「焼き芋にはバニラアイスをトッピングして」疲れた心と体に効く甘やかしの夜食屋台

「出来合いの弁当に抵抗ない」3割

コクリコラボが実施した、「子育て×夏休みアンケート調査」(2021年6月22日〜7月12日「AnyMaMa(エニママ)」登録者へのインターネットアンケート)によると、9割の親が子どもの夏休み中の昼食の用意を自宅でしており、それを8割の親が負担に感じると答えている。

一方で、コンビニ弁当や出来合いのお惣菜を与えることに抵抗がない、と答えている親は、3割にとどまっている。53%の親が、「よく利用する・時々利用する」と回答しながらも、添加物や値段の面から、44%が抵抗を感じているという現実。

大事な家族や明日も頑張る自分を想って、手作りを心がける姿勢は尊敬に値するものではあるが、そんな余裕のない日だってあるだろう。 

FRaU web編集者の筆者は妊娠中、「添加物なし」「野菜しっかり」「ちゃんと手作り」を目指したものの、実際体が求めたのはマックのポテトだった。塩味のポテトを口にしつつ、合間に「口直し」と称して、マクビティの甘いチョコビスケットもつまんだ。

頭でわかっていても、心や体が違うものを求める日だってあると言いたい。

現役看護師が描くレシピ&コミックエッセイ

そんな頭での理解と、疲れた心と体の矛盾を理解し、労わってくれるのが、『疲れた人に夜食を届ける出前店2』(中山有香里著/ KADOKAWA)である。

発売以来、「作りたいものが必ず見つかる!」「日々の疲れが取れる」「心が疲れた時、ユーモアと優しく包んでくれるあたたかい料理に癒されました。 何度も繰り返し読んでいます」 などの感想が、SNSに投稿された。

本書は、2022年刊行の『疲れた人に夜食を届ける出前店』の続編。 看護師とイラストレーターを兼業している著者の中山有香里さんは、2022年1月に初の創作漫画『泣きたい夜の甘味処』を出版し、第9回料理レシピ本大賞 in Japanを受賞。同年10月に出版した『疲れた人に夜食を届ける出前店』で、2年連続の料理レシピ本大賞 in Japan コミック賞受賞している。

シリーズ累計で多くのファンを魅了する人気の理由は、慌ただしい日々に疲れた人の心に優しく寄り添う癒しのストーリーと、作りやすい実用レシピの組み合わせであろう。 

ごほうび夜食がいろいろ登場

物語の舞台は、とある町の片隅にある不思議な出前店。クマの店主や相棒のサケ、店のアルバイトたちが、お疲れ気味の人たちに心温まる夜食を届けてくれる――。

今回も心優しいクマの店主や相棒のサケ、思いやりにはあふれるがちょっと図々しいゴリラに、成長著しい吉村、1巻で涙を誘ったまっくろいコ、面倒見のいいリクルーターの魔王などが登場する。 

前編「カップ麺でもお茶漬けの素でもいい! 『何もしたくない日』に届く出前夜食のレシピ本」では、お疲れの人々を癒し、翌日に備え、心と体にエネルギーを補給する「おかかチーズおにぎり」「鮭ハラス丼いくらのせ」などのごはん、会社に出前してくれたカップ麺や屋台で提供するクリームソーダ、眠れない夜の「月見うどん」などを紹介した。

後編でも、トッピングをいろいろ取りそろえた焼き芋の屋台や、遅刻寸前の男子生徒に差し出された「コロッケパン」、みんなが好きな「まるごとバナナ」や「ミニスナックゴールド」など、ちょっとしたごほうび感ある夜食が登場する。 

元気のチャージ、みんな大好きなあのデザート

第10週目の初日は、モヤモヤを持て余す女性に手渡された、「まるごとバナナ」。週明けの重だるさを甘さで包む、ノスタルジックなおやつは、ひと口で元気がチャージされそう。

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火曜日。上司に頭ごなしに否定された男性がとぼとぼと帰路につく道すがら見つけたのは、焚火。クマは暗い顔をしている男性に、焼き芋を差し出し、好きなトッピングを言うよう促す。

男性が顔を上げた先には、焼き芋トッピングの屋台。メニューは、「バター」「クリームチーズ」「マーガリン」「塩」「アイスクリーム」「ハチミツ」「ゴルゴンゾーラチーズ」。さらに大学芋やスイートポテトまで揃っている。

中から男性が選んだのは、バニラアイス。熱々ほくほく芋に、とろりと溶けかかったアイスが食欲をそそる。「急にイイコトが起きた」と夢中でほおばる男性の顔はもう明るい。 これこそが、食事のだいご味、夜食の役割である。人はおいしさを感じながら、暗い表情などできないのだ。

個人の好みを勝手に言わせていただければ、焼き芋にゴルゴンゾーラ、上からはちみつ、なんて2種掛けもぜひ試してみたいところである。 

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ハムとチーズを重ねたホットサンドの威力

水曜日はモヤる男性にゴリラが鍋焼きうどんを作ってくれる。食べ終わると、出し切ったモヤモヤも一緒に捨ててきてくれるという、さりげなく優しいゴリラ。

続く木曜日は遅刻しそうな男子生徒が食パンを加えて走り出したところにクマが現れ、真っ白な食パンに、コロッケとキャベツをのせ、たっぷりのソースをかける。

たしかにその方がうまかろう。だが、当然男子は遅刻した。

そして、キャベツは生より、加熱したほうがこぼれにくく、食べやすいらしい。

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金曜日もまた、モヤモヤに包まれた男性が登場。この週はやけに、モヤモヤする人が多い。それだけ、現実でもモヤる人が多いということか。だが、この男性の前には、突如クマがマジシャンの格好をして現れた。そして彼のモヤモヤを天津飯に替えてくれたのだった。

土曜日は疲れてやる気の起きず、「私のヤル気、どこいったん?」と嘆き横たわる女性の家に、クマとサケがやってきて、ハムとチーズのホットサンドを作ってくれる。 ホットサンドメーカーもない、野菜もなし、飲み物もない。それでもクマはパンにケチャップを塗り、ハム、ピザ用チーズ、ハムと手際よく重ねて、トースターで焼く。さらにどっさり盛られたホットサンドにかぶりつく女性の目に力はみなぎり、ヤル気が戻ってきたのは、一目瞭然だ。

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「頑張った気がしてきた」

週の終わりの日曜日は、12月31日だった。あっという間に過ぎ去った1年の早さと、「なんにもできていない」焦燥感から、暮れなずむ公園でため息をつく女性。 けれどもひょっこり現れたネコが彼女の隣に座って、買ってきた「ミニスナックゴールド」を差し出す。ふたりは黙ってむしゃむしゃ食べただけだったが、女性は、「頑張れたこともあるな」「頑張った気がしてきた」と元気を取り戻していく。

その日、彼女にとって大事だったのは何を食べるかではなく、ともに懐かしい駄菓子パンを味わえる相手がいるということ。誰かとおいしいものを味わっている間は、今年の後悔も来年の不安も消え、 “今この瞬間の小さなおいしさと小さな幸せ”を感じられる。 

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家族のため、会社や同僚のため、責任感や義務感から、働く理由はいろいろでも、日々おつかれモードの人々を、“甘いもの”“懐かしい味”で優しく包む一週間。後編ではとくに、モヤモヤが晴れない心の疲れを夜食に変換する、45品の中から7つの楽しみごはんをご紹介する。

文責:風間詩織(FRaU web)