「久々に胸が熱くなった」“ならず者”のヒーローが活躍するMCU作品が描いた“過去”と“陰”に共感<サンダーボルツ*>

「サンダーボルツ*」はディズニープラスにて見放題独占配信中
アベンジャーズに代わって世界に襲いかかる危機に立ち向かうことになった新チームの活躍を描いた「サンダーボルツ*」が、8月27日に配信された。同作は5月2日に日米で同時劇場公開され、全米で初週の興行ランキング1位を記録、日本でも興収10億円を突破する大ヒット。公開当時から“異色のヒーロー”たちの活躍にファンが熱狂し、「久々に胸が熱くなった」「どう考えても面白過ぎた」「エンドゲーム以来の最高傑作」などと、話題を集めた。(以下、ネタバレを含みます)
「サンダーボルツ*」とは?
“アベンジャーズ”といえば、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ハルク、ソーなど、個性的なパワーを持った最強のスーパーヒーローチームだが、「サンダーボルツ*」に登場する新たなチームは、かつてヒーローと敵対し、数々の悪行を重ねた“ならず者”たち。ある意味、アベンジャーズとは対照的な存在だと言える。
正義のヒーローも憧れる存在だが、“過去”のある得体の知れない感じのキャラクターたちもやはり引かれるものがある。この作品に登場する面々は一癖も二癖もあるキャラばかりで、知れば知るほど興味深くなり、気付けば感情移入してしまっている。
中心人物は、フローレンス・ピューが演じるエレーナ・ベロワ。「ブラック・ウィドウ」にてスカーレット・ヨハンソンが演じたナターシャ・ロマノフ(ブラック・ウィドウ)と偽の家族の姉妹として過ごし、のちに“姉”ナターシャの意志を継ぐような存在になっていった。スパイ養成機関“レッドルーム”で高度な訓練を受け、暗殺者としての素質も十分。
デヴィッド・ハーバーが演じるレッド・ガーディアンことアレクセイ・ショスタコフは、ナターシャ、エレーナと共に偽の家族を形成していて、“父”として振る舞っていた。豪快さが特徴で、娘たちへの愛情も強く、ちょっとズレたところはあっても憎めないというか、愛されキャラ的な存在だ。
ワイアット・ラッセルが演じるジョン・F・ウォーカーは、ドラマシリーズ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」で初登場したキャラ。“初代キャプテン・アメリカ”ことスティーブ・ロジャースの引退後、政府が“2代目キャプテン・アメリカ”として彼を選出。軍人として優秀だったジョンだが、スティーブの後継者というプレッシャーに負けてしまい闇落ち…。欠点も多いが、その“人間味や人間らしさ”が彼の良さでもあるように感じる。
ハナ・ジョン=カーメンが演じるゴーストことエイヴァ・スターは、「アントマン&ワスプ」で登場したキャラ。幼い頃に量子トンネルの実験事故に巻き込まれたことでゴーストという名の通り、物質をすり抜けるフェージング能力を身に付けた。根っからの悪者ではなく、生き延びるために悪事を働いてしまっていたので、いろんな葛藤が感じられて見ていて肩入れしてしまうキャラでもある。

「サンダーボルツ*」より
新キービジュアルで“消えた”タスクマスター
オルガ・キュリレンコが演じるタスクマスターことアントニア・ドレイコフ。レッドルームを運営するドレイコフの娘だったアントニアは、幼い頃に瀕死の重傷を負ったが、ドレイコフが彼女の首にチップを埋め込み、暗殺者“タスクマスター”としてよみがえらせた。観察しただけで相手の動きをコピーする写真反射能力(フォトグラフィック・リフレックス)を持っていて、それ故に戦うごとに強くなっていくという恐ろしい存在…なのだが、この作品では割とあっさり「え?」と思わせる場面が。
そして、エレーナ同様に重要なキャラクターとして、セバスチャン・スタンが演じるバッキー・バーンズが登場する。「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」から登場している“ウィンター・ソルジャー”として知られるおなじみの人物。スティーブの幼少期からの親友で、第二次世界大戦時に戦死したと思われていたが、実は捕虜として生存していて、実験中に超人血清を投与されて謎の暗殺者“ウィンター・ソルジャー”に。
捕虜になったり、洗脳されたり、苦難の道を歩んできたバッキーだが、アベンジャーズのいない世界で、正義のために戦うべくブルックリンの下院議員になっていた。

「サンダーボルツ*」より
至る所に重くて暗い陰を感じさせる作品
「サンダーボルツ*」という作品の軸にあるのは“過去”と“陰”。オープニングからエレーナが超高層ビルの屋上から陰鬱な表情を浮かべながら飛び降りるところもそうだし、「一人始末すればあなたにふさわしいヒーローの座を与える」と言われて雇い主ヴァレンティーナ・アレグラ・フォンテーヌ(ジュリア・ルイス・ドレイファス)からの仕事を請け負うが、それが自分を抹殺する罠だったり、至る所に重くて暗い陰を感じさせる。
ヴァレンティーナの罠は、エレーナがジョンやゴースト、タスクマスターと殺し合いをさせるように仕向けられていて、殺し合いが完遂できなくてもその場に閉じ込め、全員まとめて焼き尽くしてしまうという残忍なものだった。
それがきっかけで敵対する者同士が協力し、新チーム結成の足がかりとなったのだから人生は分からない。
そこで出会った謎の男・ボブ(ルイス・プルマン)が本作のキーマンとなる。紛れ込んでいた一般人だと思われていたボブだが、罠を回避して外に出たとき、待ち受けていた特殊部隊の前に飛び出して自ら囮になり、一斉射撃を受ける。しかし、ボブは服が破れただけで体は無傷だった。
実は、ボブは“セントリー計画”という名の人体実験の被験者で、実験の“証拠”として消去されようとしていたということだった。覚醒した後の彼はとてつもないパワーを持った“セントリー”であり、エレーナたちが束になっても歯が立たない。
ヴァレンティーナがエレーナたちを抹殺するようにセントリーに命じるが、優しくしてくれたエレーナたちに対してそんなことはできないと思い、命令に従わなかった。だが、“キルスイッチ”を作動させたことで彼の中の邪悪な人格“ヴォイド”が解放されてしまう。ヴォイドは手をかざして人間を“影”にしてしまうという能力があり、「サンダーボルツ*」の世界に充満する“陰・影”を象徴している。
もちろんマーベル作品ならではの迫力ある戦闘シーンやアクションも大きな見どころの一つではあるが、「サンダーボルツ*」で注目したいポイントは、それぞれのキャラクターの“内面”だ。抱えている心の傷、トラウマと向き合い、前に進もうとする。スーパーヒーローの集団ではないからこそ、その部分を深く描くことができて、より共感し、感情移入できる。
新チームを結成し、それぞれの“内面”が変化していく様子も含めて、楽しんでもらいたい。
「サンダーボルツ*」は、ディズニープラスにて見放題独占配信中。
◆文=田中隆信

「サンダーボルツ*」より