成田エクスプレスは開業当初、千葉県内を「全駅スルー」していた!

千葉駅特急激減の衝撃

 成田エクスプレスは1991(平成3)年3月に運行を開始した。東京駅や品川駅、横浜駅などと成田空港駅を結ぶJR東日本の空港アクセス列車である。

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 その目的は、東京と成田空港間を短時間で結ぶことであった。しかし1990年、翌年のダイヤ改正が発表されると、千葉県内の利用者から困惑の声が上がり始めた。

 当初、空港アクセス列車としての役割を重視したため、千葉県内の駅はすべて通過し、都心のターミナル駅へ直行するダイヤが組まれていたからである。

 さらにダイヤ改正により、都心と房総方面を結ぶ特急「わかしお」「さざなみ」が京葉線経由に変更された。その結果、県庁所在地の千葉駅に停車する特急は、従来の3分の1にまで激減することとなった。

政令指定都市の試練

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成田エクスプレス(画像:写真AC)

 千葉県は、県庁所在地の中心駅で特急が激減することに危機感を抱いていた。これは県のイメージダウンにつながると考えられていたためだ。

 千葉市の状況はさらに深刻であった。1992(平成4)年4月に政令指定都市となる予定で、発展が見込まれていたからだ。にもかかわらず特急が停車しない状況は、市民の大半から「許されない」との声が強まった。

 これに対しJR東日本は『朝日新聞』1990年12月22日付で

「反発は覚悟のうえ」

と強気の姿勢を示した。成田空港利用者のなかで、千葉駅で乗降する人はほとんどいなかったためである。当時は

「なぜ千葉駅に停車させて利便性を下げるのか」

との意見が多かった。また、ダイヤ改正により成田~千葉駅間の快速電車は増発され、沿線の利便性はむしろ向上すると考えられていた。

バスが変えた空港アクセス

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成田エクスプレス(画像:写真AC)

 しかし1990(平成2)年12月、千葉県はJR東日本に要望書を提出した。1991年3月には千葉市議会が成田エクスプレスの千葉駅停車を求める決議を可決した。

 当初は停車を拒んでいたJR東日本だが、その後の協議で1992年3月から上下各2本、計4本のみ千葉駅に停車させることを決めた。1994年には一部列車が成田駅にも停車し、停車駅は徐々に増加していった。

 停車駅が増えた背景には、空港アクセス列車としての使命に専念できない事情もあった。

 いまや成田空港には格安航空会社(LCC)が就航し利用者が増加したが、同時に交通手段の競争も激化した。成田空港へのアクセスは年々安くなっている。

 現在、都内から最も安価に成田空港へ行ける手段は「エアポートバス東京・成田」である。銀座駅や東京駅から乗車でき、料金は1500円だ。

 このバスは2019年12月にLCCバスの「東京シャトル」と「THEアクセス成田」が統合して誕生した路線だ。東京シャトルは京成バスを中心としたグループが運行し、THEアクセス成田はビィー・トランセグループとJRバス関東の共同運行であった。

羽田国際線増加と成田競争激化

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成田エクスプレス(画像:写真AC)

 交通手段が多様化するなか、2010年代から羽田空港の国際線の路線数と利用者数は大きく増えている。これにより、成田空港と羽田空港の間の競争は非常に激しくなった。

 羽田空港の国際線の強化は、成田空港の役割に直接影響を与え、空港へのアクセス方法の需要が分かれ、利用者の選択肢も増えた。そのため、成田空港を使う旅行者は、単に便利さだけでなく、費用や所要時間、サービスの快適さなど、さまざまな要素を考えて交通手段を選ぶようになった。

 こうした状況のなかで、訪日外国人向けの乗り放題きっぷ「ジャパン・レール・パス」は、成田エクスプレスに追加料金なしで乗れるため、多くの旅行者に支持されている。特に、いくつかの場所を移動する外国人旅行者には合理的な選択肢となっている。

 しかし、この利点が成田エクスプレスの一般の利用者を増やすことにはつながっていない。価格が安いバスやほかの鉄道サービスの増加で、成田エクスプレスは幅広い利用者に対して十分な競争力を持ちにくくなっている。

 このような背景から、成田エクスプレスは空港アクセスに限定された役割をやめて、沿線の地域住民の移動にも対応する方向に変わっている。途中駅に停まる本数が増え、通勤や通学での利用を促進している。

 今後は、空港アクセスと地域の移動の両方に対応しながら、変わる市場に適応していく必要がある。この変化は、成田エクスプレスの役割や収益の仕組みを見直す大きな機会になるため、今後の動きをよく見る必要がある。