【千葉・茂原のゴースト団地】市は来年3月までの退去を求めているが…「真名団地」に残った3人の住民たち「廃墟」に暮らす「理由」と「本音」

千葉県茂原市の中心部から5キロほど離れた場所に、時が止まったかのような一角がある。市営真名(まんな)住宅、通称「真名団地」だ。1970年年代の高度経済成長期に建てられた全299戸の巨大団地で、最盛期には1300人を超える住民がいた。だが、2025年7月時点で、住民はわずか3人しかいない。時代の変化によって半ばゴーストタウン化した団地の実態、そこで暮らす住民の本音とは。現地を訪ねた。

時が止まった団地

都心から車で約1時間半、田畑の中に民家が点在する田舎道を走っていると、巨大な廃墟群が見えてきた。まるで下界からの侵入を拒むかのように、広大な畑を隔てた小高い丘に無数の寂れた建物が立ち並ぶ。さながら陸の孤島のようだ。

巨大な廃墟群のような「真名団地」

東西南北に広がる団地には、長屋造りの平屋、メゾネットタイプ2階建ての区画があり、住宅棟がすべて同じ向きに、同じ感覚で並ぶ。敷地の端には4階建ての住宅棟も1棟だけあった。

住宅棟はすべて同じ向きに、同じ感覚で並ぶ

計60棟ほどの建物の多くは、入口がベニヤで閉ざされ、ドアは朽ち果て、外壁は黒ずみ、蔦で覆われている。

静まり返る敷地内を歩いていると、ハクビシンが横切った。

2階建ての区画はすべての住民が退去している

敷地中央を南北に貫くメーン通りには商店の痕跡があり、いまでは珍しくなった公衆電話も残る。かつて子供が遊んでいたであろう公園は雑草で覆われ、鉄棒やブランコなど遊具は錆びて光沢を失っていた。

団地の中央部にある公園

「昔は賑やかで、祭りなど住民が交流するイベントもあった。でも、住民は皆、年寄りになり、仲が良かった人はいなくなった。4階建て、2階建ての棟が並ぶエリアには誰も住んでいない。寂しいよ」

こう語るのは、平屋に住む80代の女性Aさんだ。

「うちはお父さん(夫)が飲兵衛でね、あまり仕事もしなかった。だから私が日立製作所の工場でブラウン管のテレビを作っていた。昔の茂原は元気がよかった。日立製作所や東芝などの工場が立ち並び、この団地にも多くの働き手が集まった」(同前)

住民同士の交流はゼロ

高度経済成長期、団地は憧れの住まいとなり、全国各地で団地の建設が進んだ。団地の人気が高まるにつれ、駅から離れた郊外に建設されるようになったが、真名団地もそのひとつだった。

往時は工場都市として栄えていた茂原市内でも有数の人気で抽選待ちが当たり前だったという。だが、良い時代は長くは続かなかった。

「20年ほど前から工場はどこも閉鎖され、新たな仕事先を求めて住民も次々と転居してしまった」(同前)

蔦で覆われている住宅棟も少なくない

そのまま住み続けた住民もいたが、子供世代はより利便性の高いエリアに流出してしまい、高齢化だけが進み、やがて新規の入居者募集も停止された。団地での生活について、Aさんはこう嘆く。

「全然便利じゃない。近くには買い物できる場所もない。足(=車)がなければ何もできない。子供が定期的に届けてくれるから何とか生活できる状態」

2021年には老朽化を理由に団地の建て壊しが決定。残っていた住民も次々と去り、現在は平屋に住む3人だけが残る。

長屋造りの平屋

「外に出れば誰かに会っておしゃべりをする。昔の団地の雰囲気が好きだった。友達もいっぱいて楽しかった。でも、すっかり変わってしまい、かつての雰囲気はまったくない。

少し前まで8世帯あったけど、今年3月いっぱいで5世帯が出て行っていった。残っている人とは一切話さない。私が何かしたわけじゃないんだけど、話をしてくれない」(同前)

間取りは2Kで家賃は「4300円」

Aさんの部屋の間取りは2Kで家賃は4300円。クーラーどころか、テレビも冷蔵庫もない。日中は暑さをしのいで日陰で過ごし、ラジオを聞くのが日課だ。

「ある日、弟が電気製品や家具を全部実家に持っていってしまってね。でも、その弟も死んでしまった。

あまりにも電気のメーカーが動かないので、電気業者が『機械が故障しているようなので取り換えます』と来た。『もう出るから』と追い返したけどね」(同前)

市は来年3月までに転居することを求めているが、Aさんはこう胸の内を明かす。

今年3月に団地を出た元住民が管理する畑

「今年の3月にここを出て、別の市営住宅に移った人は定期的に戻ってきて、畑作業をしている。こんな場所でも、やっぱり愛着があるじゃないの。

私も別の市営住宅を用意するといわれたけど、移りたくない。知っている人がいないところは嫌だ。そしたら義理の娘が『うちが引き取りますから』と言ってくれた。世話になろうと思う」

「真名団地」の住民はわずか3人

夕暮れ時、いまでは珍しくなった公衆電話の近くにAさんの姿があった。

「団地の近くに住む人がよく散歩に来てくれる。おしゃべりするのが唯一の楽しみ。いつもは5時頃に来るけど、今日は暑いからまだ来ないねぇ。もう1時間近く待っているけど、家に帰ってもやることはないから。もうしばらく待つわ」(同前)

後編記事『千葉の廃墟団地「真名団地」ユーチューバーの心霊スポットと化した場所で暮らす人の「リアルな生活」【今では住民3人だけ】』では、ゴーストタウン化した団地で暮らす住民を悩ます問題や団地の今後について詳報する。