「2億り人になった56歳」の"意外なお金の使い方"

56歳で「2億り人」になった東山一悟さん(写真左)に、くらまがインタビュー(編集部撮影)
2億り人がおすすめする「投資法」
東山さんはFXで大損し、リーマンショックでの株価暴落から2000万円あった資産を500万円まで減らした過去を持つ。しかし、再び資産を増やし、“2億り人”になれた秘訣は「インデックス投資」にあるという。
【写真】けっこう手堅い?「2億り人」の“意外な資産内訳”
投資信託やETF(上場投資信託)に代表されるインデックス投資なら、平均年収の人が節約貯金をしながらコツコツ積み立てていけば、30~40年後には1億円になってもおかしくない、と東山さんは言う。焦って短期で資産を増やそうとせず、長い目で見ることが大切なのだ。
「過去の20~30年のチャートを見ても、年平均リターンが10%近くになっていたりします。そうすると7年で倍増するんですね。だから倹約貯金を仕組み化して、種銭をつぎ込んでいけば、30~40年後、そのときの市場環境によっては、1億円の資産形成は十分達成できるかと思います」
東山さんがインデックス投資でおすすめする指数は「全世界株式(オール・カントリー)」だ。
「さまざまな本を読んで勉強してきました。その中で、アメリカの経済学者・シーゲル氏が書いた個人投資家向けの株式投資の名著がありまして。彼は米国株よりも、全世界株式のほうがいいとすすめているんです。私はその考えに習って全世界株式にしています。でも、これは個人の好みや考えによりますし、全世界株の6割くらいは結局米国株ですから、S&P500のような米国株に投資してもそれほど大きな差はないかもしれません」
東山さんは前回の記事で紹介した倹約生活でコツコツと貯めたお金と、さらには2012年に相続した父の遺産を元手に堅実にインデックス投資を積み重ねてきた。すると、2008~2012年の4年間で資産が500万円から2000万円に。投資で大損する前の貯金額に戻すことができた。
「嬉しいというよりも、とにかくホッとしましたね。実はFXで大損したとき、妻にも誰にも言っていなかったんです。でも2000万円まで戻ったので、万が一バレても、もう離婚されずに済むという安心感が一番大きかったですね」
ビットコインは儲かったけど「もうやらない」
2020年に新卒から勤めた新聞社を早期退職した際には、「割り増し退職金」が支払われたため、これもインデックス投資に回した。
「2020年はコロナショックで株価が底値でした。退職金の額は言えないのですが、ある程度まとまった額をいただき、インデックス投資に全部つぎ込みました。そしたら円安もあり、現在2.5倍くらいになっています。運がよかったですね」
いわゆる「○○ショック」のときは、長期投資の大きなチャンス。最近(2025年4月)にはトランプ大統領の関税ショックがあった。
「関税によるダメージはありますが、本質的にその銘柄がダメになるかというと別の話です。あくまで空気感で下がっている部分もありますから、長期投資を考えるうえでは、○○ショックはチャンスなんですよね」
FXで懲りたものの、“攻めた投資”も少しだけまたやってみた。
ビットコインを1BTC=250万円くらいのときに購入して、それが約2.5倍になった六百数十万円のときに売却。
「いまも持っていれば1500万円くらいになっていましたが、やはりビットコインは毎日の値動きが怖いので早々に切り上げちゃいました」
投機的な株も一度挑戦したことがある。
「その会社の創業者の方が『うちはこれからすごいことをやるから儲かります』って言って、半年で50倍ぐらい上がった株があったんですよ。SNSで話題になっていたので、私もそれに投資して6倍ぐらい儲けました」
だがビットコインも、投機的な株も、どちらも運の要素が強い。
「もうこれで運は使い果たしたと思っているので、これからはひたすらインデックス投資のみにしようと考えを切り替えました」
東山さんの資産配分
こうしてインデックス投資を中心に資産を増やしてきた。2025年の現在、東山さんの資産は約2億円。資産内訳は以下の通りだ。
・投資信託:1億円
・株式+ETF:5000万円
・個人向け国債:1800万円
・iDeCo(イデコ):1400万円
・学資保険:300万円
・預貯金、MMF(マネー・マネージメント・ファンド):3500万円
投資の収益は年によって異なるが、2024年は4000~5000万円くらい。これは株の配当金収入も合わせた金額だ(配当金収入は70~80万円くらい)。
現在勤める会社の年収は、約300万円。定時にきちんと帰宅できる職場環境はホワイトで、今の暮らしが気に入っているという。
「職業柄仕方がないことなのですが、前職の新聞社がひたすらブラックでした。週2回は会社に泊まり込み、休日でも大きな事件があったら現場に行かなきゃいけないんですよね。東日本大震災のときは月に1日休みがあったぐらいでした。
そういう職場環境なので、家族旅行にも行けません。自分が担当するエリア外の都道府県に出る場合には、事前に上司の許可取らなくてはいけませんでした。
それに比べたら、今の職場は労働時間が半分になり、土日もしっかり休めて、どこに行くのも自由。仕事も自分が関心のあることを追求できて、好きなことをさせていただけてお給料もいただけるなんてありがたいです」
収入は下がっても、資産がある。仕事に心をすり減らすこともない。ゆとりのある生活で心も安定したという。心がささくれ立っていた以前とは違い、現在は周りの人に対しても優しくなれるのだという。
東山さんのお金の使い方3つ
根っからの倹約家で2億り人となった東山さんだが、これからはお金を使うことも大切にしていきたいという。
『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著)という書籍がある。FIRE生活を送る人のバイブルのような本で、「お金は人生を楽しむための手段。最大限の経験につぎ込んで、死ぬときにはできるだけ使い切ろう」という人生哲学を短くわかりやすく説いたものだ。
東山さんもこの本を参考に、大きく3つの使い道を考えているそうだ。
① 家族のために使う
まず1つ目は家族のため。現在15歳の娘の進路がこの先どうなるかはわからないが、やりたいことを応援する学費はしっかり出したいと語る。
あとは、実家の改築費である。
「両親はもう亡くなっていますが、築50年くらいの実家はまだ残っています。耐震診断で、地震がきたら潰れてしまうという結果が出たため、改築する必要がありまして……。実家と学費に、数千万円は使う予定です」
② やったことのない体験に使う

(画像提供:東山一悟さん)
2つ目は、“体験”にお金を使うこと。
「私は今56歳で、あと何年生きるかわかりません。できるだけ人がやったことのない体験をしようと思っています」
最近体験したのは、栃木県にある特撮の聖地での撮影体験だ。
そこは、仮面ライダーや戦隊ヒーローものの爆破シーンを撮影する場所として知られている。個人でもまるで特撮シーンのような写真を撮れるツアーがあるという。
「あとは、東京湾のナイトヘリツアーに参加したり、長野県の八ヶ岳にある日本一標高の高い露天風呂に行ったりしました」
バブリーなお金の使い方だが、なかなかできない非日常的な体験は“思い出という資産”になりそうだ。
③寄付する
3つ目が寄付だ。
年間400本くらい映画館で映画を見るという、筋金入りの映画好きの東山さん。クラウドファンディングで制作費や上映費を募集している映画には積極的に寄付しているという。
「ウクライナの映画を日本で上映するためのクラウドファンディングに参加したのですが、これには俳優の斎藤工さんも参加していまして。映画のエンドロールに協力者の名前が並ぶんですよね。私の名前が斎藤工さんと一緒に流れたのを見て、「ああ、俺はもうイケメン俳優と一緒の扱いだ」と嬉しく思ったりしました(笑)」
その他にも東山さんは寄付を積極的に行い、国から紺綬褒章を授与されている。紺綬褒章は、公益のために私財(個人は500万円以上、団体は1000万円以上)を寄付した人を対象に授与される。

東山さんが授与された紺綬褒章の賞状(画像提供:東山一悟さん)
「今までトヨタの豊田章男会長や歌手の安室奈美恵さんが貰っている勲章です。一般市民の私がそんな人たちと並び立つなんてありえないじゃないですか。でも寄付をして国から勲章をもらえば、ある意味同じ扱いになるのがなんか嬉しくて。さらに、紺綬褒章は天皇陛下からいただく形になっていて、私の世代になるとそのことに感動しますね」
何よりも、団体や誰かの活動を手伝うと、心がほっこりするのだという。
資産を増やすには「今日から“仕組み化”」を
東山さんにとって、節約とは?
「お金は、自分の人生を豊かにする選択肢を増やせるという点で、非常に重要なわけです。節約プラス投資によってお金が増えれば、人生は豊かになる可能性が十分あると思います」
そのために必要なのが、「仕組み化」だ。収入の何パーセントかをあらかじめ天引きに設定して積み立て投資に回す体制を整え、それを長年にわたって継続する。こうした行動をコツコツ続けていけば、お金に困らない人生を送れる可能性は高くなると東山さんは強調する。
「私の好きな言葉で、『今日が一番人生で若い日』という言葉がありますので、まさに今日から始めてみたらいかがでしょうか? 」
(構成:横田ちえ)