菅原雅芳)

アニメへの出演だけでなく、公式イベントへ自主的に参加するなど、『デュエマ』声優の中でも特に熱心なプレイヤーとして活躍してきた菅原雅芳さん。2025年1月に改めて、YouTubeチャンネルとして「声優デュエマ部」を再始動させた。

「元々は『Project声遊』というチャンネル名でいろんなことをしていたんですが、コロナ禍で休止してしまい、何かまたできることはないだろうかと模索していました。アニメの『デュエマ』も新シリーズになってキャストが入れ替わり、新しい仲間たちと交流する中で、また『声優デュエマ部』を動かすのはどうだろうかと考えたんです」(菅原雅芳)

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チャンネルのコンテンツは、開封動画や対戦動画といったカードゲームチャンネルとしてはスタンダードな内容だが、アニメの声優たちが出演するという唯一絶対の特殊性がある。

大型大会にも参加するなどその本気っぷりもただならないが、なんといっても本人たちが楽しく遊んでいる様子が伝わってくるのが、『デュエマ』コミュニティから愛される一番の要因だろう。

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「みんなで遊ぶことを目的に立ち上げたプロジェクトが元になっているので、『デュエマ』はもちろん、もっといろんなことでも遊んでいきたいと思います。また、今回の『UDB』のような公式の企画にもどんどん参加させていただきたいですし、よりその輪を広げてもっと盛り上げていきたいですね」(菅原雅芳)

演者として『デュエマ』を魅せるには? フェアリー選手らの心がけ

そんな菅原さんたちチャレンジャーを迎え撃つアルティメイターとして、第5回「UDB」に参加したのがリジェ選手、おんそく選手、フェアリー選手、じゃきー選手の4人。

それぞれ、大型大会で上位入賞するなどたしかな実績を持つ強豪プレイヤーであり、YouTubeチャンネルなどで発信を行う『デュエマ』界のインフルエンサーでもある。

ただ純粋にプレイヤーとして勝利を目指すだけではなく、演者として魅せることも求められる動画や配信上での試合について、各々どう考えているのだろうか。

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「ちょっと運が悪かったり、ゲーム展開がうまくいかなかったりした時に悪態をつくとか、普段の大会でしちゃいけないことはしないように気をつけていますね」(おんそく)

「特に『UDB』のような試合をノーカットで届ける企画では、考えるべきところはしっかり時間をとって考えないといけないけど、1ターンに何分もかかってると見てる方も飽きてくるから、プレイを早めようとはしてるかもしれません」(フェアリー)

「それでいうと、ゲーム展開自体も早めにしようと思ってます。時間無制限の試合の場合、ほとんど勝ちが確定した状態でも、あらゆるリスクをケアするために、優位を保ち続けて粘り勝つって方が確実なんです。でも、『UDB』のような企画では、そのプランは選ばず、早めに詰めにいくようにしています」(じゃきー)

動画や配信を見てくれる人たちは、大事な時間を使って見てくれてるわけですからね」(フェアリー)

「逆に、しっかり考えるべき局面ではしっかり時間を使って考えると、それが見所になったりもするんですよ。『この局面は、どういうプレイをするのが最適解なのか』を視聴者のみなさんが考える時間にもなりますし」(リジェ)

「僕は『デュエチューブリーグ』にも出場選手として参加しているのですが、公式リーグ戦ということもあり一戦一戦プレッシャーが凄まじく、どうしてもプレイに時間がかかってしまうんです。そこは、自分の中でも改善すべき点だなと思っています」(おんそく)

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強者たちの共通見解「99%以上がカジュアル勢」

徹底して、演者として“魅せる側”の視点を持っているのは頼もしい。その上でシーンを引っ張るトップランナーとして、新規層へのアプローチについてもそれぞれが異なる哲学を持つ。

「カードをプレイする際、どんなに有名なカードでも効果をちゃんと説明するのは大事です。ある程度やってる人なら当たり前に知ってるようなカードの場合でも、見てる人はそうじゃない場合は当然ありますから」(リジェ)

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「俺が出演しているアーチーchで、構築済みデッキそのままで競技層向け大会に参加する企画をよくやってるのは、新規層へのメッセージでもあるんです。もちろん自分でデッキを組んで参加するのも楽しいけど、スターターそのままで参加してもいいんだって思ってもらいたい」(じゃきー)

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「フェアリーchはサムネイル画像にデッキを組むのに必要な金額が書いてるんですが、あれは既存層にも新規層にも役立ってるのかなと思ってます。これから『デュエマ』をはじめようと思った人も、並んだサムネイル画像を見て、自分の予算感にあったデッキを探せるでしょうし」(フェアリー)

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「大会を運営する立場としては、試合の勝ち負け以外の部分でも楽しんでもらえるようには意識してます。もちろん勝負を楽しむ場ではあるんですけど、負けて帰るだけじゃつまらないから、勝敗とは関係ない基準で貰えるお楽しみ賞を用意したり、サイドイベントを用意したり」(おんそく)

その上で、『デュエマ』×YouTubeのフィールドで戦う同志たちは共通した一つの考えを持っていた。それは視聴者のほとんどが非競技プレイヤー=カジュアル勢であるということ

「視聴者の99%以上がカジュアル勢なんじゃないかな」(じゃきー)

「そうだと思う。その上で、フェアリーchの場合は、ある程度『デュエマ』を遊んでいて、もっと知りたいって人に役立つようなチャンネルを目指していて。カジュアル勢には向きつつも、完全に初心者向けかというとそうではないんですよね」(フェアリー)

新規層に向けたものなのか、カジュアル層に向けたものなのか、競技プレイヤーに向けたものなのか、それぞれチャンネルの立ち位置や役割を分担しているところはありますね。細かい効果の説明なしで、ひたすら対戦だけしてるチャンネルだってありますし」(リジェ)

「競技プレイヤーに向けるなら、それもアリですからね。視聴者の層が分かった上で、みんないろんな努力をしてると思います」(おんそく)

開発者デッドマンが語る『デュエマ』×YouTube創成期, 公式リーグ戦「デュエチューブリーグ」始動の狙い, 第5回「UDB」を沸かせた声優界からの刺客, 演者として『デュエマ』を魅せるには? フェアリー選手らの心がけ, 強者たちの共通見解「99%以上がカジュアル勢」

20年以上の歴史の中で、常に挑戦を続けてきた『デュエル・マスターズ』。

その果てなきフロンティアスピリットと、同じく開拓者たちの熱き情熱によって切り開かれ、今なお新たなプレイヤーたちの挑戦のフィールドとなっているYouTubeの共鳴は、ある種必然だったのかもしれない

20年の歴史が築き上げた財産を活かし、その先へ──『デュエル・マスターズ』の挑戦は終わらない。