マスクの「アメリカ党」が共和党を引き裂くかも...支持率は意外と高め、トランプも戦々恐々?

マスクの「アメリカ党」が共和党を引き裂くかも...支持率は意外と高め、トランプも戦々恐々?
マスクの新党はアメリカ選挙史に名前を残せるか ZUMA Press Wire-REUTERS
<アメリカの歴史上第三党が大きな成功を収めたことはないが、共和党は自身の支持者がアメリカ党に流れることを懸念しているようだ>
クオンタス・インサイトの世論調査(6月20日~7月2日実施)によると、イーロン・マスクが立ち上げたばかりの「アメリカ党」は、共和党支持者から大きな支持を集めている。
2026年の中間選挙を前に共和党議員たちにとって懸念材料となるかもしれない。
マスクの「アメリカ党」が共和党支持層から大きな支持を得ているという事実は、アメリカの選挙における第三党の歴史的役割を踏まえると重要である。アメリカの選挙史上、第三党は、主に分裂元の政党にとって「スポイラー(票を割る存在)」となっていた。
マスクのこの動きは、トランプ政権への批判およびトランプとの関係悪化の表れと思われている。マスクは「大きく美しい法案」が国家債務を急増させるとして強く批判しており、この支出法案に賛成票を投じた共和党議員に対して予備選で対抗する意向を示している。
マスクの新党結成についてトランプは、「アメリカ党の立ち上げ計画は『列車事故』だ」と述べ、第三党は「完全で徹底的な破壊と混乱をもたらす」と批判した。
共和党支持者からの支持が...
調査によると、「アメリカ党が出来たら支持するのか」という質問に対し、回答者の14%が「大いに支持する」、26%が「ある程度支持する」と回答。調査対象者の40%がアメリカ党を支持する。
なかでも支持率が高かったのは男性の共和党支持者で、支持率は57%に達した。無党派層の男性でも47%が支持を表明した一方、民主党支持の男性ではわずか22%にとどまった。
女性の共和党支持者も43%がアメリカ党の支持を表明したほか、無党派層の女性からの支持率も39%となった。一方、民主党支持の女性からの支持は21%にとどまった。共和党支持者および無党派層の女性も、民主党支持の女性よりアメリカ党への鞍替えを検討する傾向が強いようだ。
米議会での議席数が僅差である中で、こうした票の動きは決定的な意味を持ち得る。政治の専門家たちは、アメリカの「勝者総取り方式」の選挙制度において、第三党のような小さな動きでも上下両院の支配に大きな影響を与える可能性があると警鐘を鳴らしている。
マスクの新党は「虚栄心の産物」?
マスクの新党は実現可能な政党なのか、それとも「虚栄心の産物」なのか。
ウィスコンシン大学マディソン校の政治学教授バリー・バーデン氏は7月10日、本誌に対し、マスクとアメリカ党との関係が今後どのように発展するかは未知数であり、それが長期的な政治戦略なのか、あるいは短期的な「虚栄心からの企て」なのかは判断できないと述べた。
また、マスクがアメリカ党の顔となるのか、それとも単なる資金提供者にとどまるのかも明確ではないとした。
「アメリカ党の候補者は、民主党支持者よりも共和党支持者から多くの支持を集める可能性が高い」とバーデンは指摘した。
「その理由の一つは、共和党の有権者の間ではマスクの好感度が依然として高い一方で、民主党や無党派の間では著しく低いからである」
さらに、トランプがマスクとの距離を意図的に取り始めているとしながらも、「MAGA(トランプ支持運動)の支持者の多くは、政府支出、技術、貿易に関するマスクの見解に引きつけられ続けるだろう」と述べた。
注目すべきもう一つの要素として、若年層の有権者が挙げられる。歴史的に、第三党は最も若い有権者からの支持を受ける傾向があり、これまで民主党を支持してきた若者の多くが、2024年にはトランプ支持に転じた。
バーデンは、マスクの新党が、両党から若い支持者の一部を奪う可能性があると指摘した。
「マスクは、ごく限られた選挙区と州で候補者を支援する計画であり、議会交渉において一定の影響力を持つことを目指していると述べている」とバーデンは述べた。
「そのような選挙区は、ほとんどが保守的な地域であり、マスクのような動きが最も支持を集めやすく、そもそも民主党が勝つ見込みの低い場所だ」
マスクの新党は一過性のもの?
ニューヨークを拠点に活動する民主党系の政治戦略家であり、調査会社のゴッサム・ポーリング・アンド・アナリティクスの共同創設者であるデニー・サラスは7月10日、本誌に対し「アメリカ人には十分な怒りが鬱積している。アメリカ党のような第三党が有力な候補者を擁立し、多くの有権者の支持を集めることは可能だろう」と述べた。
一方で、「ただ、このマスクの取り組みがどれだけ持続的かつ本物かという点については懸念している。政党は、大富豪が思いつきで始めて成功するものではない。草の根からの組織化によって成り立つものなのだ」と、新党が一過性のものかどうかについての懸念を示した。
また、共和党系のコメンテーターで103.9 FM「LI News Radio」で朝のニュース番組の司会も務めるジェイ・オリバーは7月10日、「アメリカで第三党は常に失敗してきた。セオドア・ルーズベルトからロス・ペローまで、第三党が大きな影響力を持ったことはない。マスクは実際、彼の資金力によって、良いことよりも害を及ぼす可能性がある。中間選挙が目前に迫る中で、これは大きなリスクだ。イノベーションに専念していてほしい。マスクは政治の世界で使い捨てられるには惜しい存在だ」と本誌に語った。
マスクのアメリカ党が支持を集める土壌はアメリカにあるのか
トランプは7月8日、記者団に対して「マスクの新党結成は我々にとってプラスになると思う。たぶん、プラスになる。第三党は私にとってはいつも良かった。共和党にとってどうかは分からないが、私にとってはね......」と語った。
共和党のロン・ジョンソン上院議員はアメリカのオンラインニュースメディア『ザ・ヒル』に対し、「パンデミック前の水準に戻ることも、予算の均衡を図ることも望まないというなら、そういう選択も『あり』だろう」と述べた。
そして、「マスクは共和党を分裂させることになる。共和党内には、政府の無駄遣いや過剰な支出に歯止めをかけようとする人々がいるが、民主党にはそういう意識を持つ議員はいない」とマスク新党への支持を牽制した。
今回の調査結果は、二大政党制に対する国民の不満を表したものといえる。2024年に行われたギャラップ社の調査によれば、アメリカの成人の58%が第三党の必要性を感じていると回答している。
今のアメリカには、マスクの構想を実現するための土壌が存在しているようだ。

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