「セリフとは思えないほどリアル」梨園出身女優も賞賛された映画『国宝』 〝ウラ〟の見どころとは?

興行収入は31億円を突破。まだ伸びそうだ

邦画実写では今年最大のヒット作に

6月6日に公開された俳優の吉沢亮(31)主演の映画『国宝』(李相日監督)が、公開24日間で累計231万人の動員と興行収入32億円を突破、’25年公開の邦画実写No.1(※興行通信社調べ)となった。最終的に興収50~60億円を見込める大ヒットとなっている。

映画は吉田修一の原作小説を映画化。小説執筆時の取材にも協力していた中村鴈治郎(66)が歌舞伎指導を担当した。吉沢や横浜流星(28)に教えるだけでなく、楽屋に置いてある小物や、舞台、客席の雰囲気まで、すべての歌舞伎シーンを監修。李監督とともにリアルな歌舞伎の舞台の映像美に仕立て上げた。中村は上方歌舞伎の大物俳優役でも出演している。

主人公は任侠の一門に生まれた立花喜久雄(吉沢)だ。15歳のときに抗争で父を亡くし、天涯孤独となる。喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺謙・65)は彼を引き取り、喜久雄は歌舞伎の世界へ飛び込むことになる。半二郎の跡取り息子の俊介(横浜)と兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、喜久雄は花井東一郎、俊介は花井半弥として歌舞伎デビュー。互いに切磋琢磨し芸に青春を捧げるのだが……。

今作で半二郎の妻・幸子を演じているのが寺島しのぶ(52)だ。寺島といえば、父は人間国宝の七代目尾上菊五郎(82)で母は女優の富司純子(79)。弟は八代目尾上菊五郎(47)で弟の息子は六代目尾上菊之助(11)、自身の息子は尾上眞秀(12)として舞台に立っている。歌舞伎の名門『音羽屋』に生まれた寺島は、今作の主要キャストの中では唯一、歌舞伎界の関係者だ。どうやら、ほかの作品よりも思い入れが段違いに強かったようだ。

「4月23日に都内で行われたPRイベントに寺島さんも出席しました。その際、『役者というよりスタッフの一部のような感じで、不思議な体験でした』と撮影現場を振り返りました。さらに、寺島さんは『歌舞伎は世襲なので。小説を読んだときは夢のある物語だなと思いました』と、歌舞伎関係者ならではのリアルな感想を語っていた。渡辺は『結構厳しい指摘があった』と、寺島が李監督に対してもアドバイスしていたことを明かしました」(イベントを取材した記者)

6月24日にYouTubeの『東宝MOVIEチャンネル』に同作のPR動画がアップされた。その動画でインタビューを受けた寺島は、吉沢と横浜について《本当にやれるだけのことはやった。本当にボロボロになるまでやっていた。歌舞伎役者でも難しいことをやり切った2人は凄いです》とその演技を絶賛。作品について《『歌舞伎界もこうなりゃいいのにな』って、そんな感じはしますね。世襲も大事だけど、スターが出てきたら育てていこうという》とし、《そういうふうになったら、歌舞伎界も変わっていくんじゃないかなと思いますね》と語っていた。

「女性たちの物語」の一面も

「自身は女性なので『音羽屋』の正統なお世継ぎは弟で、そのお世継ぎも弟の息子。自身の息子は、今後、弟の息子より人気が出ても将来的に『菊五郎』の大名跡を名乗ることはできません。

劇中では夫が事故で入院した際に、代役に息子の俊介ではなく喜久雄を指名した場面や、夫が大名跡を襲名しようとした際に、自身の名跡を喜久雄に襲名させようとしたときのやり取りは、とてもセリフには聞こえないほどのリアリティーがありました。『梨園の女たち』の本音を代弁したのでしょう」(演劇担当記者)

映画批評家の前田有一氏に、本作のヒットの理由を聞いた。

「東宝が予算をかけたことや、豪華キャスト、とくに吉沢亮の気合の入った演技などがまず挙げられます。また、メディアで目にしているけど、実際にはよく知らない歌舞伎の世界の裏側という新鮮な題材をリアルに取材しているところも、観客の目を惹いた理由でしょう。

現在のマーケットは本物志向です。CGが全盛で、どんな映像でも表現できる時代だからこそ、トム・クルーズのアクションのような〝本物〟がウケる。『国宝』には歌舞伎を本格的に描いた、テレビでは見られない映画ならではのものがあったということですよね。

確かに寺島さんもよかったです。本物の世界を、身をもって知っている方ですからね。この映画は男性が主人公なんですが、歌舞伎という独特の芸の世界で犠牲になっている女性たちの物語でもあると思うんです。彼女が渡辺謙さんの奥さん役で出ているのはその表れの一つだと思います。出番は多くありませんが、見上愛さん、高畑充希さん、森七菜さんなどの女優さんたちの演技もすごくいいんですよ」

まだまだヒットしそうな『国宝』だが、すでに鑑賞した人も女性たちに注目してもう一度見てみても面白いかもしれない。

 

6月23日の大ヒット御礼舞台挨拶にて。6月6日の公開初週から3位→2位→1位とじりじりとランキングを上げた

大ヒット御礼舞台挨拶で吉沢は「非常に僕自身もぐっとくるものがあって、うれしかったです」と喜びをかみしめていた

6月6日の初日舞台挨拶では李相日監督と12名の豪華キャスト陣が出席した(映画公式X@kokuhou_movieより)