日本一のマルゲリータの店が東京・赤坂で復活! 平野紗季子×柳原照弘が語る味な空間のつくり方。

June 16, 2025 | a wall newspaper | photo_Kazufumi Shimoyashiki text_Hikari Torisawa

ピッツァイオーロ鈴川充高の店〈PER TE〉が東京・赤坂にやってきた! 究極のピッツァを味わうための店づくりのレシピとは?

プランニングと空間デザインで協働したふたりが、「ウォームで心地よい」と声をそろえる。L字のスペースに客席、横に広がる厨房、ワインセラーが。カウンター席、個室もある。

《〈ペルテ〉の不動のセンター“マルゲリータ500”は、ほぼ飲み物だ》とは平野紗季子がかつて自著に書き付けた〈ペルテ〉讃歌の一説。そのマルゲリータを焼く鈴川充高は、2018年にナポリピッツァ職人世界選手権日本大会で500点満点を叩き出したピッツァイオーロだ。鈴川が名刺がわりのピッツァとイタリア郷土料理を出す店が東京・赤坂にオープンした。空間デザインを手がけたのは柳原照弘が率いる〈Teruhiro Yanagihara Studio〉(以下〈TYS〉)。新店のクリエイションにかかわったふたりに話をきいた。

「日本で1番好きなピッツァが鈴川さんの焼くもので、千葉のお店にも通っていたので、プロジェクト立ち上げの前段階からお店のオープンまで並走できて光栄でした。新店の空間設計を考えるにあたって真っ先に浮かんだのは柳原さん。彼が手がける空間は、壁がかじりたくなるほどおいしそう……と常々思っていて。素材への感受性の高さに、鈴川さんと共通するものを感じてお声がけしました」と、プランニングに参画した平野。

千葉・稲毛の店でも愛用していたピッツァ窯に向き合う鈴川充高。新店には熾火料理用の薪窯も新設した。

鈴川の名を世界に知らしめたマルゲリータ500。

左官仕上げの天井と壁、厨房と客席をシームレスに繋げる煉瓦の壁と煉瓦の床。この空間で、粉と水を練り、火で焼き上げるピッツァが供される。

「土と漆喰に小麦藁を加えているんです」と、意外な材料も顔を出す。

「左官にも煉瓦にもレシピがあり、工程はピッツァの生地作りにも通じるものがあります。壁の煉瓦は焼き上げたあとにスライスするように切って内側を見せて貼りました。床を覆う煉瓦は材料と配合を変え、ピッツァのように焼きムラがつくよう焼成しています。これまで自分の仕事を“おいしい”という形容詞で考えたことはなかったのですが、平野さんの言葉に触れて、料理も空間も、コントラストによっておいしそうな、温かみのあるものになるんだなと改めて思いました」(柳原)

椅子の向きによりさまざまな人数に対応。プライベートスペースも生まれる。

フロア中央には稲妻のように天板をずらして配置したテーブルが鎮座する。2022年に柳原がデンマークのブランド〈& Tradition〉の展示で発表した《エクレール》。「料理をおいしくする距離感」を考察するところから生み出されたテーブルがレストランに導入されるのは世界で初めて。最大10人で囲むことができ、1人、2人でも孤独感とは無縁の形状で、食の時間を楽しく演出する。

壁には長島伊織の絵画。

個室には手嶋大輔のオブジェが。

〈TYS〉デザインの照明も左官仕上げ。

新生〈ペルテ〉のロゴも〈TYS〉が手がけた。コースターは、薪が燃えて炭になり、灰に変化する時間を内在させたデザイン。

卓上に10品のコースが次々運ばれる。マルゲリータ500にはじまり、ピッツァはマストゥニコーラ、マリナーラ、カルツォーネの4種類。ホワイトアスパラやメカジキなど季節の野菜や魚介は熾火焼きに。ランブレドット、牛タン、手延べしたタリアテッレほか、煮込みやパスタなどの料理は、イタリアの郷土料理を知り尽くした小池教之が担当。20年ぶりに鈴川とタッグを組んで厨房に立つ。

千葉の店で最後のピッツァを焼いた灰を釉薬に用いた十場あすかの丸皿、ヴィンテージの銀のカトラリー、真鍮で作ったカトラリーレスト、3色のコースター。テーブルウェアの制作やセレクトも、「鈴川さんと小池さんの哲学と、そこから生まれる料理を、とても近いところで見て、思いを共有しながら店を作っていくのが楽しかった」と語る柳原が主導した。

「窯の火を眺められるウォームな空間で、同じテーブルについた人たちと鈴川さんのピッツァをシェアして、小池さんの郷土料理を頬ばる。火を分かち合うという根源的な幸せを味わえるレストランになったはずです」(平野)

〈ペルテ〉 10品19,800円のコース。17時30分と20時30分の一斉スタートで提供する。いずれも予約専門サイトOMAKASEから要予約。東京都港区赤坂2-12-33 赤坂永楽ビル1F TEL 03 5545 5255。17時30分~23時。日曜・月曜休。

柳原照弘

デザイナー。〈Teruhiro Yanagihara Studio〉主宰。空間設計からプロダクトデザイン、ブランドのディレクションまで、国や文化の境界を越えたプロジェクトを手がける。

平野紗季子

フードエッセイスト、フードディレクター。〈(NO) RAISIN SANDWICH〉代表。近著に『おいしくってありがとう 味な副音声の本』『ショートケーキは背中から』。