【独自解説】日本の教育は近現代史を教えない…『戦後80年』であらためて知る靖国神社 現地に行かないと見えないものとは― #戦争の記憶

 政治家の参拝などを巡り常に賛否の声があがっている『靖国神社』ですが、実は、祀られているのは戦争で命を落とした人たちだけではありません。戦後80年となる今年、“二度と同じ過ちを繰り返さない”という思いを込めて、読売テレビ・高岡達之特別解説委員が解説します。

■あらためて知る靖国神社と慰霊の地

読売テレビ・高岡達之特別解説委員 ©ytv

 終戦の日は8月15日ですが、2025年は1年を通じて『戦後80年』といわれています。日本はいろんなタブーがあり、他の国に比べると一番近現代史を教えていないと思っているので、靖国神社と『戦後80年』を一から考えてみたいと思います。

硫黄島の日米合同追悼式 ©ytv

 まず、8月は『原爆の慰霊の日』も続くので平和への関心が高まりますが、1年を通じて先人を悼む日は続いています。例えば、毎年3月下旬には、硫黄島の日米合同追悼式があります。これは沖縄の米軍も来て、大変な式典を行います。今年は石破首相も行きました。

広島・呉の「戦艦大和」の追悼式 ©ytv

 4月7日は、広島・呉で行われる『戦艦大和』の追悼式です。今も自衛隊の大きな基地がありますが、実は呉には、軍艦ごとにお墓があります。かつて日本海軍の大きな基地だったので、ここから出港して戻らぬ艦(ふね)がたくさんありました。それぞれの船が撃沈された日が命日になっていて、4月7日は戦艦大和の命日です。

千鳥ヶ淵戦没者墓苑の拝礼式 ©ytv

 そして6月23日には、沖縄の『全戦没者追悼式』があり、8月6日・9日には広島と長崎で『原爆犠牲者の慰霊』があります。

 注目していただきたいのは、5月下旬に行われる、国営の公園扱いとなっている東京・千鳥ヶ淵戦没者墓苑での拝礼式です。靖国神社のニュースが流れる際に、「天皇家が参列されない」「内閣総理大臣が私人なのか・公人なのか」とよく言われますが、この拝礼式には皇族がお見えになります。そして、内閣総理大臣も出席します。

 ここには、軍人・民間人を問わず、これまでの日本の戦争で名前がわからなかった方や、故郷に帰れなかった方が37万柱いらっしゃるので、これは皇族も総理大臣も行くことになっています。

意外な理由… ©ytv

 なぜ拝礼式が5月下旬なのかを、全力で調べました。すると、厚生労働省から“びっくりする返事”が返ってきました。「気候が良いから」ということですが、これには非常に深い理由があります。全国から関係者や高齢者も来る中、外で立って拝礼していただくのに、気候的に一番良いからということです。

 そして、閣議決定しているわけではないですが、毎回5月の最終月曜と決まっています。政治のスケジュールだとまだ国会がやっていて、火曜日や金曜日だと閣議や委員会があったりするので、5月の最終月曜日になるという、なかなか深い理由がありました。

■早朝から靖国神社を訪れる人物とは…

靖国神社「神門」 ©ytv

 では 、メインテーマの『靖国神社』についてです。“神社なんていつ行ってもいいのでは”と思いますが、ちゃんと時間が決まっています。明治天皇がお造りになったので、『神門』には1m50cmの菊の御紋があり、その奥がお参りするところになります。

 3月~10月は、朝6時になると、この御門が開きます。写真はいつもの風景なので、お参りのために待っている方がいます。夕方6時には閉まり、冬はもっと早いので、夜中に行っても入れません。

朝は政治家に会える? ©ytv

 実は、靖国神社だから会える人もいます。早朝に行ったことがありますが、意外に政治家が来ます。最近の若い政治家に会うことはあまりなかったですが、名前を出してもいいかなと思う人が二人…。

 社民党の党首で総理もされた村山富市さん。今もお元気でいらっしゃいます。そして、お亡くなりになりましたが、元自民党の幹事長で、内閣の官房長官もされた野中広務さんです。朝6時に行くと、当時は議員宿舎が近かったこともあり、ウォーキングの傍ら、お参りにお越しになっていました。

戦争経験世代には習慣となっている ©ytv

 共通しているのは、皆さん戦争経験世代で、中には「子どものとき」という方もいれば「兄弟が戦地に」という方もいます。皆さん、日常の習慣として、お見えになっていました。

■軍に関係している人たちや動物たちが祀られている

動物を祀る社も ©ytv

 ここには、動物たちも納められています。それも3つあります。そもそも明治天皇により創建された『招魂社』というお社が始まりで、根本的には戦没者約246万6000柱を祀っていますが、もっと正確に言えば、先の大戦だけではなく、戊辰戦争・日清・日露の戦役、そして第1次第・第2次世界大戦など日本が近代化して以降の戦争に携った軍人・従軍看護婦(当時の表記)・軍需工場の学徒などです。そして、よく議論になるA級戦犯も合祀されていますが、約246万6000柱は何かしら軍に関係のある方です。

軍犬・軍馬・軍鳩の像も ©ytv

 動物たちは、犬・馬・鳩の3つがいます。それぞれの祀られ方はありますが、犬と馬は兵隊と一緒に戦地に行きます。鳩は『伝書鳩』を軍隊が使っていました。指示をする紙を鳩がくわえて伝達していたこともあり、こういった動物たちを祀るところもあります。

世界各国の軍人が来ている ©ytv

 テレビの映像には映らないですし、カメラに映るのを嫌がる人もいますが、実は戦後になってからも、靖国神社には世界各国の元首・首脳・大臣クラスなど、軍人が結構います。日本の議論を知っている方もいれば、そうではない方もいます。“国のために倒れた軍人を祀っているところ”ということで、私が会った中東の軍人は、勲章をつけて制帽軍服で拝礼されていました。各国の大使や公使も来られます。

亡くなった全ての日本人は“310万人” ©ytv

 約246万6000柱は軍隊に関わった方々ですが、民間人もたくさん亡くなっていて、実は年々増えています。というのも、後遺症で亡くなる方もいるので、先の大戦で亡くなったのは民間も軍人も入れて310万人という数を、私たちは覚えておきたいと思います。

■多くの記憶を残してくれている『遊就館』

資料や遺品などの多くの記憶 ©ytv

 『靖国神社』は、メディアによっては、ここに行くこと自体が「戦争賛美だ」という決めつけ方をするところもあります。私は毎年行きますが、全くそうは思いません。ここには、純粋に資料や遺品という目で見れば、今の時代にいろんな記憶を残しているものがたくさんあります。

兵隊たちが使用していや装備品 ©ytv

 例えば、当時の戦闘機もそのまま置いてありますし、現場で兵隊たちが使っていたヘルメットや、食事の道具もあります。大変失礼な言い方ですが、なんとも質素で粗末なもので、あの時代に世界最強といわれたアメリカと戦ったんだなということが、ここに行くとよくわかります。

遺書が多く納められている ©ytv

 そして、戦地で亡くなったのは、若い方が多かったんです。日本で最も多くの遺書が納められている場所でもあります。家族のことや感謝の思いを書いているもので、展示しきれず、期間を区切って、どんどん展示を入れ替えています。お社の横にある『遊就館』に行けば見られるので、行っていただきたいです。

全国から集められた花嫁人形 ©ytv

 そして、全国から納められた花嫁人形がたくさんあります。戦場で命を落とした息子たちが妻や家庭を持つこともできなかったため、母親たちが全国から「せめて人形を」ということで、納められています。これらを知らずして「戦争賛美だ」などと言うなと、参拝した私としては思うところがあります。

■自分の目で見て感じる戦争の歴史…現地に行かないと見えないものとは

8月15日の様子 ©ytv

 写真は2018年8月15日の靖国神社の様子ですが、朝早い時間から、たくさんの人が開門を待っています。この日は、「靖国神社を参拝しよう」という方、あるいは反対する方、どちらもお参りに来ます。そして、平和を願って鳩を放つ行事もあります。

全国戦没者追悼式の音声を中継 ©ytv

 8月15日の靖国神社は、実は正午に向けて、どんどん人が集まってきます。正午の少し前から、通りを一つ挟んだ日本武道館で、天皇皇后両陛下が来られて全国戦没者を悼む式典があります。この音声だけが、靖国神社の中に中継されます。

正午になると一斉に黙とう ©ytv

 正午前の時報のあたりから皆さん姿勢を正し、正午の時報が鳴った瞬間に、一斉に黙とうされます。他の国の方もいますし、家族連れ・賛成する方・反対する方も、皆さん黙とうされています。

全ての音が“止まる”1分間 ©ytv

 これは私の印象ですが、夏でセミの声もすごいのに、セミも遠慮するのかと思うぐらい、全ての音が“止まる”1分間です。ぜひとも機会があれば、体験していただければと思います。

家族連れが増えたのは… ©ytv

 また、私の印象ではありますが、ここ10年、コロナの時期を除いて、家族連れで来る方が増えました。これは“国の守りを考えるため”ということもあったかもしれませんが、“既存のメディアに対する信用がない”こともあるのだと思います。そして、SNSでも賛否両論があります。だから、「自分の目で見てみよう。自分で行って、自分で感じてみよう」と思う方が増えているのは、大事なことだと思っています。

行って「感じる」は「人それぞれ」 ©ytv

 行って「感じる」のは「人それぞれ」です。靖国に行ってから「国の守りをしなければいけない」と思う方もいますし、花嫁人形の話を聞いて「やはり戦争に行かせてはいけない」と思う方もいます。でも、“行かないと見えない”ということを、申し上げておきたいです。

時間切れで「教えない」 ©ytv

 最後に、この国で一つ残念なのは、“日本は一番近現代史を教えない”と言いましたが、日本は歴史が長く、世界に誇るべき国です。しかし、その国が時間切れで「教えない」というのは、良くないと思います。特に若い世代が、これから世界と渡り合っていく時に、一番近い時代のことをどう考えているのか…。靖国に行くことから考えを始めてみるというのも、一つの手ではないでしょうか。

(「かんさい情報ネットten.」2025年8月12日放送)