映画「鬼滅の刃」新作迫る!王者「コナン」超えなるか

今年最大の注目作である『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。今年No.1ヒットとなっている劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』の興行収入を超えられるかが、ひとつの注目点になりそうだ(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
今年最大の注目作であり、スーパーヒットの期待が高まる『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が、夏休み興行の本番となる7月18日からいよいよ公開される。
【画像19枚】『鬼滅の刃』の映画最新作。スーパーヒットの期待が高まる本作の雰囲気はこんな感じ!
大人気シリーズ『鬼滅の刃』の最終決戦をうたう3部作の第1章となる本作は、どこまでのヒットになるのか。
2020年10月公開の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、興行収入404.3億円と国内歴代興行収入1位の記録を樹立。その後、劇場版としては2作のワールドツアー上映作品をはさみ、本作は5年ぶりの新作となる。
今年のNo.1ヒットとなっている劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』(興収150億円前後)を超えることができるかが、ひとつの注目ポイントになりそうだ。
公開間近!大人気の『鬼滅の刃』を振り返る
まず、今回の劇場版3部作第1章までの『鬼滅の刃』シリーズの流れを振り返る。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』7月18日全国公開(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
原作の漫画『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴・著)は、2016年2月から2020年5月まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載されていた。
2019年4月から9月に最初のテレビアニメシリーズ『竈門炭治郎 立志編』が放送されると、ufotableがアニメーション制作を手がけた映像美も話題になり、一気に人気に火がついた。
翌2020年、その続編となる『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が劇場公開され、国内歴代最高興収となる404.3億円を記録(全世界で累計来場者数約4135万人、 総興行収入約517億円)し、社会現象的なムーブメントを巻き起こした。

十二鬼月・上弦の参である猗窩座。強大な力を持ち、炭治郎たちの前にたちはだかる(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
その翌年(2021年)10月には、同劇場版をテレビシリーズに再構成した『無限列車編』がオンエアされ、12月からその続編となる新シリーズ『遊郭編』がテレビアニメ放送された。
続いて、2023年2月より、『遊郭編』10話と11話、次作となるテレビアニメ『刀鍛冶の里編』1話の計3話をまとめた劇場版『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』をワールドツアー上映として劇場公開。同年4月より新シリーズ『刀鍛冶の里編』が放送された。
その翌年(2024年)2月、『刀鍛冶の里編』11話と次作となるテレビアニメ『柱稽古編』1話をまとめた劇場版『「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』をワールドツアー上映として劇場公開。同年5月より新シリーズ『柱稽古編』が放送された。

我妻善逸(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
ここまでをまとめると、2019年にテレビアニメ『竈門炭治郎 立志編』、2020年に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』、2021年にテレビアニメ『無限列車編』、2021年から2022年にテレビアニメ『遊郭編』、2023年に劇場版『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』とテレビアニメ『刀鍛冶の里編』、2024年に劇場版『「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』とテレビアニメ『柱稽古編』となる。
2019年以降、2020年の劇場版オリジナルのほか、テレビアニメシリーズとそこから数話を抜き出して再構成した劇場版が毎年、テレビ放送または劇場公開されてきた。
7月18日の最新作公開に向けて世間の注目が高まる
そして2025年、いよいよシリーズ最終章となる劇場版三部作の第一章が7月18日より公開される。
それに合わせて、映画館では今年4月から過去のアニメ版総集編の劇場上映や、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のリバイバル上映企画などが実施された。
また、テレビでは6月末からフジテレビにて『無限列車編』1話と劇場版『無限列車編』の特別放送や、『無限列車編』から『柱稽古編』までのアニメシリーズ全7夜オンエアなどの特別編成が組まれ、7月からは各配信プラットフォームでの劇場版配信などもはじまっている。
7月18日に向けて、全方位的に過去作の露出が高まり、ネットニュースでもさまざまな切り口の記事が増えた。記録的ヒットとなった前作から5年ぶりとなるオリジナル劇場版の封切りに世間の注目がひしひしと高まっている。

冨岡義勇(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
では、社会的関心を集める劇場版3部作第1章は、どこまでのヒットになるのだろうか。それを考える上では、過去の劇場版の実績が、ひとつのヒントになるだろう。
前作は興収404.3億円のスーパーヒットになったが、コロナ禍の特殊な状況が追い風になっていた。
2020年春から夏にかけて世界的に映画製作は滞り、洋画大作の供給はストップ。シネコンに新作がほぼなくなったなか、数少ない邦画大作の隙間を縫うタイミングの封切りによって、全国403館で上映された同作は、シネコンのスクリーンを占拠する前代未聞の興行になった。
コロナ禍の作品供給不足の渦中において、ひとつのシネコンの複数のスクリーンで30分置きに上映回があり、1日に30~40回上映されるような極端なケースが少なくなかった。
そんな上映状況と作品の持つ力が噛み合って、ヒット規模が驚異的に増幅した。平時に戻った現在ではまず起こり得ないヒットスケールと言えるかもしれない。

猗窩座(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
テレビアニメ再構成上映は興収が下がっている
その後、前述の通り、ワールドツアー上映と銘打つ、シリーズ2作のテレビアニメ放送の合間をつなぐ劇場版が2作公開されたが、興収は以下の通り。
『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』(2023年2月3日公開)
41.6億円
『「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』(2024年2月2日公開)
23.1億円
テレビアニメの再構成版としては大ヒットであるものの、前作の数字からすると物足りなくも感じる。加えて、2作目は1作目の半分ほどにまで興収が下がっている。

胡蝶しのぶ(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
その要因としては、それぞれ次作テレビアニメシリーズの1話が目玉になるが、その内容の引きが1作目と比較して2作目が弱かったことや、新たな映像が少なかったことが挙げられている。
いずれにしても、1作目と2作目の間が、ムーブメントから時間を経た現在のコアファンの規模と見ることができるだろう。

時透無一郎(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
劇場版『名探偵コナン』は3年連続で100億円超え
テレビアニメと劇場版を戦略的に織り交ぜながら放送および上映してきた『鬼滅の刃』シリーズと対照的なのが、『名探偵コナン』シリーズだ。
原作を基にするストーリーとオリジナルを織り交ぜながら、ほぼ毎年、新作テレビアニメと劇場版が放送、公開されてきている。毎年春に公開される劇場版は、ファンにとってはその時期の風物詩になっている。
2023年の『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(興収138.3億円)、2024年の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』(興収158億円)、2025年の『名探偵コナン 隻眼の残像』(興収150億円前後)と、3年連続で興収100億円を超えた。いまや100億円超えがデフォルトで、過去に例のない大ヒットシリーズとなっている。
その背景には、子どもを含めたファミリー層だけでなく、若い世代や年配層を含めた大人を取り込むファン層の幅広さがある。謎解きサスペンスをベースにしたスケールの大きなスペクタクル・ストーリーに、ファンの心をくすぐる趣向を凝らした新キャラクターや、懐かしいキャラクターが毎作に登場する。
そのエンターテインメント性の高さが、コア層&一般層を楽しませ、毎年の定番としてすっかり定着している。

甘露寺蜜璃(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
一方、『鬼滅の刃』シリーズは、前作こそ社会現象となり、一般層を取り込んだものの、その後の劇場版を見ると、観客がコア層に絞られているように見受けられる。
もちろん、テレビアニメの再構成版ということが要因のひとつとして大きいが、それとともに、作品内容が戦闘アクションシーン中心のストーリーになることで、コア向けに寄っているように映る。
テレビアニメシリーズを観ると、物語の半分以上が戦闘シーンになることもある。シリーズによっては、それが1カ月ほど続くので、物語性を楽しむドラマファンなどの一般層はとっつきにくいのかもしれない。
また、子ども向けのような明るく楽しい演出もあるが、根底にあるのは鬼と人間の生き残りをかけた闘いであり、家族を惨殺された主人公の復讐の物語というダークな世界観だ。ゆえに、観客を選ぶ作品でもあるのだ。
加えて、原作は完結しており、劇場版の物語の結末は公になっているところも、毎回の謎解きストーリーに楽しみがある劇場版オリジナルの『名探偵コナン』とは異なる。

不死川実弥(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
そして、最終章が3部作であることも、一般層のハードルを上げている。1本で結末まで観られないことは、ライト層にとってはストレスになる。逆に、コア層にとっては楽しみが増えて喜ばしいに違いない。まだ映像化されていない原作の残り3分の1ほどを、独特な映像美のアニメーションならではの物語として、じっくりと描き上げていくことへの期待が高まるだろう。
このあたりからは、一般層に寄せることなく、作品そのものの性質や特徴を貫く、制作陣の作家性へのこだわりといった“魂”を強く感じる。だからこそ、前作のように、ただおもしろいだけではない、いまの社会や世の中への問いかけがある、メッセージ性を有する作品が生まれる。
もちろん一般層を切り捨てたわけでも、商業性を考慮しないわけでもないだろう。しかし、それ以上に作品の本質や芸術性を追求している。それは一見コアファン向けのようだが、そんな作品にこそ宿る力が一般層にブレイクスルーし、より大きなヒットを導くこともあるのだ。
『鬼滅の刃』には“常識外れのポテンシャル”がある

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』7月18日全国公開(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
7月18日に公開日が迫るなか、関係者に聞くと「興行の予測が難しい」と口を揃える。その背景にあるのが、『鬼滅の刃』シリーズの計り知れないヒットポテンシャルだ。
近年の劇場版の興収に鑑みれば、“コナン超え”は難しいと思われる。しかし、前作の興収400億円超えは、時勢の追い風があったとはいえ、そもそもの作品力がなければ、到底生まれるものではない。
コロナ禍という未曾有の事態に襲われ、社会全体が不穏な空気に満たされたなか、『鬼滅の刃』は人々の心の明るい光になった。そのときの感情は心の奥底に息づいている。
不安でいっぱいだった心を救ってくれた作品のインパクトは、決して簡単に消えるものではないだろう。その人々は、今回も映画館に足を運ぶに違いない。
その爆発力に映画業界の期待がかかっている。本作は既存のパターンにあてはまらない興行になることが十分考えられる。

胡蝶しのぶ(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
新作の興行収入、目安はこれくらい
ここ数年の興行市場を鑑みると、現実的なところでは、興収100億〜200億円ほどがひとつの予測になるだろう。これでも幅が広すぎるが、それだけ予測が難しい作品であることは間違いない。

(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
ただ、作品内容に一点突破して人々の心に突き刺さる、または突き抜ける何かがあれば、そこから一気に時勢が傾くことも十分ありえる。
再び社会的ヒットを巻き起こすことへの期待値は高まっており、想定外が起こる予感を抱く関係者は少なくない。そういう事態になれば、興収200億〜300億円台も夢ではないだろう。
興行結果は、夏休み本番となる7月末からお盆にかけてどこまで数字を伸ばすかで見えてくる。まずはそのタイミングに注目したい。
今年の夏の映画館は賑わいそうだ。