JR東「新たな夜行特急」はJR西「銀河」と何が違う?

全席がグリーン車個室タイプ, 先輩格はJR西日本「銀河」, 食堂車はないが「食事」はどうなる?, 昼間を走る可能性、そして料金は?, 新たな「夜行列車ブーム」は来るか

JR東日本が導入する「新たな夜行特急列車」のイメージ。E657系特急電車を改造する(画像:JR東日本)

豪華寝台特急「カシオペア」の完全引退と呼応するかのように、JR東日本は6月10日、新たな夜行特急列車を2027年春に導入すると発表した。

【よくわかる写真】JR東日本の「新たな夜行特急」はどんな列車になる?JR西日本の「トワイライトエクスプレス銀河」やJR九州の「36ぷらす3」など、JR他社の新たなコンセプトの夜行列車・観光列車のインテリアと比べてみると…

運行エリアは首都圏と北東北を結ぶ区間など。夜に都内を出発して翌朝に青森や秋田に到着するといった行程をJR東日本は想定する。かつての寝台特急は上野―青森間を9時間くらいで結ぶものもあったが、新たな夜行特急はもう少し時間をかけて移動するようだ。それはできるだけ早く目的地に着くのではなく、車内での滞在を楽しんでもらう、つまり「乗ること自体が目的となる列車」というコンセプトに基づくものだ。

全席がグリーン車個室タイプ

車両は新造ではなく、常磐線特急「ひたち」「ときわ」で使われているE657系を改造する。E657系のデビューは2012年で比較的新しいので、改造後は10年、20年と長期にわたる活躍が期待できる。また、E657系は交流・直流両方に対応しているので東日本エリアの電化区間は基本的にどこでも走れる。

【写真】JR東日本の「新たな夜行特急」はどんな列車になる?JR西日本の「トワイライトエクスプレス銀河」やJR九州の「36ぷらす3」など、JR他社の新たなコンセプトの夜行列車・観光列車のインテリアと比べてみると…

10両1編成で全席グリーン車個室タイプの座席に改造する。1〜2人用のプレミアムグリーン個室、1〜2人用および3〜4人用のグリーン個室が設けられる。1号車と10号車がプレミアムグリーン。2〜4号車と6〜9号車がグリーン。5号車はラウンジとして活用される。

プレミアムグリーンやグリーン個室は首都圏と伊豆半島を結ぶ特急として2020年から運行開始した「サフィール踊り子」で導入済み。高級感あふれるインテリアが高い人気となっている。新たな寝台特急のインテリアも大いに期待できそうだ。

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プレミアムグリーン個室のイメージ(画像:JR東日本)

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2人用グリーン個室座席使用時のイメージ(画像:JR東日本)

JR東日本は新たな夜行特急について「寝台列車カシオペアの代替ではなく、夜行列車として新たな旅の楽しみ方を提案させていただく」と説明する。カシオペアの運行開始は1999年。シティホテルを思わせる洗練された客室のデザインが特徴的で、発売開始と同時にきっぷが売り切れるほどの人気ぶりだった。2016年に寝台列車としての定期運行を終了し、その後は旅行商品向け団体専用列車「カシオペア紀行」として運行してきたが、それもいよいよ終焉を迎える。

先輩格はJR西日本「銀河」

新たな夜行特急は寝台列車ではないので浴衣やアメニティグッズの提供はない。シャワーも設置しない。しかし、どの個室もフルフラットに対応しており、横になってくつろぐことができる。

こうした新しいタイプの夜行列車は、JR西日本が先輩格だ。2016年11月に豪華寝台列車「TWILIGHT EXPRESS(トワイライトエクスプレス)瑞風」の運行詳細を発表した際、「瑞風よりも気軽にご利用いただける新たな長距離列車を導入する」という方針を打ち出した。

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JR西日本の「WEST EXPRESS銀河」(記者撮影)

そして、関西圏の新快速などに使用された117系を改造して特急「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス)銀河」が製造され、2020年9月に運行開始した。季節ごとに西日本エリアのさまざまな区間を走り、現在は京都と下関の間を往復する。8月下旬からは京都と新宮を結ぶ紀南コースを運行する。

ウエストエクスプレス銀河は6両編成で、グリーン車と普通車が設定されている。1号車はグリーン車、2号車は一部に女性席もある普通車指定席でリクライニングシートのほかに昔の寝台車のような「ノビノビ座席」を設けた。3号車はコンパートメント、リクライニングシート、フリースペースから構成される普通車指定席、4号車は1両丸ごとフリースペース、5号車は普通車指定席のノビノビ座席、6号車はグリーン個室とフリースペースという構成だ。

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「ウエストエクスプレス銀河」の普通車指定席「ノビノビ座席」(記者撮影)

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「ウエストエクスプレス銀河」のグリーン車指定席「ファーストシート」(記者撮影)

寝台列車ではないが、フルフラット可能な座席があったり、ブランケットなどが提供されたりしており、横になって眠るニーズに対応する。JR東日本の新たな夜行特急についても「詳細は今後考えていきたいが、シーツのようなものを用意する予定はある」と担当者が話す。

食堂車はないが「食事」はどうなる?

なお、カシオペアは食堂車が設置されていたが、新たな夜行特急には食堂車は設置されない。「食事はお持ち込みいただくことを想定しているが、簡単な軽食くらいなら提供することを検討している」(JR東日本)。5号車のラウンジに無人コンビニを設置して飲料や軽食を販売することを想定している。

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「新たな夜行特急列車」の5号車に設けるラウンジのイメージ(画像:JR東日本)

ウエストエクスプレス銀河も食堂車はないが、ユニークなのは深夜の駅の停車期間中に駅の外で夜食を取れる時間を設けていることだ。昨年の紀南コースでは和歌山駅着が23時42分着で出発は0時40分。乗客はその間に駅近くの店で和歌山ラーメンを食べることができた。そのラーメン店は銀河運行日に限り営業時間を延長しているのだ。

JR東日本でも同様のことができないか尋ねてみたら、「ルートがまだ決まっていないのでこれから」とコメントしたが、「お客様のニーズに合わせて変化していくものなのかもしれない」とも話していた。途中下車して地域の素材を使った夜食を食べて、その感想を車内で語り合う。旅の楽しみも増えるし、地域の観光振興という観点から十分ありうる施策だと思う。

紀南コースは京都から新宮に向かう列車は夜行だが、新宮から京都に向かう列車は昼間の運行となる。ウエストエクスプレス銀河は昼間の乗車も考慮しており、長い乗車時間を飽きることなく快適に過ごしてもらいたいという狙いから、車内にはフリースペースが至るところに設けられている。

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「ウエストエクスプレス銀河」のフリースペース(記者撮影)

昼間を走る可能性、そして料金は?

ウエストエクスプレス銀河のデビューとほぼ同時期の2020年10月には、JR九州が「36ぷらす3」という観光特急を運行開始している。同社の主力特急として活躍した787系を改造した車両が用いられ、看板の豪華寝台列車「ななつ星 in 九州」のようなゴージャスな車内空間が売り物だ。

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JR九州の観光特急「36ぷらす3」(記者撮影)

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「36ぷらす3」のグリーン個室(記者撮影)

ただ、この車両は昼間の走行を想定しており、夜行の需要は考えていない。その理由についてJR九州は、「より気軽に九州を体感しやすいよう、車内泊は行わず1日単位でご乗車いただけるプランとした」と説明する。「目的の土地でご夕食を取り、ご宿泊いただくことも、九州を知っていただけるために貴重な体験だと考えている」。

ウエストエクスプレス銀河や36ぷらす3の例も考慮してか、JR東日本の新たな夜行特急も「メインの使い方は夜行の長距離移動だが、昼間に近場を走るニーズもあると思う」という。ゆったりと寝そべりながら車窓を流れる景色を見るのも格別だろう。

さて、気になるのは新たなる夜行特急の価格だが、サフィール踊り子のプレミアムグリーンやグリーン個室の料金は通常のグリーン料金の体系とは異なる。そのため、すべて個室タイプの新たな夜行特急のグリーン、プレミアムグリーンの料金は新たに設定される可能性がある。

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「サフィール踊り子」のプレミアムグリーン席(記者撮影)

JR東日本の担当者は「新たな夜行特急の首都圏―北東北間のグリーン個室利用時の運賃・料金は新幹線のグリーン利用時、プレミアムグリーン個室利用時の運賃・料金は新幹線のグランクラス利用時よりも同じか少し高い料金をイメージしている」としている。

新たな「夜行列車ブーム」は来るか

東京―新青森間の新幹線「はやぶさ」でグリーン車を利用した場合の運賃・特急券(通常期)・指定席グリーン券の合計は2万3540円。同じくグランクラス(飲料・軽食あり)を利用した場合は3万0540円。このレベルの価格体系になりそうだ。新たな夜行特急は交通費だけでなく宿泊費も料金に含まれている。夜に新幹線で青森に向かい青森市内のホテルに宿泊する場合のホテル代を考えれば、決して高くはないはずだ。

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近く完全引退する予定の寝台特急「カシオペア」(写真:JR東日本)

JR西日本は、ウエストエクプレス銀河の2024年の利用状況について「京都と新宮を結ぶ紀南コースの乗車人数総計は約3000人、乗車率は95%と過去最高だった」としている。東京と出雲市・高松を結ぶ寝台特急「サンライズ」も相変わらずなかなか予約が取れない人気ぶりだ。

北へ向かう寝台列車は「北斗星」「トワイライトエクスプレス」に続き、カシオペアも姿を消すが、その記憶を新たな夜行特急が継承する。ひょっとしたら、新しい時代にマッチした夜行列車ブームがやってくるかもしれない。