《東大理3現役合格》飽きるほど勉強の学生生活

桜蔭中学校・高等学校から東京大学理科3類に現役合格したOさんにインタビューした(写真:本人提供)
医療ドラマをきっかけに人体に興味を持ち、やがて「資格を武器に、自立して生きていけるようになりたい」と考えるようになったOさん。医学部を目指す中でも、東大を選んだ理由は「進路を限定しすぎたくない」という柔軟な視点にありました。
【写真を見る】桜蔭→東大理3に現役で合格したOさんに実際に使っていたノートを見せてもらった
中学時代は塾に通わず、部活や生徒会にも打ち込みながら、鉄緑会や学校生活を通して自分なりの勉強スタイルを築き上げた彼女。そんなOさんの歩みには、ただの「優等生」では語れない、現代の受験生らしいリアルな悩みや戦略が詰まっています。
それでは、Oさんの受験ストーリーを伺っていきましょう。
将来の夢を決めきれないから東大理3を選択
――まず、なぜ東大理3を目指そうと思ったのですか?
将来資格を取りたかったんです。
女性だと、会社の昇進に差が出るとか、給与など待遇に差が出るとか、そういった話を聞いてから、自分ひとりの力で食べていけるようにどうすればいいかと考えていました。資格があれば、自分で開業したり独立したり、いろいろと食べていけるでしょう。そこから弁護士や医者など士業に興味を持つようになりました。
それとは別に、もともと理系科目に興味がありました。小さいころに医療ドラマ『ドクターX』や『コード・ブルー』『コウノドリ』を観て、人体に興味が湧き、人体の図鑑を買ってもらうなどして、いろいろ調べました。特に、『ドクターX』では、患者のいろいろな症例によって、直し方を臨機応変に変えて対応する様子、医者の発想次第で、道具の可能性は無限大に広がるんだ、と憧れて、医者になりたいと考えるように。
ただ、「本当に将来を医者に固定していいのだろうか?」と迷うことも多かったです。高校ではいろいろな職業研究をする機会がありましたが、どうしても決めきれなかった。弁護士などほかの資格や、宇宙にも興味があったし、いろいろな選択肢を残しておきたかったんです。そこで、「教養課程でいろいろ学んでから進路を決められるから、東大にすればいいじゃないか」と気付いた。だから、東大理3を目指すようになりました。ですから、後期日程の受験はあまり考えていません。
――他大学の併願や浪人についてはどう考えていましたか?
慶應義塾大学の医学部を受験しました。それは、私の生まれが慶應の大学病院で、親から「いいところだった」と聞かされており、「慶應の医学部ならいいかな」と考えていたからです。浪人はしたくありませんでしたが、慶應か理3のどちらかには引っかかるだろうと感じていました。
中2までは塾に行かず、勉強は日曜だけ
――中学時代の勉強スタイルはどんなものでしたか?
中学2年生までは塾にも行かず、学校の勉強だけでした。学校の勉強をちょっと復習したかな?という程度で、決して「勉強漬け」ではありませんでした。日曜日だけ、予定を消化した後に4時間くらい勉強しましたが、平日はあまり勉強せず。
ただ、学校の定期試験の前にはしっかり勉強しています。それでも平日は2時間ちょっと、休日は5~6時間くらいでした。この頃はコロナで学校が休みになりましたが、その時は家で運動するようにして、のんびり過ごしましたね。
――鉄緑会に入ったのはいつ頃でしたか?
中学3年生になってからです。中1の頃から入りたかったのですが、「中2までは学校になれるのが優先」と親に止められていました。
通っている友達に見せてもらったテキストが面白そうですし、塾に憧れもありました。学校の授業を先取りして、どんどん発展的な内容を教えてもらえるなんて、すごく素敵じゃないですか。だから、中3で「学校になれたから」と入塾許可をもらえた時は、とても嬉しかったですね。心配だったカリキュラムの遅れに関しても、小学校の頃までくもんに通っていたおかげで基礎的な事項は全部頭に入っていましたし、英語も数学も、別で習ったり参考書で自習したりしていたので、ついていけないほどではありませんでした。
もちろん、鉄緑会の勉強は楽しいばかりではなく、大変でもありました。宿題は毎日やらないと終わりませんから、放課後は毎日勉強。平日3時間程度、休日も5時間くらいは机に向かっていました。
忙しい合間を縫って、1日5時間〜8時間は勉強
――高校生活はどう過ごしていましたか?
高1の間も、基本的には中3までと同じようなスケジュールでしたが、1月になると数3と化学が増えます。高1の化学は学校の内容と被っていてそんなに苦労せず、数3も導入で軽かったので負担は大きくありませんでした。
問題は高2。中高6年間で一番忙しい時期でした。鉄緑会の科目が激増して週4日通うようになり、宿題や予習復習の負担も倍増。さらに母校では、高校2年生の代が中心になって文化祭や部活の運営を行うので、部活も忙しければ、勉強も手を抜けない。
部活は中1から卓球部。桜蔭には活動が週に1度の軽い方と週3度の厳しい方の2通りの部活があり、私は厳しい方に所属しました。さらに私は生徒会活動もやっていて、文化祭の各団体の申請予算の確認や用途を確認する作業が入りました。夜中の12時~1時まで作業したり、勉強したりする日々が続きました。
飽きるほど勉強したクリスマス模試
――それは大変ですね。その状態の中で、勉強時間はどのくらい確保していましたか?
朝は7時に起床して、30分で準備して家を出発。授業を受けて、部活や塾がある日は参加してから帰宅、ない日は即帰宅します。本当なら部活があっても勉強すべきですが、やっぱり体力的にきつくて、寝てしまう日も多かったですね。
だからこそ、部活と塾が重なっている日は、逆にチャンスでした。塾に行けば、強制的に自分を勉強させられますから。もちろん、塾が終わったあとも、授業が時間通りに終わって早く帰れれば、自宅で自習します。
忙しい合間を縫って、1日5時間〜8時間は勉強しました。部活を11月に引退してからは鉄緑会の高3クラス決めテスト(クリスマス模試)一直線で対策勉強。
さすがに勉強しすぎて、クリスマス模試前には勉強に飽きてしまい、本番もあまり手ごたえがありませんでしたが、平均があまりよくなかったので、順位的には上の方でした。おかげでSA1クラス(最上位クラス)に入れましたし、結果だけ見れば悪くないのかなと。
ただ、反動なのか、クリスマス模試後は全く勉強しませんでしたね。高3になってから「高2の春休みにやっておけば……!」となんど悔やんだことか。
――なるほど。高3になってからは、どのように過ごしていましたか?
高3になると、部活も生徒会もなくなって、高2より余裕ができます。12時までに床に就き、毎日6時間~7時間は寝られる生活に。家ではもちろん勉強漬け、休日は最低8時間以上机に向かったのではないでしょうか。
模試の結果は、夏も秋も河合がAで駿台がB。駿台でも一度くらいAを取りたくて頑張りましたが、結局取れず。悔しかったですね。ただ、落ちるとは思っていませんでした。3学期になって学校がなくなってからは、ずっと家にこもって勉強。平均9時間くらいはやりました。ただ、この勉強時間は結構あいまいな部分があります。
――勉強の管理方法や直前期の工夫はありましたか?
1週間単位で「○曜日は○○をやる」と決めて、その内容が終わるまでやり続け、時間で管理はしませんでした。時間ではなく、やるべき内容の量と質で勝負したほうが建設的だと思います。
スマホの電源OFFで誘惑に打ち勝つ
――他の塾や習い事の経験について教えてください。
塾は中1と中2で日米会話学院という英会話スクールに通いました。もともと家族が通っていて、英語はスピーキングを鍛えたほうがいいと聞いたためです。
基本的には教科書の内容を見てスピーチなど、体験型で楽しかったですね。ただ、鉄緑会に通い始めてからは、そっちの英語で十分力が付くと判断したので、会話学院は退会しました。
あとは、幼稚園から小5までくもんに通いました。内容は算数(のちに数学)と国語、あとから英語も追加されました。いとこがやっていて、憧れたんですね。こちらは、中学受験が忙しくなってきたタイミングで辞めました。
勉強場所は基本的に自室。教科書とか過去問、休みたくなったときのベッドがあり、おなかがすいても食事が準備できるなど、不便がありません。
もちろんスマホなど誘惑はありますが、高3からはスマホの電源をオフにして対策していました。
――各教科の対策について具体的に教えてください。
国語はあまり対策しませんでした。共通テスト2カ月くらい前から触れ始めて、2週間前からは毎日過去問を解きました。古典は中2の授業でひと通りの文法をやりましたし、単語は『Look@古文単語337』を高2の後半くらいから始めました。あとは、入試直前2週間前くらいからも単語を詰め込みました。
数学は好きだったので、ずっとやっていましたね。中2までは『高校への数学』をメインにやって、自分でも白チャートを買ってきて1Aと2Bを終わらせました。
中3からは鉄緑会の勉強がメインに。高3になると塾の授業も落ち着きますが、私はさらに応用問題が解けるようになりたかったので、計算が複雑な数3の問題などの対策を兼ねて、東工大(現東京科学大)や京都大学の過去問をあさりました。
あとは『大学への数学』を解いたり、チャート式の『医学部入試数学』(通称黒チャート)に手を出したり、いろいろと難しい問題を探し回りましたね。

数学の学習ノートを見せてもらった(写真:本人提供)
英語は中2まで日米会話学院のお世話になり、中3からは鉄緑会のテキストをメインに勉強しました。
分詞構文など、細かい文法的な話はあまり意識せずに話していましたから、そういった話をしっかり学べるのはいい機会でしたね。自分でも文法的に読む癖をつけようとして『英文解釈教室』という参考書を買ってきたりもしました。

英語の学習ノートは左右に書き分けられている(写真:本人提供)
英語のリスニングは息抜き感覚で
直前期には、英語の先生からすすめられたリスニング対策と洋書購読をしました。リスニングは英語のYouTubeを観て聞き取りを強化。おすすめは科学系のチャンネルである『Veritasium』です。実験を実際にやってみて検証するなど、「実験➡実証」の流れに毎回忠実で、科学とはこうあるべきといった姿勢に驚かされます。
あとは、K-POPも好きなので、アイドルの英語インタビューを聞くなどして、とにかく息抜きの感覚で耳を慣らしました。洋書購読ではポール・オースターの『Moon Palace』とジョージ・オーウェルの『1984』を選択。特にオーウェルのほうは有名な書籍ですが日本語版で読んだことはなく、両方とも初見で英語版にチャレンジしました。
理科はあまり好きではなくて、高2は割とサボっていました。高3から本格始動しましたが、基本的には鉄緑会の勉強しかやっていません。『確認シリーズ』と、塾で配布された問題集くらいですね。
社会は公共、政治・経済を選択。高1と高2の授業をちゃんと聞いていたので、ざっくり内容は頭に入っていて、共通テスト2週間前から過去問を解きまくって知識の抜けを補充するようにして対策しました。
参考書も何か買いましたが、全部は読んでいません。あまり力を入れていないように感じられるかもしれませんが、これは夏の共通テスト模試で80%くらいとれたので、もういいかな、と考えていたからです。
20年分以上の過去問を解いた
――過去問対策はどれくらいやりましたか?
共通テストの過去問は、国語と社会が10年くらい、数学が3年くらい、英語と理科が5年くらいと、それぞれ予想問題集を5回分解いています。
二次試験過去問は、国語が鉄緑会の講習で4~5年くらいプラス、過去問通しで3年分。数学は1980年代後半から2005年までと、2015年から直近まで全部やりました。2005年から2015年までが穴抜けになっているのは、鉄緑会の問題演習でやるからです。
また、「1990年代が難関で2000年から易化傾向にある」と聞いたことがあったので、なるべく難しい問題に触れておきたいと考えたことも大きな理由です。
英語は塾の演習で過去問をやりまくっているので、単純計算で20年分くらい解いているかと思います。プラス、直前に3年分くらい自分でも解きました。英語の先生から、リスニングや洋書購読するほうが良いと聞かされていたので、過去問よりもそちらに注力しました。
理科も高3の秋から塾の演習で過去問をたくさん解いていますが、こちらはプラス10年分自分で解きました。
――共通テスト・二次試験の手応えはどうでしたか?
共通テストの本番は、数学1Aで大失敗して、とても焦りました。よりによって大問一からつまずいてしまった。
家に帰ってから考えたら単純に式変形するだけの問題だっただけに、本当につまらないミスをしたと感じます。国語もあまり自信がありませんでしたね。化学も普通に難しくて、試験後はずっと「やばいかも」と落ち込んでいました。
ただ、自己採点では90%超えましたし、もともと共通テストに苦手意識があって、模試でも90%ギリギリなのがほとんどだったので、むしろいい感じの結果が出て、メンタルは安定しました。
二次試験1日目の国語はそこそこできたのに対して、数学が非常に難しかった。第1問はただ計算するだけで簡単で、「よし、この調子で行くぞ!」と思ったら第2問でペンがストップ。第3問は計算が面倒くさすぎるし、4問以降も難しくて、結構テンパりました。3完は無理でしたね、できて2完、60点くらいでは?といった手ごたえ。もちろん終わったあとはめちゃくちゃ焦りました。2日目も行きたくなくなっちゃって、大変でした。落ち込んでいたので自己採点はやっていませんが、結局開示は75点ありました。
二次試験2日目は、物理がすごく早く終わって、化学に90分もかけられました。みんな化学が難しい難しいと騒いでいたようですが、私はもともと化学が苦手で点数を稼ぐつもりもありませんでしたし、そもそも「めちゃくちゃ難しい」のと「難しい」の区別がつくほどのレベルになかったこともあって、そんなに影響はありませんでした。
いつも通り解いて、割と頑張れたかな、といった印象です。開示は化学が39点と、いつも通りの点数を出せたのに対して、平均は下がっているでしょうから、相対的には上のほうに食い込めたのではないでしょうか。
英語はいつも緊張しないのに、今回は英作文が思い浮かばず、いつもは足りるはずの時間が足りなくなりました。リスニングの時に誰かのスマホが鳴り出すアクシデントもあって、集中が途切れたことも大きかった。わりと失敗した印象で、90点以上が目標だったのに開示は87点でしたから、もうひと声ほしかったかな、と思いますね。
自信を持ち続けることで心が安定する
――受験勉強中のメンタル管理についてはどう意識していましたか?
勉強にストレスはありませんでしたが、直前期はやりすぎて飽きていました。飽きがこないように人と話したり、音楽を聴いたり、歌ったり、そういった行動が日常にメリハリをもたらして、メンタルの安定につながったのかなと感じます。やっぱり、合格まで精神状態を安定させ続けないと、出力が安定しませんから。
寝たり、美味しいものを食べたり、人と話したり、そういった息抜きの手段を持つべきでしょう。また、自信を持ち続けるのも大事かもしれません。私自身、受験するまで「まぁ落ちないだろう」と常に楽観視する根拠のない自信がありました。悲観的になりすぎてもしょうがないので、ある程度は割り切って自信を持ち続けると、メンタルの安定に役立つかもしれません。