ウーバー配達員「マック前から消滅」意外な真相

マクドナルドの前で待機するウーバー配達員の姿をあまり見なくなった。いったいウーバー配達員はどこに消えたのか?(筆者撮影)
マック前に座り込むウーバー配達員が消滅したワケ
ここ最近、マクドナルドの前で座り込んだり、たむろするウーバー配達員の姿を見なくなった。
【画像】常識がなさすぎる…筆者が目撃した「トンデモ配達員」
お地蔵様のように動かないことから「マック地蔵」と呼ばれた彼らだけでなく、お世辞にもカッコイイとは言えない四角いバッグ(一部の方から「負け組ランドセル」と呼ばれている)を背負い、街中を走り回る配達員の姿もあまり見なくなった。
いったいウーバー配達員はどこに消えたのか?

お地蔵様と配達用バッグ(著者撮影)
私は2020年からウーバー配達員として働いている。公園のベンチや飲食店の周りをグルグルするなど、配送依頼がくるのを「外」で待っていたのは去年まで。
2025年に入ってから、私は外には出ず「家」で配送依頼がくるのを待っている。
そんな配達員は私だけではないようで、Xで検索すると「ウーバー注文こないから自宅地蔵継続」「自宅で地蔵して注文鳴ったら行くわ」「自宅で鳴るまでのんびりしよー」といった投稿を数多く見つけることできる。どうやら最近のウーバー配達員は、自宅で巣ごもりしている人が少なくないようだ。
なぜウーバー配達員は「マック地蔵→自宅地蔵」にスタンスを変化させたのか。これには複雑なワケがある。
「デリバリー離れ」追い込まれた配達員の奇策「家で待つ」
かつてマナーの悪い配達員が「地蔵」をしていた理由はシンプルに一つ。飲食店の近くで待機している配達員ほど、配送依頼がくる頻度が高かったから。
ウーバーの配車は機械が行っている。注文のあった飲食店から50メートルも離れていない配達員Aと、300メートル離れている配達員Bがいた場合、依頼は配達員Aに振り分けられる傾向があった。配送効率を考えたとき、この配車に合理性があることは言うまでもない。
ウーバー配達員の仕事は時給制ではない。こなした仕事の量によって決まる。1件でも多く仕事を取りたい配達員が、まるで狩人のような鋭い眼差しで、虎視眈々と獲物を狙っていたのが「マック地蔵」の正体だった。つまり配達員同士で、仕事の奪い合いが起きていた。

マックの配送依頼は筆者の体感値で、ウーバーの仕事の中で一番多い(著者撮影)
ところがどっこい。コロナによる自粛制限が解除され、デリバリー需要が減った。さらに近年のインフレ、物価高により「デリバリー離れ」の状況が深刻化している。
今のウーバーは昔(コロナの頃)と比べると1/3程度しか稼げない。割のいい仕事から割のよくない仕事へ……。ここ最近は時給換算すると400~500円になることや、1時間の内に1件も仕事がこない「時給0円」の時間帯も珍しくなくなった。
これは雨の日も同じで、例えば私は2025年6月の雨天時、2時間以上も連続で、配送依頼がゼロだったことがある(このときは虚しい気持ちに襲われた)。
待っても待っても配送依頼がこない今、わざわざ屋外で待つ理由などあるだろうか。エアコンの効いた室内でゲームやテレビを楽しみながら、ダラダラと待っていたほうがよっぽど生産的だろう。その方がQOL(Quality of Life)も高くなる。
「外で待とうが家で待とうが、配送依頼の数に大差はない」
「自宅地蔵をして、もし依頼があればラッキー」
「いい条件の仕事が来るまで、自宅でのんびり過ごそう」
このように考える配達員が増加した結果、自宅地蔵する配達員の数が増えたのだろう。そしてマクドナルドの前からウーバー配達員が消滅した。
しかし自宅地蔵は、残念ながらサービス利用者からするとデメリットが多い。
「ウーバー遅すぎ」は今後加速していく?
当たり前の話だが、配達員が飲食店へ移動する時間が長くなれば、その分だけお届け先に到着する時間も長くなる。出来立ての料理を提供する頻度も減るだろう。サービス利用者からすると、配達員の自宅地蔵にメリットはない。
SNSの投稿には「なんだか最近ウーバー来るのが遅い気がする」「到着予想時間を1時間超えてるんだけど」「配達員が動かない」など、サービス利用者からの不満の声が確認できる。
これは私の推測だが、自宅地蔵は「配達員が出発するまでの時間」も要する傾向にあるのではないか。
例えば私の場合、自宅マンションで待機中に配送依頼があった際、駐輪場に向かうまでに2~3分ほどの時間を要している。エレベータを待つ時間など、外で待機しているときと比べてどうしても時間がかかってしまうのだ。
(誰もいないことを信じたいが)もしかしたら配達員によっては「今ゲームがいいとこだから」「野球中継が盛り上がっているから」「とりあえず歯を磨くか」といった社会常識に乏しい行動をする者もいるかもしれない。

先日の雨の日、筆者が目撃した光景。さすがに常識が足らなすぎる(著者撮影)
配達員の動き出しの悪さについては、ウーバー運営も何かしらの問題意識を抱いているようだ。その証拠に、ウーバーでは2025年4月7日から「配達リクエストの再依頼システム」の導入が行われた。
このシステムは配達員が配送リクエストを受託後、ピックアップ場所への移動が確認できない場合(事前に配達員に通知したうえで)、その配達リクエストを他の配達員に再依頼する仕組みだ。このシステムの導入により、予期せぬ配達遅延を防ぎ、よりスムーズな配達環境を実現するという。
再依頼を防ぐため、配達員側に特別な対応は必要ないそうだが……。だとしたら、いったいなぜこのシステムを導入したのか。謎は深まるばかりである。

配達員に通達されたメール。名探偵コナン君に推理をお願いしたい(著者撮影)
可能なら屋外で待機したくない配達員の本音
配達員向けの「よくある質問」には、再依頼を防ぐための方法として下記3点が挙げられている。
・配達の準備が整ってから配達リクエストを受託する
・配達リクエストを受け入れたら、とにかく早く店舗へ出発する
・不要な寄り道は嫌だ(?)
前述した自宅地蔵の問題点と、ウーバー運営の回答は矛盾しないように感じる。もしかしたら想像以上に、自宅待機している配達員の数は多いのかもしれない。

「よくある質問」のスクショ。自宅地蔵に困っている内容にも読めるが…(著者撮影)
サービス利用者やウーバー運営の本音としては、配達員に自宅ではなく外で待機してほしいのだろう。
配達員が自宅待機を選ぶのは、メリットが多いから
しかしウーバーの働き方の醍醐味は、好きな時に好きな場所で働けるという「自由さ」だ。配達員はこの自由さと引き換えに、不安定な収入や保障のない雇用形態を受け入れている。
配達員の立場からすると、屋外での待機は不便な点が多い。例えばトイレ問題。自転車やバイクを路駐するわけにはいかない。公衆トイレは石鹸が置いてないケースが多いため(なにより人の目が気になるため)、手洗い用の石鹸が置いてあるトイレを探す必要がある。
季節ごとの問題もある。例えば春は花粉症の私にとって、屋外で過ごす時間は地獄でしかない。夏は体力を奪われるし、下手をすると熱中症になる。冬は肌も唇もカサカサ、寒くて風邪を引きそうになる。今の季節だと「雨」「太陽」「蚊」の存在が厄介だ。

芦屋駅前のベンチ。雨風を防ぐことはできるが、蚊の襲撃を防ぐことはできない(著者撮影)

素晴らしい景色だが、太陽からの攻撃により体力を奪われる。汗も止まらない(著者撮影)
しかし屋外待機で一番ツライのは……世間からの冷たい眼差しで決まりだろう。ウーバー配達員のことを「負け組ランドセル」と揶揄する人がいる通り、私たちは街を歩いているだけで、まるで刃のような冷たい視線を向けられることがある。
清潔感のない容姿をしていたり、道端で煙草を吸ったり……。マナーの悪い配達員が一定数混じっていることもあり、世間からの厳しい評価は「仕方ないのかな」と思う部分はあるけれど……。
私たち配達員が安心して、待機できる場所はいったい何処にあるのか。配達員なりに出した答えが「自宅地蔵」という現象につながっている部分はあるのかもしれない。
インフレの今、ウーバーというインフラは持続不能?
コロナによる外出自粛が推奨されていた頃、私たち配達員は街中を走り回り、曲がりなりにも社会のインフラとして機能していた。
しかし誰もが気軽に外を出歩けるようになり、デリバリー需要は大きく減少した。そして今、インフレに伴う国民の生活苦により、デリバリー控えが発生。配達員がステイホームを選択せざるをえなくなっている。
誰しもご存じの通り、ウーバーの仕事は本業ではなく、副業に最適な働き方だ。一生懸命バリバリ稼ぎたい人より、スキマ時間にゆるく続けられる人のほうが細く長く、生き残りやすいという構造がある。
過疎化した地域のインフラを維持することが難しいように、社会状況(外的環境)が大きく変化した今、ウーバーイーツという名のインフラを維持することが難しくなっている。
弱肉強食の真逆「強肉弱食」のあり方そのものが、今問われている。