高市総理の「面識のない方」は大間違い! 高市事務所所長が認めていた「サナエトークン」「誹謗中傷動画」首謀者との接点
高市事務所が筆者に明かしていた首謀者との接点
高市早苗総理の陣営が今年2月の衆院選や、昨年の自民党総裁選において、他候補を中傷するような動画をSNS上に投稿していたとする「週刊文春」の報道が波紋を拡げている。
動画作製に関わったと告発しているのは、合同会社NoBorderDAO幹部で、暗号資産「SANAE TOKEN(サナエトークン)」の設計者・松井健氏だ。筆者が「週刊現代」で報じたように、松井氏を巡っては、サナエトークンを巡る資金決済法違反疑惑が取り沙汰されており、金融庁が水面下で調査を続けている。
渦中の松井氏は5月18日にネット番組「NoBorder News」に出演し、高市総理の公設第一秘書で、事務所所長の木下剛志氏と、オンラインでのやりとりを重ねていたと告白した。さらに、木下氏から具体的な指示はなかったものの、「動画作戦」を自ら主導しておこなったと主張した。

「NoBorderNews」5月18日放送に出演した松井健氏
こうした中で行われたのが、5月26日の参院内閣委員会だった。高市総理は、野党議員から「オンライン会議をしていないと断言できるか」と問わると、「インターネット上の莫大なやり取りがあり、一つひとつ確認することは困難」などと歯切れの悪い答弁に終始した。また以前には、松井氏について「私自身も、地元の秘書も面識のない方」と説明していた。
かように、木下氏と松井氏のやりとりはあったのかどうかが、国会の焦点になっている。しかし、サナエトークン問題を継続取材してきた筆者からみると、これは実に不思議なことである。というのも、「週刊現代」でこれまで報じてきたように、木下氏はサナエトークンに関する取材の過程で、松井健氏との接点について、詳細に明かしていた経緯があるからだ。
筆者が松井氏との関係を木下氏にはじめて質問したのは、3月上旬だった。松井氏が「総裁選で高市陣営のSNS対策を担当していた」と周囲に吹聴しているという証言が複数あったため、高市事務所に尋ねたのがきっかけだった。
「LINE」を通じて、松井氏とやりとり
これに対して、木下氏は3月10日に「松井氏が勝手連で支援していただいたことは認識していますが、選対として行っていた事実はありません」と回答した。つまり、松井氏はあくまで「勝手連」としつつも、SNS対策に関わっていたことはこの時すでに認めていたのである。一方の松井氏からは返事がなかった。
その後、松井氏が高市陣営において、他候補のネガティブキャンペーンに携わっていたという情報を得たため、改めて尋ねると、木下氏は3月17日に「高市事務所では、松井氏の活動のアカウントを承知しておらず、活動の具体的な内容は一切承知しておりません」と回答した。この時も松井氏からは回答はなかった。
さらに、木下は3月23日付の回答書では、メッセージアプリ「LINE」を通じて、松井氏とやりとりしていたことも明らかにしていた。〈NoBorder社より、『Japan is Back』という勝手連での高市早苗応援団企画をしたいという相談は昨年末より受けておりました。『Japan is Back プロジェクト』に関するグループLINE内に松井氏はメンバーとして入っていました〉と説明していた。

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木下氏からは「週刊文春」で松井氏が告発したZOOM会議についても、説明があった。
4月3日付の回答書で、木下氏は「12月17日のオンライン会議は、NoBorder側からの求めに応じて行ったもの。NoBorder側の取り組みとして、国民の政治に対する声を集める『ブロードリスニング』に関する企画について話を聞いた。詳細は記憶してないが、最新のインターネット技術の活用を検討しているという話の中で、参加者へのインセンティブとして暗号資産を配布するというアイデアについて説明があったのではないかと思う」と答えていた。
また、「これらの一連の説明は、NoBorder側の独自の取組の話でもあり、特に注意して聞いていたわけではないが、当然NoBorder側が法律に則り対応されるものと捉えていた。いずれにしてもNoBorder側からの説明の中で「SANAE TOKEN」という名前が出されたことはなく、発行する計画などについての説明もなかった。当然、高市事務所側に何か承認などを求められるというものではなかった」と主張。
その上で、「当時のオンライン会議では『サナエトークン』という用語は全くでてきていない。まして『売却できる資産』との発言に木下が賛意を示した事実もない」と説明した。
松井氏のユーチューブ動画について事務所に聞くと…
前述の松井氏の「NoBorder News」への出演後にも、筆者は木下氏に改めて見解を聞いていた。木下氏は5月20日付の回答書で、「これまで回答させていただいていることに相違はありません。『週刊文春』が報じた内容については、事実ではありません。高市事務所では、松井氏のアカウントを承知しておらず、活動の具体的な内容は一切承知しておりません。当然、松井氏が選対のメンバーという事実もありません」と主張した。
高市総理の曖昧な答弁とは裏腹に、木下氏は取材に対して、松井氏との「接点」は率直に認めてきたのだ。誹謗中傷動画問題に関しては、松井氏が「勝手連」としてSNS対策をしていたことは認めつつも、アカウントや具体的な活動は承知してなかったというのが、木下氏の主張である。
サナエトークン問題についても、松井氏をはじめとするNoBorder DAO側が、高市早苗応援プロジェクトとして、「Japan Is Backプロジェクト」を企画し、その相談に乗っていた事実は認めている。その一方で、松井氏の告発とは異なり、投機的要素を持つ暗号資産に対して、承認を与えるようなことは一切なかったと主張する。

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木下氏の主張は、松井氏の主張と矛盾する点も多々あるが、いずれにしてもやりとりを重ねてきたことは認めている。
無論、松井氏の証言や、提供資料についてもその真偽は検証されてしかるべきだ。ただ、高市事務所は本当に松井氏のアカウントを承知していないのか、本当にサナエトークンが暗号資産だと知らなかったのか、という疑惑は横に置いておくとしても、松井氏と接触してきたこと自体は事実なのだ。
サナエトークンから誹謗中傷動画問題に至る一連の問題は、高市総理が注力するインテリジェンス(情報収集・情報分析)の問題でもある。筆者が報じてきたように、松井氏を巡っては、複数の投資トラブルの存在が確認されている。そんな人物がなぜ、現職総理の事務所所長とやりとりを重ねるようになったのか。その真相も明らかにされるべきだ。
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かわの・よしのぶ/'91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、「サンデー毎日」「週刊文春」の記者を経てフリーに。主に政治を取材している