「山はもう最後かも…」暑さに根負け? 弱気なシニア女性のため「避暑登山プラン」実行! 場所と結果

■焼山峠に降り立った7月上旬, ■子授地蔵に挨拶し、登山道へ, ■山頂で山神様の粋な計らい, ■ハイカーの見地から気候変動を思う

田舎の農道を思わせる一筋の登山道

「もう足が弱っているし、猛暑の中では熱中症も怖いし、今年が最後だと思うので、どこか無理なく登れる山に付き合って欲しい」

筆者にとって山の先輩に当たる、知人シニア女性の一言からプランは始まった。

そんなご謙遜を。まだまだ登れるでしょう──。

そう思う筆者だったが、確かに、尋常じゃない暑さの中、アクセスの良い低山は過酷な日照りとの戦いになるし、かといって、人気の爽やかな高地登山は、一度足が遠のいてしまうと登るのが大変だし、予想以上に混んだりしていて気が向かない。

少ない登りで高地の山頂に辿り着ける山はどこだろう?

今まで意識したことがない山選びだ。「登山口が標高1,000m以上。山頂まで累積標高差が少ない」 そんな検索ワードで引っかかってきたのが「小楢山(こならやま)」。

山梨県の山梨市にある。登山口の焼山峠(やけやまとうげ)は標高1,526m。山頂は1,713m。一般の登山サイトで調べた累積標高差は315m。標高が100m上がると気温は0.6℃下がるので、単純計算で登山口は平地より9℃低いことになる。

ははあ、これだなあ。猛暑に行きたい避暑登山だ。

山梨県のサイトによると、ミズナラなど楢の木が多く、緩やかで気持ちの良い森を歩いて辿り着く山頂からは、富士山を眺める人気の山、とある。

良いではないか!

■焼山峠に降り立った7月上旬

そんなわけで7月上旬のとある土曜日早朝、筆者たちは焼山峠に降り立った。時刻は7時30分。約15台と事前に調べていた駐車場に、先着はまだ2台だけだった。

気になる暑さだが、この日は雨の翌日だったため、霧が立ち込めむしろ冷んやり。筆者の思惑とは裏腹に、避暑をする必要はないお日柄となった。

しかし、それでも、先輩の感動はひとしお。

「なんて静かなんでしょう! この山の空気に一気に出会えるなんて夢のよう」

この選択は間違いではなかったようだ。

■子授地蔵に挨拶し、登山道へ

■焼山峠に降り立った7月上旬, ■子授地蔵に挨拶し、登山道へ, ■山頂で山神様の粋な計らい, ■ハイカーの見地から気候変動を思う

子授地蔵に手を合わせて出発

準備に時間をかけ、8時、ゆっくりと出発。

登山口にある子授地蔵に挨拶をし、登山道に足を踏み入れる。道は原っぱにつけられたひと筋の踏み跡のように続き、田舎の農道を思わせる。序盤は、はじめに3つ4つ、ささやかな登り下りが続き、その後は、平坦な縦走路がずっと続いていく感じ。

何が面白いって、目に映る、道の両側を囲む森の景観の移ろいだ。雑木林、そして、広葉樹林、針葉樹林と、ほどよいインターバルでロケーションが入れ替わる。勢い盛んなシダの群生や八ヶ岳を彷彿とさせるような苔の密生も目に鮮やか。どこから飛んできたのだろうか、点在する岩の塊も野趣を盛り上げてくれる。

そして、この日の霧立ち込める天気も森の魅力を幻想的に演出してくれた。

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雑木林に囲まれる序盤の登山道

そうこうしているうちに新道・旧道の分岐点へ辿り着いた。往路には目の前の小ピークを緩やかに直登する新道を選んだ。復路は小ピークを迂回する旧道にしよう。少々、登りに物足りなさを感じていたので、ほどよい傾斜となった。

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フィールドには岩がゴロゴロ点在

「的石(まといし)」があったのは分岐点の先。ヤマトタケルが弓矢の練習に使ったという。夢窓国師(むそうこくし)もこの山を修業の地としたそう。ささやかなコース上なのに、ちょっとした歴史譚まであるのだ。

■山頂で山神様の粋な計らい

■焼山峠に降り立った7月上旬, ■子授地蔵に挨拶し、登山道へ, ■山頂で山神様の粋な計らい, ■ハイカーの見地から気候変動を思う

晴れていれば、山頂からは富士山を望む

スタートから約2時間、終盤で白樺林を進み、ツツジの群生地を抜け、山頂へ!

眼下に広がる甲府盆地、そして、あれに見えるは富士山! と、晴れていればなるはずだが……、残念ながら、この日、目の前に立ちはだかったのは濃い霧のカーテン。

「でも、この幻想的な感じも素敵。ここまでの道もホント景色が飽きなくて面白かったし、いい山! 秋にもう一度、シニアの仲間を連れて来たいわ」と先輩。

下界での弱気が一点、今後の登山に向けて意欲が湧いて来たようだ。

そんな我々の話を山神様が聞いてか、聞かずか、霧を少しだけ晴らして辺りをほんのり明るくしつつ、山頂からの景色を「チラ見せ」してくれた。

「またおいで。今度は全部見せてあげるから」

そう言っているよう。

■ハイカーの見地から気候変動を思う

気候が変動し、夏の登山が容易ではなくなってきた昨今。もちろん人類としては、争いなどさっさとやめて、地球環境の持続可能性に向けて協力して取り組みを進め、根本的な解決に努めることを望むが、いち個人として、熱中症から身を守りいつまでも安全に登山を楽しむためには、山選びも重要な対策の一つとなる。

今回、満喫した焼山峠から登る小楢山は、ひとつ難点として、交通手段が基本的にマイカーかタクシーとなり、アクセスに多少のハードルがある(塩山駅から柳平まで予約制のバスはある)。

しかし、登山口が標高1,000m以上の山を検索すると石割山、金時山、那須岳、日光白根山など、結構引っかかってくるもので、筆者も、今後の猛暑における山選びの考え方の一つとして頭に入れておこうと思っている。

■焼山峠に降り立った7月上旬, ■子授地蔵に挨拶し、登山道へ, ■山頂で山神様の粋な計らい, ■ハイカーの見地から気候変動を思う

八ヶ岳を思わせる苔の密生。累積標高差315mでこんな景観に出会える

【焼山峠から小楢山往復コース】所要時間

焼山峠 (0:00) → 新道・旧道の分岐点 (0:50) → 新道・旧道の合流地点 (1:10) → 小楢山 (1:40) → 新道・旧道の分岐点 (2:00) → 新道・旧道の合流地点 (2:10) → 焼山峠 (3:00)

歩行距離:約5.2km

累積標高差:登り 315m、下り 315m

合計所要時間:3時間