アイナ・ジ・エンドが『白雪姫』の歌声に涙も…「ここまで汚れのない声色って、なかなかない」

世界初のカラー長編アニメーションであり、真の“ディズニークラシック”として愛される不朽の名作『白雪姫』(37)が、実写ミュージカル版『白雪姫』(公開中)となってスクリーンに登場。白雪姫の心情やドラマチックなストーリーを鮮やかに表現した珠玉の楽曲たちも、観客を魅了し続けている。そこでMOVIE WALKER PRESSでは、ディズニー作品の大ファンで、一度聴いたら虜になってしまう唯一無二の美声と世界観を持つ歌姫、アイナ・ジ・エンドにインタビューを敢行。歌い手としての視点から感じた楽曲の聴きどころや、白雪姫の歌声が心を震わせる理由。ディズニー音楽から受けた影響など、たっぷりと語ってもらった。

『白雪姫』がミュージカルとなって現代のスクリーンに蘇った

「純度の高い歌声を聴くと、涙が出るんだと実感しました」

外見の美しさと権力に執着する邪悪な女王によって闇に支配されていた王国で、雪のように純粋な心を持つ白雪姫が巻き起こす奇跡を描く本作。『ラ・ラ・ランド』(16)、『グレイテスト・ショーマン』(17)などヒット作を手掛けてきた作曲家パセク&ポールが、音楽を担当した。

ディズニー作品が大好きだというアイナにとって、鳥やうさぎなど森の動物たちと交流を深めながら前に進んでいく白雪姫は、「身近にいそうな、どこか親近感のあるプリンセス」だという。最大の魅力だと感じているのは、「ピュアさ」。「おばあさんになった女王が白雪姫にりんごを持っていきますが、それを食べてしまうくらい人を信じられるのが白雪姫。人を信じられるというのは、強さですよね。すごくカッコいいなと思います」と惚れ惚れ。ミュージカルとして蘇った『白雪姫』では、楽曲や歌声からも白雪姫のピュアさをはじめ、映画の放つエネルギーをたくさん受け取ったと続ける。

白雪姫の最大の魅力は「ピュアさ」だと語ったアイナ・ジ・エンド

白雪姫が王国の現状を憂い、人々が幸せに暮らす世界を夢見ながら、“変わりたいのに変われずにいる自分”への葛藤を歌う楽曲「夢に見る 〜Waiting On A Wish〜」は、「映画館でそのシーンを観た時に、泣きました」とアイナ。オリジナル版で鑑賞したところ、白雪姫を演じたレイチェル・ゼグラーの歌声に心を鷲掴みにされたとのこと。「レイチェル・ゼグラーさんの発する声には、毒気が一切なくて。歌声に一点の曇りでもあれば、歌詞って届きづらくなるものだと思うんです。でもレイチェルさんは本当にピュアな歌声で、“願い”や“夢”を歌っていました。歌詞との共鳴具合が半端なかったですね。ここまで汚れのない声色って、なかなかないと思います。純度の高い歌声を聴くと、涙が出るんだと実感しました。レイチェルさんの歌声はとても魅力的で、尊敬します」とリスペクトを込める。

プレミアム吹替版のミュージックトレーラーも鑑賞したアイナは、白雪姫役の吉柳咲良の歌声も「ものすごく琴線に触れた」と感嘆しつつ、「和訳がすごい」と太鼓判。「映画のなかで、白雪姫が井戸の水に自分を映していると、亡くなったお父さんの笑顔が浮かんでくるシーンがあって。そこでは“願いの井戸”という歌詞が、シーンの映像や語感ともぴったりと合っていて本当にすごいなと思いました。“夢に見る”という誰にでも伝わる日本語で白雪姫の心情を表現しているところも、すばらしかった」と歌詞と映像、白雪姫の心情のリンクに驚きを隠せない。

「セリフに付随してメロディが乗っているような感覚を味わえるのが、ヴィラン曲の好きなところ」

白雪姫とジョナサンのデュエット曲「二人ならきっと」は、「色で言うと、ピンク色」

一人で思い悩んでいた白雪姫は、城の外へと誘ってくれたジョナサンと出会い、次第に彼と心を通い合わせていく。“一人じゃない”、“怖いけれど信じてみたい”という歌詞と共に、この人と手を取り合えば一歩踏みだしていけるのではないかという高揚感と恋の喜びを歌ったのが、白雪姫とジョナサンのデュエット曲「二人ならきっと」だ。

アイナは、「色で言うと、ピンク色。心が軽やかになったり、弾んだりするような曲」と同曲を表現してにっこり。ゼグラーとジョナサン役のアンドリュー・バーナップの歌声の相性のよさにも酔いしれたそうで、「アンドリューさんは、甘さも残るけれど、どしっと肝が座っているように感じられる声色をしていました。白雪姫のようなピュアな声色の相手だけではなく、ヴィラン系のキャラクターとも相性がいいんじゃないかなと。きっとどんな相手でもハモれる声色だと感じました。『二人ならきっと』は、そのよさが存分に発揮された楽曲だと思います」。さらに吉柳とジョナサン役の河野純喜(JO1)が見事なハーモニーを響かせたプレミアム吹替版の同曲も耳にし、「白雪姫を演じる吉柳さんの透明感ある歌声と、河野さんの少しハスキーでありながら、甘さも残る歌声。その歌声が合わさることによってかわいらしさが引き立つような楽曲になって、フレッシュなサウンド感に浸ることができます。プレミアム吹替版には、何度も聴きたくなるような魅力がありました」とそれぞれのよさを口にしていた。

圧倒的な存在感を放つ、妖艶で恐ろしい女王が歌い上げるヴィランソング「美しさがすべて」は、観客も震えるような迫力満点。雪のように純粋な心を持つ白雪姫の“本当の美しさ”に嫉妬し、命を狙う女王役を担ったのは、ガル・ガドット。プレミアム吹替版は、月城かなとが演じた。

「やっぱり女王はカッコいい!」と切りだしたアイナは、「懐の深いところを攻めていくマインドが、歌からも感じられました。メロディからも、女王の余裕を感じられるような楽曲」としみじみ。ディズニーのヴィラン曲では『リトル・マーメイド』の海の魔女、アースラが歌う「哀れな人々」がお気に入りだというアイナ。「まずセリフがあって、それに付随してメロディが乗っているような感覚を味わえるのが、ヴィラン曲の好きなところです。譜面とピッタリと合うように歌うのではなく、話し口調にしたりと、ヴィランはセリフが印象に残るように歌うことが多いような気がします」と語りつつ、「歌い終わりの語尾にゾクッとする」とヴィラン曲に隠された特別な味わいについてコメント。

女王の放つ迫力と妖艶なオーラに震える!

「『美しさがすべて』ならば、『美しければなんでもあり!』と歌ったあとに、『でしょう?』と続くフレーズがあります。『美しければなんでもあり!』で、もうこのフレーズは歌い終わったな…と思いきや、さらにそこを超えてもう一段階、圧をかけてくるのがヴィラン。これにはドキッとする!」と楽しそうな笑顔を浮かべ、「プレミアム吹替版の月城さんの歌声も、すごかったですね。言葉の壁を感じないような、ヴィランの迫力がありました。大拍手を送りたくなりました」と興奮を伝えていた。

「ディズニー音楽には、ステキなトラップがたくさん隠れている」

アイナ・ジ・エンドは、歌を届ける時に「等身大であること」を大事にしていると語る

アイナは、歌手としてゼグラーの表現力に刺激を受けることもあったという。「レイチェルさんの白雪姫には圧倒されました。『こんな人がいたんだ!』と、新しいミューズを目撃しているような感覚になりました。ピュアな波動をそのまま人の心に届けられるというのは、本当にすごいこと。心に刺さりましたし、まっすぐなエネルギーを持っている方だな、圧倒的なプリンセスだなと思いました」と絶賛。「私は斜に構えてしまうところがあるので…」とはにかんだアイナだが、自らが歌を届ける時には「等身大であること」を大事にしているという。「ステージでは嘘がつけないので、日々感じていることをステージでやるしかないと思っています。例えば“世界平和”みたいなことは、まだ私には歌えないなと感じていて。まずは身近な友達や家族が笑ってくれるような歌を歌って、それが連鎖していつか世界平和に繋がればいいなと思っています」。

2015年に楽器を持たないパンクバンド「BiSH」のメンバーとして始動、翌年メジャーデビューを果たしたアイナ。23年6月に惜しまれながらも「BiSH」を解散し、現在はソロで活動中。唯一無二の美声とグッと歌の世界へと引き込む傑出した表現力で、人々を魅了し続けている。作詞・作曲も手掛ける彼女だが、ディズニーの音楽からは多大な影響を受けていると告白する。

『白雪姫』は、「何度も聴きたくなる歌声ばかり!」

『リトル・マーメイド』のキャラクターで、平和な海の王国に住むカニのセバスチャンの楽曲「アンダー・ザ・シー」を例にあげたアイナは、「小学校2、3年生のころに『リトル・マーメイド』のCDを借りて、歌詞をメモに書き留めていたことがあります。すると、すごくユーモアにあふれた楽曲だと気づいて。セバスチャンは、自分たちにとって海の底はステキな世界だけれど、陸の世界では『いつか誰かがハラペコになったら、すぐ皿の上。ヤダネ!』と歌っています。『すぐ皿の上』って、考えてみるとすごくつらいことですよね(笑)。でもそれをメロディーに乗せることで、ユーモラスな表現に変えることができる」と分析。「『白雪姫』で歌われる、『ハイ・ホー』もそうですよね。冷静になって歌詞を眺めてみると、『もうウンザリだ!』とか『バケツよこせ!』など小人たちが喧嘩をしているようでもあり、それでいてリズミカルなメロディによって愉快なイメージや親近感を届けてくれる。すごいなと思います」。

さらに「私が『きえないで』という楽曲を作った時に、『星のないプラネタリウム 音が出なくなったギター 味のないたらこパスタ あなたのいない夜』という歌詞を書きました。『あなたのいない夜は、味のないたらこパスタくらいつまらない』ということなんですが、こういった言い換えは、幼少期からディズニー音楽にあるユーモアにあふれた言い回しを耳にして育ったからこそ出てきたもの」と打ち明け、「ちょっと悲惨なことを歌っていても、メロディラインを美しくすることでそれを浄化できたり、ユーモラスな言い換えをすることで新鮮な味わいを出したりすることもできる。ディズニーの音楽には、そういったステキなトラップがたくさん隠れている」とディズニー音楽のすごみについて熱っぽく語る。

「私は小さなころからダンスをやっていたんですが、ダンスの先生もディズニーが大好きで。ディズニーの音楽で、ダンスのレッスンをしていました。ディズニーの楽曲は感情が乗った“生きた音楽”なので、ジャズダンスやパッション系のダンスを合わせると、すごくステキな化学反応が起きる」と身体に染み込んだディズニー音楽は、アイナにとって切っても切り離せない存在となっている。「ディズニーの作品は、配信が始まると何度も観てしまいます。例えば『アナと雪の女王』ならば、キャラクターが力強い楽曲を歌っていても実は不安そうな表情をしていることがわかったり、観るたびに新しい発見があるんですよね。『白雪姫』もきっとまだまだ新しい発見が隠れていそうなので、これから何度も観たいと思っています。そしてなにより、どのキャラクターをとっても何度も聴きたくなる歌声ばかり!『白雪姫』にはいい意味で、お腹いっぱいにさせてくれないよさがあって、『もっと聴きたい』『もっと知りたい』と思わせてくれる魅力がありました」と愛情をあふれさせていた。

取材・文/成田おり枝