″敵″艦艇をミサイルで撃沈…!米軍らと自衛隊が台湾至近で巨大軍事訓練を挙行「密着ルポ」緊迫写真

台湾方面へ向け陸自の88式地対艦誘導弾が発射された瞬間。フィリピン軍は同ミサイルの購入を検討中だ

過去最大規模

5月14日に開催された米中首脳会談で、習近平国家主席(72)は台湾問題が「米中関係における最重要課題」だとして、「処理を誤れば両国は対立、衝突に至り、極めて危険な状況となる」とトランプ大統領(79)に警告した。

会談の多くの時間が台湾の独立について割かれ、武器売却、有事の際の米軍展開についてクギを刺された旨、トランプ大統領は記者団に明かした。

習主席が執拗にアメリカを牽制したのには理由があった。米中首脳会談が始まる直前、米軍主導で台湾有事を想定した巨大な軍事訓練が行われていたのである。

海岸線近くに一台のトラックが停車すると、迷彩服の男たちが飛び降り、トラックの荷台部分が持ち上がった。搭載されているのはミサイルの発射筒。陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾だ。

轟音とともに2発連続でミサイルが空を切り裂き、数分で約75km先の洋上にいた標的艦に命中。近くに展開していたアメリカ軍とフィリピン軍の戦闘機と艦艇による追撃を受け、″敵艦艇″は大破して海の底へ沈むのだった——。

掲載した写真は4月20日から5月8日まで、フィリピンのルソン島やパラワン島などにおいて開催された多国間共同訓練「バリカタン26」の一コマである。

「米比共同訓練として’81年にスタートした『バリカタン』はもともと、対ゲリラ、対テロを想定した軍事訓練でした。それがインド太平洋地域における中国の軍事拡大を受け、’23年から対中国を想定した訓練へと変化。台湾有事が念頭に置かれたかのような内容となった今回は、米比の他にオーストラリアやニュージーランドなども参加し、オブザーバーを含めると21ヵ国約1万7000名が集結。過去最大規模の軍事演習となりました。

日本は今回が初の本格参加。陸海空自衛隊から部隊を派遣し、隊員総数は1400名と主催国である米比に次ぐ規模でした。派遣された部隊の一つが88式地対艦誘導弾を有する第1特科団で、フィリピンで射撃をしたのは今回が初めて。演習弾ではなく実弾での射撃も数十年ぶりとなっています」(陸自幹部)

演習が行われた場所

「バリカタン26」が始まる前から不快感を隠さなかったのが中国だった。

冒頭で撃沈された標的艦が設置されていたのは、台湾とフィリピンの間に広がるバシー海峡に近い洋上。中国の艦艇が太平洋に出る際に通る要衝で、ルソン島北部から台湾まで400kmしか離れていないのだ。

パラワン島では米比豪新連合軍にて、″敵国″の上陸阻止を想定した掃討訓練が行われた。銃口が狙う先には、中国が一方的に領有権を主張し、人工島を造成している南シナ海が広がる。中国が実効支配するスカボロー礁までは約600kmという距離での実弾射撃演習で、中国の郭嘉昆副報道局長は「日本はあちこちで武力を誇示し、地域の安定を破壊すべきではない」と牽制するのだった。

「最重要課題」に挙げる台湾至近での「バリカタン26」を受けて、習主席は台湾問題から手を引くようアメリカに迫ったが、トランプ大統領は「ただ話を聞いただけで、明確な譲歩も保証も約束もしていない」、「アメリカは9500マイル離れた場所での戦争は望んでいない」とコメントするにとどまった。

そんななか、日本とフィリピンの安全保障上の距離は縮まり、実弾射撃を行った88式地対艦誘導弾をフィリピンへ輸出する動きが出てきている。すでに同国には空自の警戒管制レーダー等が輸出されており、護衛艦「あぶくま」型や16式機動戦闘車の輸出も検討中だ。台湾周辺で、各国の思惑が飛び交っている。

パラワン島からは米陸軍のハイマースが、南沙諸島方面の訓練海域に向けて次々とロケット弾を撃ち込んだ

敵の上陸部隊を迎え撃つために84mm無反動砲B型を構える″島嶼防衛のプロ″陸自水陸機動団の隊員たち

ルソン島の北側、台湾方面から迫りくる″敵艦″との交戦場面。ミサイルの他、陸上からは野砲や小銃で迎撃!

パラワン島で行われた対着上陸阻止訓練。米比豪新連合軍が敵部隊を殲滅するため、浜辺に陣地を構築した

5月6日には小泉進次郎防衛相(45)が現地を訪問。演習終了後に自衛隊員らとセルフィーで記念撮影した

『FRIDAY』2026年6月5・12日合併号より

撮影・文:菊池雅之(軍事フォトジャーナリスト)