中古車をフリマで売っただけで逮捕? 「営利性」で変わる古物営業法のワナ、3年以下の懲役リスクとは
中古車取引と無許可営業リスク
中古車取引の多くは業者間オークションや販売店同士の取引が主流となっている。これは、自動車販売業者が専門のオークション会場や業者向けネットワークを通じて中古車を仕入れ・販売する形式であり、一般消費者が直接関与する機会は少ない。
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しかし近年は「個人間取引」の比率が高まり、古物営業法の適用範囲をめぐって議論が生じている。古物営業法が定める
・営利目的
・反復継続
という判断基準は明確ではない。警察庁の通達でも
「個別具体的に判断する必要がある」
としているが、数値的な基準は示されていない。最高裁判例では、「営利の目的で」「反復継続して」「営む意思を持って」古物を売買する場合、たとえ1回の取引でも営業に該当すると明記されている。問題は、こうした判断をどのように解釈するかにある。
個人の取引であっても、販売業者と見なされる可能性がある。警察庁の通達によれば、
・古物の価格
・取引頻度
・収益の使用目的
などを総合的に判断し、営利目的の反復取引と認められれば古物営業に該当する。つまり境界線は曖昧で、自己判断は危険だ。
さらにネット取引の増加によって、本人確認の問題も深刻化している。古物営業法では取引相手の本人確認が義務付けられているが、匿名性の高いプラットフォームでは確認が難しい。警視庁は
「ネットオークションやフリマアプリでも相手方確認は必要」
と明言しており、いらない物を売っただけと考える個人でも、状況によっては営利目的と判断される可能性がある。本人にその意図がなくても、ビジネス目的と見なされれば古物商に該当する。
法律上、たった1回の取引であっても営業とされる場合があるため、これくらいなら大丈夫という判断は避けるべきだ。違反した場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるリスクがあり、さらに5年間は古物商許可を取得できなくなる。
古物商許可取得の落とし穴

自動車(画像:写真AC)
古物商許可を得るには、申請手続きが必要となる。単に書類を出せば終わるわけではない。とりわけ中古車を扱う場合は注意が要る。高額商品を扱う以上、それに見合う責任も求められる。一般的な古物よりも、慎重な準備が必要になる。
古物商は営業所ごとに業務の適正化を目的として、管理者をひとり選任しなければならない。特に混乱しやすいのが、誓約書の提出だ。個人で申請し、申請者自身が管理者も兼ねる場合、誓約書は2通必要になる。法人の場合はさらに複雑だ。
代表者や役員が管理者を兼ねる場合、その人物には役員用と管理者用の誓約書をそれぞれ提出する必要がある。立場を兼ねるほど、提出書類は増えていく。
見落とされがちなのが「欠格事由」だ。
・暴力団関係者
・過去に許可を取り消された者
は申請できない。このルールは管理者にも適用される。法人であれば役員全員が対象になる。誰かひとりでも該当すれば、許可は下りない。事前に経歴を洗い直す必要がある。もっとも手間取るのは書類の準備だ。
・略歴書
・本籍入りの住民票
・誓約書
・身分証明書
などが申請者と管理者の両方に求められる。身分証明書と聞くと運転免許証を思い浮かべがちだが、ここで必要なのは本籍地の市区町村が発行する「本物の身分証明書」である。
申請手数料は1万9000円。不許可や申請の取り下げとなっても返金はされない。申請から許可が下りるまでの目安は40日以内。ただし、これは書類に不備がない場合に限る。記入漏れや添付忘れがあると、その分だけ遅れる。
中古車販売の開業を急ぐ場合、期間の長さがより重くのしかかる。店舗の賃貸契約や在庫調達の段取りを考えると、許可申請は開業予定日の2か月前には済ませておきたい。書類を提出しても、許可の連絡が来るまでは営業ができない。この点も見落とすべきではない。
本人確認と標識掲示の義務化

標識の様式(画像:大阪府警察)
許可が下りたら一息つきたくなるが、実際はここからが本番だ。
中古車の帳簿記載は面倒に感じられることが多い。警視庁の帳簿様式では、車検証の詳細情報を記載する義務がある。
・車名
・車台番号
・所有者名
まで記載しなければならないのは中古車特有のルールだ。衣類なら「上衣、シングル」程度で済むことを考えると、手間がかかる。
本人確認も厄介な課題のひとつである。前述のとおり、フリマアプリなどを使っても相手方確認は必須だ。しかし、「運転免許証のコピー送付」だけでは不十分とされる。法令で定められた非対面取引の確認方法を取る必要がある。
標識の掲示も義務となっている。警視庁によると、標識の材質は金属かプラスチックで耐久性が求められる。下欄には古物商の氏名を記載しなければならない。
2024年4月からは、新たにウェブサイト表示義務が始まった。従業員5人以下かウェブサイトを持たない場合を除き、
・氏名
・公安委員会名
・許可証番号
をウェブサイトに掲載しなければならない。
事業継続を支えるコンプライアンス

自動車(画像:写真AC)
これらの義務は確かに手間がかかるが、中古車販売に欠かせない要件である。
事業者がまず行うべきは、管轄警察署で最新の手続きを確認することだ。本人確認や帳簿も法令に則って準備しなければならない。古物営業法の改正情報も定期的にチェックする必要がある。適切に対応しなければ、営業停止や許可取り消しのリスクが高まる。
手間はかかるが、安定した事業継続のために避けて通れない道である。要件を満たすことで、事業の信頼性は確実に向上する。コンプライアンス体制が整っていれば、トラブル時のリスクも軽減できる。
どの業界でも基盤整備が事業成功のカギとなる。